丸い胴に、絵をどう置くか——永樂保全・ティファニーほか九点の器
曲面に絵を置くと、正面から全部は見えない。だから、一周させるか、区画を作るか、散らすか。九点で、五つの解き方を並べたい。絵を置かないという答えも、そのなかにある。把手の数が、正面の位置を決めている。九点のうち六点には、正面がない。

丸い面に、絵を置く
前の回で、椅子の背もたれを見た。
平らな面と、抜けた面があった。
今回は、曲がった面である。
壺、水差し、鉢、急須。
いずれも、胴が丸い。
そこに絵を置くと、平らな絵とは違う問題が起きる。
正面から見ると、両端が奥へ逃げる。
だから、絵の全部が一度に見えない。
回さなければ、続きが見えない。
九点を並べて、その解き方を読みたい。
解き方は、大きく三つに分かれる。
面を一周させるか。
四角い区画を作るか。
あるいは、絵を置かないか。

小さな壺である。
高さ九・二センチ。
九点のなかで、いちばん小さい。
手のひらに載る。
写真は白黒である。
館の記録によれば、赤い地に金の装飾である。
つまり、実際は赤と金の器である。
胴は丸く、下がすぼまる。
口が短く立ち上がる。
そして、胴の全面に龍が描かれている。
体が長く、うねる。
顔が左を向く。
角があり、鬣がある。
爪のある脚が、二本見える。
そして、体のまわりに雲が渦を巻く。
首の部分にも、雲の帯が回る。
裾には、三角を並べた帯がある。
つまり、絵が胴を一周している。
区切りがない。
龍の体は、正面から見えるのが一部だけである。
尾は、向こう側へ回っているだろう。
第十六回で、こうした構成について書いた。
曲面を一周させると、絵に始まりと終わりがなくなる。
そして、回すたびに違う部分が見える。
龍のような細長い生き物は、この形に合う。
体が長いから、一周させても不自然にならない。
四角い窓を作る

白い水差しである。
高さ二三・七センチ。
口が前に突き出し、把手が後ろにつく。
把手は枝のような形をしている。
節があり、途中で曲がる。
そして、胴に浮き彫りがある。
木の枝と葉のようなものが、うっすらと見える。
白い地に、白い彫り。
だから、影でしか読めない。
口の縁には、暗い色の帯が回る。
細かい模様が並ぶ。
そして、胴の中央に絵がある。
四角に近い形の区画である。
そこに、風景が描かれている。
建物、木、水。
東洋風の建物に見える。
第十六回で、この形式について書いた。
欧州の磁器が、中国や日本の意匠を写した時期がある。
この一点も、その系統だろう。
重要なのは、絵が区画に収まっていることである。
前の一点は、絵が一周していた。
こちらは、一か所にまとまっている。
つまり、曲面に平らな絵を貼りつけたような形である。
区画の外には、絵がない。
だから、正面から見れば、絵の全部が見える。
回す必要がない。
これは大きな違いである。
見る側は、正面を探せばよい。
そして、置くときも正面を決められる。
何も描かない

硝子の花瓶である。
高さ二〇・六センチ。
胴が丸く、上がすぼまる。
口は狭い。
色が複雑である。
黒に近い部分、金色の部分、紫を帯びた部分。
見る角度で色が変わる仕上げである。
そして、表面に模様がある。
細い線が、下から上へ流れる。
その線が集まって、羽のような形を作る。
上部に、丸い目のような形が二つある。
青と緑の輪が重なる。
つまり、孔雀の羽である。
だが、これは描かれた絵ではない。
硝子のなかに作り込まれた模様である。
色の違う硝子を混ぜ、引き伸ばして作る。
館の記録が挙げる名は、この技法の商標である。
第十六回で、この種の硝子について書いた。
表面に絵付けをしない。
素地そのものに、模様を持たせる。
だから、絵に区画も一周もない。
模様は、器の形に沿って流れる。
胴がふくらむところで、線が広がる。
すぼまるところで、線が集まる。
つまり、形が模様を決めている。
平らな面には、この模様は作れない。
枝を散らす

小さな花瓶である。
高さ一四・四センチ。
直径七・九センチ。
胴が丸く、上が細くなる。
口は小さく、まっすぐ立つ。
地は白に近い灰色である。
そして、全面に細かいひびが入っている。
これは傷ではない。
釉薬を意図的に割る技法である。
第十六回で、この仕上げについて書いた。
素地と釉薬の縮み方の差を使う。
そして、ひびに色を入れて目立たせることもある。
その白い地に、青い枝が描かれている。
細い線で茎が伸びる。
そこに、丸みのある葉が三枚ずつつく。
葉の集まりが、五組か六組。
胴のあちこちに散っている。
つまり、一周でも区画でもない。
散らす、という三つ目の解き方である。
散らす場合、正面がない。
どこから見ても、同じような密度になる。
そして、回しても続きがない。
一つ一つの枝が、独立している。
この方法は、曲面に最も向いている。
なぜなら、絵が切れないからである。
一周させると、正面の裏で絵が続く。
区画にすると、裏が空になる。
散らせば、どちらの問題も起きない。