技法の欄に、合金の配合が書かれる——刀の鐔九点
重さの欄が、九点のうち八点にある
鐔の記録には、重さが書かれる。
絵画の記録には、まず書かれない欄である。
九点のうち八点に、グラムの数字がある。
いちばん軽いのが、いま見た56.7グラム。
いちばん重いのが198.4グラム。
三倍以上の開きがある。
厚さも0.3センチから0.8センチまで散る。
大きさは、どれも縦横六から八センチに収まる。
つまり、外形はほぼ同じで、中身が違う。
同じ場所に付ける道具だから、外形は揃う。
揃えたうえで、材料と厚みを変えている。
年の欄の、幅が揃わない
九点の年の欄を並べると、書き方が四通りある。
世紀だけを書くもの。十六世紀、十九世紀。
世紀を半分に割るもの。十八世紀なかば。
世紀をまたぐもの。十八世紀後半から十九世紀初め。
そして、一点だけ年が特定されている。
1860年。
なぜこの一点だけ、年まで書けるのか。
記録は理由を書かない。
ただ、鐔には年を切る習慣がある。
銘に年号が刻まれていれば、そこから読める。
写真では、その銘までは読み取れない。
だから、これは推測にとどめておく。
館が年を一つに絞ったという事実だけが、確かである。
大小、二枚で一組
九点のうち二点は、同じ人が同じ図で作った鐔である。
題にも、その二点が一組であることが書かれている。
大小、つまり長い刀と短い刀の組み合わせを指す。
番号は43.120.723と43.120.724。
一つ違いの連番である。
寸法は、わずかに違う。
縦7.5センチと7.9センチ。
重さは161.6グラムと198.4グラム。
長い刀に付けるほうが、少し大きく重い。
同じ図を二度作り、寸法だけを変えている。

地は細かい粒で埋め尽くされる。
粒の一つ一つが立ち、光を散らす。
右上に、岩が銀色で盛り上がる。
その上に鷹が一羽、身を低くして止まる。
羽は褐色で、細かく毛彫りが入る。
左下から中央へ、波が二筋うねる。
波頭は白く、丸く巻き上がる。
波の上に、金の点がいくつも散る。
飛沫を表したものだろう。
中央の縦長の穴の左に、細い銘が刻まれる。

前の一点と、地の作りは変わらない。
同じ細かい粒が、面いっぱいに立つ。
違うのは、鷹の姿である。
こちらは翼を大きく広げ、岩の上へ舞い降りる。
風切羽の一枚ずつが、金の線で分けられる。
岩は右にあり、前の一点より高く盛られる。
波は左下で二段に巻く。
波の下に、小さな鳥がもう一羽いる。
前の一点にはない要素である。
同じ主題を、二度別々に組み立てている。
穴の数が、揃っていない
鐔の中央には、刀身を通す縦長の穴がある。
九点すべてに、この穴がある。
ところが、その左右にも穴を開けたものがある。
小さな楕円の穴が、一つだけのものと二つのものがある。
まったく開けていないものもある。
左右の穴は、小刀と笄を通すためのものである。
小刀は小さな刃物、笄は髪を整える道具だ。
刀の鞘の脇に、この二つを差す拵えがあった。
つまり穴の数は、その刀がどういう拵えだったかを示す。
装飾ではなく、使い方の記録である。
館の記録は、この穴について何も書かない。
寸法の欄にも、技法の欄にも出てこない。
写真を見なければ分からない情報である。
前に見た大小の二点は、どちらも左右に穴がある。
同じ拵えで揃えられていたことになる。
部門の名が、美術ではない
九点はいずれも、武具の部門に属する。
絵画の部門でも、工芸の部門でもない。
刀に付ける金具だから、武具に分類される。
しかし、この九点は刀身を伴っていない。
鐔だけが外され、単体で収蔵されている。
外して集めるのは、金工として見ているからだ。
作った人は装具師と記録される。
刀鍛冶とは別の職能である。
刀身を打つ人、鐔を作る人、鞘を塗る人。
一振りの刀に、少なくとも三つの職能が関わる。
そのうち鐔だけが取り外され、別の名で集められた。
部門の名は武具のままで、中身は金工の作品である。
分類の名と、集め方の実際が、少しずれている。
二枚に、一つの番号
もう一点、対になっている作品がある。
こちらは、記録の扱い方が違う。
題が「一対の鐔」となっており、二枚で一件とされる。
番号も2006.262.1と.2で、枝番だけが違う。
寸法の欄には、二点ぶんの数字が並ぶ。
7.4センチと7.1センチ。
ところが写真は一枚しかない。
館の公開画像には、片方しか写っていない。
分けて数え、まとめて見せるという扱いである。
大小の二点は、別々の番号と別々の写真を持っていた。
同じ「二枚で一組」でも、記録の単位が違う。

円形の輪郭である。
地には、細い線が幾重にも走る。
水の流れとも、細い葉ともつかない線である。
線は左上から右下へ、ゆるく渦を巻く。
その上に、金の花が二つ置かれる。
一つは左上、もう一つは右下。
花弁は厚く盛り上がり、地から浮く。
中央には、黒く沈んだ楕円の座がある。
その中に縦長の穴が抜かれる。
座の面には、細かい銘が刻まれている。