画家を知る

花だけを、四十三年——ファンタン=ラトゥールの静物

白い布は、難しい主題である

白い布について、もう少し書いておきたい。

白は、絵具の中でもっとも扱いが難しい色である。

明るさの上限に近いため、それより明るい色を置けない。

だから白の中に段差を作るには、暗い側へ寄せるしかない。

灰、青灰、黄灰、桃灰。わずかに色を含んだ白を並べていく。

差が小さすぎれば平らな面になり、大きすぎれば汚れて見える。

つまり白い布は、明度の判断が最も精密に要求される主題である。

この画家が初期から白い布と白い器を選んだことは、
訓練としての意味を持っていたと考えられる。

同じ課題は、17世紀のオランダの画家も繰り返し扱った。

白い襞襟を描く技術については別のコラムで触れた。

材料も時代も違うが、扱っている問題は同じである。

果物を、皿に三つ置く

皿の上の三つの桃
アンリ・ファンタン=ラトゥール《皿の上の三つの桃》1868年。画布に貼った紙に油彩。縦19.7センチ、横25.7センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アンリ・ファンタン=ラトゥール《皿の上の三つの桃》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

さらに小さい。縦19.7センチ、横25.7センチ。

白い皿に、桃が三つ置かれている。

一つは奥に立ち、二つは手前に並ぶ。

皮は黄から赤へ移り、表面に細かい産毛の質感がある。

卓は褐色の木で、木目が縦に走る。

背景は同じ褐色で、境目がほとんどない。

下辺に署名と年記がある。

支持体に注目してほしい。紙を画布に貼ったものである。

小品では、紙に描いて後から画布に貼ることがある。

つまりこれは、手軽な支持体で作られた小さな習作でもある。

器を選ぶという仕事

器についても書いておきたい。

公開分に現れる器は、白い磁器、褐色の陶器、ガラス、金属の壺である。

いずれも装飾の少ない、単純な形である。

つまり器は主張しない。花を支える台として選ばれている。

同時に、器の質感は明度の基準になる。

白い磁器なら、白の最も明るい点が器の縁に来る。

暗い陶器なら、器が影の側の基準になる。

つまり器の選択は、画面の明暗の設計と結びついている。

花瓶を替えるだけで、同じ花が別の絵になる。

花と果物を、同じ卓に置く

卓上のアスターと果物
アンリ・ファンタン=ラトゥール《卓上のアスターと果物》1868年。油彩・画布。縦56.8センチ、横54.9センチ。メトロポリタン美術館蔵。アンリ・ファンタン=ラトゥール《卓上のアスターと果物》メトロポリタン美術館蔵

同じ1868年の、より大きな一点である。

ほぼ正方形の画面である。

中央に濃紺のガラス器があり、アスターの花が盛り上がっている。

白、桃色、紫、赤。細い花弁の花が密に重なる。

左には白い皿に葡萄。緑と赤紫の粒が混ざる。

右には洋梨が二つ、林檎が二つ。

卓の面は赤褐色で、光が斜めに差している。

背景は灰色。上部が明るく、下部が暗い。

花と果物を一つの画面に置く構成である。

花だけの絵より、色の対比が増える。

配置の工夫も見ておきたい。

器は中央からやや左に置かれ、果物は右に流れている。

つまり左右の重さが釣り合っていない。

そのぶん視線が右へ動き、卓の縁に沿って戻ってくる。

静物画では、この視線の循環が構成の要になる。

四角い画面の中で、目を回す道を作る作業である。

葡萄と、白い布

葡萄とカーネーションのある静物
アンリ・ファンタン=ラトゥール《葡萄とカーネーションのある静物》1880年ごろ。油彩・画布。縦30.5センチ、横47センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アンリ・ファンタン=ラトゥール《葡萄とカーネーションのある静物》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

横長の画面である。

白い布の上に、浅い青白磁の器が置かれている。

器には葡萄が山盛りになっている。緑と黒紫の粒。

器の右には、房が卓の上に流れ出している。

さらに右手前に、赤いカーネーションが一輪、横たわっている。

背景は暗い緑褐色。上部は平らである。

白い布の襞が、器の下で影を作る。

この一点では、白い布が再び主要な要素になっている。

二十年前の食卓の絵と、課題が同じである。

葡萄の粒の描き方も見ておきたい。

一粒ずつ輪郭を描かず、明るい点と暗い面で示している。

粒の頂点に白い点を置き、下に影を落とす。

それだけで球体に見える。

近づけば点の集まりだが、離れれば葡萄になる。

こうした省略の技術は、筆の速い画家に共通している。

筆あとを残す描き方は別のコラムで扱った。

薔薇を、卓に直接置く

卓上のニースの薔薇
アンリ・ファンタン=ラトゥール《卓上のニースの薔薇》1882年。油彩・画布。縦26.4センチ、横41.9センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アンリ・ファンタン=ラトゥール《卓上のニースの薔薇》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

横長の小品である。

器はない。薔薇が卓の上に直接置かれている。

花は八輪ほど。桃色、淡黄、白、そして濃い赤が一輪。

葉は暗い緑で、茎が右へ伸びる。

卓は暗褐色。背景も同じ色で、境目がない。

右上に署名と年記がある。

器を省くと、花の塊だけが画面に残る。

支えるものがないため、花は宙に浮いたようにも見える。

背景と卓を同じ色にすることで、その効果が強まっている。

晩年の果物

桃と葡萄のある静物
アンリ・ファンタン=ラトゥール《桃と葡萄のある静物》1896年。油彩・画布。縦29センチ、横42センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アンリ・ファンタン=ラトゥール《桃と葡萄のある静物》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

1896年の作である。

白い皿に、桃が三つと葡萄の房が盛られている。

葡萄は皿から溢れ、卓の上に垂れている。

右手前にも桃が一つ、転がっている。

卓は褐色。背景は灰褐色で、平らである。

右上に署名と年記がある。

構成は1868年の桃の絵とよく似ている。

白い皿、褐色の卓、平らな背景。

三十年近く隔てて、同じ骨格が使われている。

版画の仕事も長く続けた

他の分野にも触れておきたい。

この画家は、石版画を数多く制作している。

主題は音楽と文学に由来するものが多い。

つまり静物画とはまったく別の系統の仕事を並行して続けた。

花の絵で生活を支え、版画で別の主題を追う。

二本立ての活動である。

当サイトの公開分には版画が含まれていないため、その側面は見えない。

公開作品の構成が画家像を左右する例として、覚えておきたい。