ガラスは、透けないことが多い——タルボット・ボスハールト・ボスほか九点
ガラスの花瓶を、銅板に描く
五点目では、支持体が金属になる。

縦長の小さな画面である。
全体は31.6×21.6センチしかない。
背景は暗い褐色である。
中央に、花束がある。
花は上へ広がり、左右へも伸びる。
赤と白の縞のある花が、いちばん上にある。
その下に、黄色い花が並ぶ。
白い薔薇が、中央にある。
桃色の薔薇が、その左にある。
小さな青い花が、あいだを埋める。
花瓶は、下三分の一にある。
胴は丸く、褐色に見える。
首は細く、上が広がる。
面には、光が細く走る。
台は石で、水平である。
台の上に、花が二輪落ちている。
その脇に、小さな虫がいる。
館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。
材料は、銅板に油彩である。
つまり画面は金属で、描かれているのはガラスである。
透明なものを、透けない板の上に描いている。
ガラスに見えるのは、光の線と、向こう側が透ける部分である。
台の縁が、花瓶を通してわずかに見える。
そして花瓶の下半分は、暗く沈む。
上半分だけが明るい。
光が斜め上から来ていることが分かる。
銅板は目が細かく、細部が描きやすい。
この大きさで花弁を一枚ずつ描くには、その細かさが要る。
ガラスの杯が、菓子と並ぶ
六点目でも、ガラスは描かれる。

横長の画面である。
額なしで58×97センチある。
背景は暗い灰色である。
手前に、石の台がある。
台の上に、物が並ぶ。
左に、木の箱がある。
箱には、四角い菓子が載る。
その手前に、木の実が散る。
中央に、暗い色の瓶が立つ。
瓶は口が細く、胴が丸い。
黒に近いが、光の当たる縁だけ明るい。
その右に、脚付きの杯がある。
杯は透明で、縁が細い。
脚には、渦を巻いた飾りが付く。
杯の中は空である。
右には、平たい台が二段ある。
台の上に、丸い菓子が積まれる。
菓子は褐色で、表面がざらつく。
数は数十個ある。
下の段のほうが、多く積まれている。
館の記録では、この構成は簡素な石の棚の上に置かれている。
木の箱、暗いガラスの瓶、胡桃、そして凝ったガラスの杯、いくつかの菓子がある。
その菓子は、松の実と蜂蜜と扁桃と榛の実を混ぜたものである。
そして館は、こう書いている。
この絵は、実際の食事や間食を写したものではないかもしれない。
作者はむしろ、形と質感と色の対比と調和を試している。
館の記録は、そう説明している。
つまり二つのガラスが、対比のために置かれている。
暗くて透けない瓶と、透明で細い杯である。
同じ材料が、正反対の見え方をする。
静物の見方については、二人の学者の静物で扱った。
暗い瓶は、輪郭が背景と溶ける。
透明な杯は、輪郭が背景から浮く。
描き方も、当然変わる。
九点のうち、二種類のガラスが並ぶのは、この一点である。
三角のガラスが、線で描かれる
七点目では、ガラスは版画の線になる。

横長の版画である。
版の跡は26×32.5センチある。
線はすべて細く、灰色である。
画面は、広い部屋の中である。
奥に、柱と窓が並ぶ。
窓の外には、看板が下がる。
手前の左に、卓がある。
卓には、白い布が掛かる。
その上に、皿と杯がある。
卓を囲んで、人が座る。
中央の男は、帽子をかぶる。
その左右に、女が二人いる。
一人は男の肩に手を掛ける。
もう一人は、手を伸ばす。
右の女は、杯を持ち上げる。
杯は、上が広く下が細い。
三角の形をしている。
画面の下には、文字の欄が三つある。
欄は縦に区切られ、行が詰まっている。
物語の一場面を説明する文らしい。
床には、小さな犬がいる。
犬は右下におり、体が小さい。
人物のほうを見上げている。
館の記録では、この主題は聖書の話にもとづく。
息子が財産を使い果たし、のちに許される話である。
画家たちは、しばしばその途中の場面だけを描いた。
この版画は、その場所を千六百年代の裕福な家のように描いている。
三人の女と一人の男と一人の子どもが、息子の気をそらして財布を盗む。
そして館は、こう書いている。
一人の女は、三角形のガラスの杯を持っている。
それは、この話における酒の役割を示しているという。
館の記録は、そう説明している。
つまりガラスは、細い線だけで示されている。
輪郭の線が、向こうの布と重なる。
重なって見えることが、透明であるしるしになる。
色は使えない。
黒い線と、紙の白しかない。
それでもガラスに見える。
線を途切れさせず、向こうの形を通すからである。
ガラスという語が、鏡を指す
八点目では、ガラスは鏡である。