作品を知る

角と骨は、名前になる——窪俊満・ルドン・カトリンほか九点

ティーテーブル
カルロ・ブガッティ《ティーテーブル》1907年ごろ。館の記録では、象嵌のある木、鋳造して金めっきした青銅の金具、象牙または骨、金属、螺鈿の象嵌。全体は71.5×67.1×41.3センチ。番号は1991.45。クリーヴランド美術館蔵。カルロ・ブガッティ《ティーテーブル》クリーヴランド美術館蔵

背の高い卓である。

全体は71.5×67.1×41.3センチある。

天板は四角く、平らである。

天板の上に、器が四つ並ぶ。

器は金色で、把手が白く反り返る。

天板の下に、細い柱が四本立つ。

柱は上でアーチを作る。

アーチの内側は、暗い色で埋まる。

そこに、白い象嵌が散る。

象嵌は細く、渦や葉の形である。

脚は下へ向かって外へ開く。

脚の先には、金色の獣の足がある。

爪が三本、前へ出る。

中央には、丸い棚がある。

棚の縁にも、金の帯がある。

帯には、細かい打ち出しがある。

光が当たると、そこだけ強く返る。

館の記録では、まず豪奢な材料が目を引くかもしれない。

しかしよく見ると、この卓の表面を飾る想像上の生き物が見えてくるという。

そして館は、意匠について書いている。

凝ったアーチは、この作り手の家具にたびたび現れる好みの形である。

その空想的な図像が、意匠家の想像力への窓になっているという。

館の記録は、そう説明している。

材料の欄には、象牙または骨とある。

つまり館は、どちらか決めていない。

象牙と骨は、見た目が似ている。

しかし、断面の構造が違う。

象牙には細かい網目の模様があり、骨には小さな管の跡がある。

調べれば分かる。

しかし、調べるには小さな試料が要る。

象嵌を外さなければならない。

だから、決めないままにしてある。

館の記録は、その事情を書いていない。

九点のうち、材料が二択で書かれているのは、この一点である。

骨が、題の中にある

五点目では、骨は言葉である。

前頭骨の広さと平たさ
オディロン・ルドン《前頭骨の広さと平たさ》1896年。館の記録では、織紙に貼った中国紙のリトグラフ。画面は14×9センチ、紙は44.9×31.5センチ。番号は1966.413.7。クリーヴランド美術館蔵。オディロン・ルドン《前頭骨の広さと平たさ》クリーヴランド美術館蔵

小さな画面である。

画面は14×9センチしかない。

紙は44.9×31.5センチある。

つまり余白が、きわめて広い。

画面の中央に、人の横顔がある。

顔は左を向く。

額は広く、前へ張り出す。

その額の面が、平たい。

鼻は小さく、口は閉じる。

顎は短い。

髪と髭は、濃い黒である。

黒は塊として置かれ、輪郭がない。

顔の肌は、紙の白に近い。

そのまわりを、細い楕円の線が囲む。

楕円の外は、白い。

線は細く、途中で消える。

閉じきっていない輪である。

画面の下に、文字が刷られている。

館の記録では、この作者は同時代の文学をよく読み、それが作品に影響した。

この連作は、ある小説から着想を得たという。

そして館は、こう続けている。

版画は、その本の不思議な調子と超自然への傾きを、あいまいだが喚起的な図像でとらえている。

ときには、抽象に近づくという。

さらに館は、刷り師との協働について書いている。

石版の蝋墨を寝かせて使い、さまざまな跡を重ね、石の面を直接引っ掻いた。

その技術が、豊かな階調を生んだという。

館の記録は、そう説明している。

題にある骨は、額の骨である。

つまり顔の形を、骨の名で言い換えている。

見えているのは、皮膚と髪である。

骨は、その下にある。

題は、見えないものを指している。

九点のうち、題が見えないものを指すのは、この一点である。

この画家の版画については、輪郭のない花で扱った。

角が、刀鍛冶の姓になる

六点目から、材料は名前になる。

レイピア
クレメンス・ホルン《レイピア》1620年から30年ごろ。館の記録では、青焼きと金めっきの鋼。全体は111.1センチ、刀身89.2センチ、鍔の腕は21.3センチ。番号は1916.697。クリーヴランド美術館蔵。クレメンス・ホルン《レイピア》クリーヴランド美術館蔵

細長い剣である。

全体は111.1センチ、刀身は89.2センチある。

鍔の腕は21.3センチある。

刀身は細く、まっすぐ伸びる。

断面は、菱形に近い。

刀身の上のほうに、文字が刻まれる。

柄の部分は、複雑である。

輪が幾重にも重なる。

輪と輪のあいだに、穴の開いた板がある。

板の穴は、細かく規則正しい。

柄の頭には、丸い飾りがある。

握りは細く、縦の筋がある。

金属は暗い青灰色である。

ところどころ、金色が残る。

金は、輪の縁に多く残る。

手の触れない場所である。

館の記録では、この武器は柄と頭と鍔と護りの組み合わせがとくに美しい。

刀身も細工が優れ、ある鍛冶の印がある。

印は、一角獣の頭である。

そして館は、刀身の銘を訳して載せている。

理由なくもなく、臆してもならない。

武器のあいだで法は黙する。

真理を愛し、祖国のために戦え。

館の記録は、そう伝えている。

作者の姓は、角を意味する語である。

つまり材料の名が、人の姓になっている。

九点のうち、作り手の名が材料の語なのは、この一点である。

そして、その剣に角は使われていない。

材料の欄には、鋼だけがある。

名と材料が、一致していない。

角が、贈られた人の姓になる

七点目でも、角は姓である。

ジョン・ホーン・メダル
チャールズ・バーバー《ジョン・ホーン・メダル》1874年。館の記録では、ブロンズ。直径4.8センチ。番号は07.288.12。メトロポリタン美術館蔵。チャールズ・バーバー《ジョン・ホーン・メダル》メトロポリタン美術館蔵

小さな円板である。

直径は4.8センチしかない。

色は、赤みの強い褐色である。

中央に、男の横顔が浮き出る。

顔は左を向く。

額は広く、鼻筋が通る。

口の下から顎にかけて、髭がある。

髭は短く、密である。

首は太く、襟が高い。

上着の襟には、細かい線が入る。

髪は短く、耳の上で巻く。

右の縁に沿って、文字が並ぶ。

文字は小さく、名を記す。

縁には、細い輪が回る。

地の面には、細かい粒がある。

粒は型の表面の荒れである。

横顔の面は、磨かれて滑らかである。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

館の札には「男性」「肖像」「横顔」とある。

題にある姓は、角を意味する語である。

つまり画面にも、材料にも、角はない。

九点のうち、贈られた人の姓が材料の語なのは、この一点である。

メダルは、人に贈るために作られる。

だから題に、その人の名が入る。

名が材料の語であれば、題にも材料の語が入る。

偶然の重なりである。