作品を知る

滝は、九点とも白い——ミシャロン・ヴェルネ・英泉ほか九点

落ちる水は空気を含んで白くなる。九点で数えると、白く描かれるのは七点、残る二点も紙の地を残している。同じ場所を描いた作品が二組あった。滝を登る鯉の版画は、幅の三倍の高さがある。落差が測れるのは二点しかない。水は縦に落ち、画面も縦になる。

モン=ドールの滝
アシル・エトナ・ミシャロン《モン=ドールの滝》メトロポリタン美術館蔵

白い水が、縦に落ちている

一枚の油彩に、滝がある。

41.3×56.2センチ。

横長の画面である。

画面の中央やや右に、白い水の帯がある。

帯は上から下へ、まっすぐ落ちる。

高さは、画面の半分ほどある。

水は白と灰色で、縁が細かくほぐれている。

落ちた先は、岩の多い水たまりである。

そこで水は泡になり、白く散る。

滝の左右は、暗い岩である。

岩は茶色と黒で、湿っている。

画面の左には、大きな枯木が立つ。

幹は太く、途中で折れている。

枝は白く、葉がない。

その根もとに、人が二人いる。

赤い衣の人が座り、もう一人が横になっている。

牛か馬らしい動物も見える。

上のほうには、緑の木立と青い空がある。

雲は白く、薄い。

館の記録に、記述の欄はない。

書かれているのは、題と年と技法と寸法である。

モン=ドールの滝
アシル・エトナ・ミシャロン《モン=ドールの滝》1818年。館の記録では、油彩・カンヴァス。41.3×56.2センチ。番号は1994.376。メトロポリタン美術館蔵。アシル・エトナ・ミシャロン《モン=ドールの滝》メトロポリタン美術館蔵

滝は、水が落ちる場所である。

高さの差が、そのまま音と泡になる。

そして、水は白くなる。

流れている水は透明だが、落ちる水は白い。

空気を含んで、光を散らすからである。

九点を並べて、その白さの描き方を数えたい。

同じ場所が、二度ずつ出てきた

集めかたは、館の記録の題によっている。

滝、瀑にあたる語が入るものを拾った。

九点とも、滝が主題である。

外れは一点もなかった。

そして、面白いことが起きた。

同じ場所を描いた作品が、二組あった。

一組は、ローマ近くの町の滝である。

十八世紀の油彩と、十八世紀末の銅版画。

もう一組は、北アメリカの大きな滝である。

十九世紀の琺瑯の小品と、十九世紀の写真。

有名な滝ほど、繰り返し描かれる。

前に広場を扱った回でも、同じ広場が三点あった。

語で引くと、有名な場所が自然に集まってくる。

二つのティヴォリ

一組目を見たい。

油彩は、額なしで123.2×172.6センチ。

九点のなかで、いちばん大きい。

画面の中央に、深い谷がある。

谷の両側は、切り立った岩である。

岩の面には、木が生えている。

右の岩壁から、細い滝が何本も落ちる。

数えると、四本か五本ある。

いずれも細く、白い線のように見える。

谷底には、水が溜まっている。

その岸に、人が数人いる。

一人は釣りをしているらしい。

奥には、丸い建物が崖の上に立つ。

空は明るく、雲が広がる。

館の記述によれば、これは画家がローマで学んだ時期の作である。

そして、水が中心の主題であることにも触れている。

館の記録によれば、署名にはローマで制作したと書かれている。

ティヴォリの滝
クロード・ジョセフ・ヴェルネ《ティヴォリの滝》1737年。館の記録では、油彩・カンヴァス。額なしで123.2×172.6センチ。番号は1984.175。クリーヴランド美術館蔵。クロード・ジョセフ・ヴェルネ《ティヴォリの滝》クリーヴランド美術館蔵

銅版画は、紙が39.9×30.7センチ。

版の面は36.8×27.5センチ。

縦長の画面である。

画面の上のほうに、石造りの橋がある。

アーチが一つ、崖と崖を結ぶ。

その左に、崩れかけた建物が立つ。

丸い窓が二つ見える。

橋の下は、深い谷である。

谷を、白い水が落ちていく。

岩と岩のあいだで、水は何度も折れる。

手前の岩の上に、人が二人いる。

一人は座り、板を膝に載せている。

写生をしているらしい。

館の記述によれば、この一枚は写生する画家を描いたものである。

そして、イタリアの眺めを集めた連作の一枚だという。

館の記録によれば、その連作は七十二枚から成る。

四人が二十四枚ずつ寄せた、と書かれている。

ティヴォリのサン・ロッコの滝と橋
アルベルト・クリストフ・ディース《ティヴォリのサン・ロッコの滝と橋》1795年。館の記録では、茶インクのエッチング。紙は39.9×30.7センチ。版の面36.8×27.5センチ。番号は2002.105。クリーヴランド美術館蔵。アルベルト・クリストフ・ディース《ティヴォリのサン・ロッコの滝と橋》クリーヴランド美術館蔵

二つのナイアガラ

二組目を見たい。

一点目は、琺瑯の小品である。

見える範囲で6.7×5.7センチ。

九点のなかで、いちばん小さい。

銅の板に、色の琺瑯で描かれている。

画面の中央に、白い水が落ちている。

水は幅が広く、勢いがある。

左右は、暗い岩と木である。

木の葉は細かく、緑と茶で描かれる。

手前には、倒れた木がある。

左下の隅に、小さな人影が二つある。

館の記録に、記述の欄はない。

これだけの大きさに、滝と岩と木と人が入っている。

額に入れられていて、周りに白い縁がある。

ナイアガラの滝
ウィリアム・バーチ《ナイアガラの滝》1827年頃。館の記録では、エナメル彩の銅板。見える範囲で6.7×5.7センチ。スミソニアン・アメリカ美術館蔵。ウィリアム・バーチ《ナイアガラの滝》スミソニアン協会蔵

二点目は、写真である。

画面は19×24.2センチ。

台紙まで含めると35.6×45.7センチになる。

画面は暗い。

上半分は、厚い雲である。

雲の切れ目から、光が漏れる。

中央の遠くに、白い滝が横に伸びる。

水は白く飛んでいて、細部がない。

その手前は、雪の積もった岸である。

雪は明るく、画面の下半分を占める。

左には、葉の落ちた木が立つ。

枝は黒く、細かく分かれている。

館の記録によれば、写真そのものに文字が書かれている。

滝の名と、撮影者の名である。

そして、陰画の番号は汚れで読めないと注記されている。

読めないことを、そのまま書いている。

ナイアガラの滝
アレクサンダー・ヘンダーソン《ナイアガラの滝》1860年代。館の記録では、湿板コロジオンの陰画から作った鶏卵紙印画。画面19×24.2センチ。台紙を含めて35.6×45.7センチ。番号は1993.25。クリーヴランド美術館蔵。アレクサンダー・ヘンダーソン《ナイアガラの滝》クリーヴランド美術館蔵