額をどう選ぶか——ラファエロとデッカーの額から考える
大きい絵は、縁が細い
反対の例を見てほしい。

赤い垂れ布の前に、二人が座っている。
左の男性は黄土色の上着に黒い胴着、白い襟布を結んでいる。
緑の椅子の背が、体の左に見える。
右の少年は黒い上着に白いひだ襟。手には黄色い紙のようなものがある。
顔はどちらも正面を向き、視線がこちらへ来る。
寸法を確かめたい。画面104.1センチに対し、額込み105.2センチである。
差は1.1センチ。つまり縁の幅は片側で5ミリ程度しかない。

こちらは1メートル半の大きな肖像である。
左に黒衣の年長者、右に巻き毛の若者。若者は金色の布を膝に掛けている。
手前に長毛の犬が一匹、顔を上げている。
背景は列柱と秋の木立。石の台に日付と署名がある。
この作品も、額込みとの差は1.3センチしかない。
大きい絵は細い縁で足り、小さい絵は太い額を必要とする。
理由は難しくない。
小さい絵は、壁の中で見失われやすい。額が視線を集める役をする。
大きい絵は、それ自体が壁を支配する。太い額は、かえって邪魔になる。
もう一つ、実務的な理由もある。重さである。
1メートルを超える絵に、幅10センチの木の額を回すと、相当な重量になる。
壁の強度と吊り具の限界がある。細い縁は、その制約への答えでもある。
美術館の記録に奥行が書かれているのは、この重さと厚みを扱うためだろう。
明るい絵と、暗い絵
もう一つの軸は、明るさである。

少年の胸像である。画家の弟を描いたものだ。
背景は一様なオリーブ色。上着は黒に近く、襟だけが白い。
顔だけが明るく、頬に淡い赤みがある。
画面全体が暗い。だから顔が浮き上がる。
この絵の額は、片側で8センチほどの幅を持つ。
暗い絵に太い額を付けると、画面の暗さが「閉じた空間」に見えてくる。
逆に細い縁だと、暗い画面が壁の穴のように見える。
どちらがよいかは目的次第だ。落ち着かせたいなら太く、緊張させたいなら細く。
なお、この絵の画面は40センチ足らずである。
家の壁に掛けるなら、いちばん扱いやすい大きさでもある。

対照的に、こちらは明るい絵である。
白い帽子と白い服の少女が、籐椅子に座っている。
膝に小さな犬を抱き、右手で背を撫でている。
背後は緑の手すりと、パリらしい灰青の街並み。
筆触は粗く、白の中に桃色と水色が混ざる。
額込みの寸法を見てほしい。片側で17センチ近い。奥行は12.7センチある。
明るく淡い絵に、深く太い額が付けられている。
このくらい強い縁がないと、白っぽい画面は壁に溶けてしまう。
ただし、現在の額がいつ作られたものかは、公開されている記録からは分からない。
いま美術館で見る組み合わせは、後世の判断である場合が多い。
だから美術館で絵を見るときは、額も一緒に見ておくと面白い。
その額が絵と同じ時代のものか、後から付けられたものか。
金の摩耗の位置、角の継ぎ目、彫刻の様式。手がかりはいくつもある。
絵の年代と額の様式が合わない例は、意外に多い。
家で額を選ぶ——六つの手順
ここから実際の話に移りたい。
順番に決めていくと、迷いが減る。
一つめ。掛ける壁を先に決める。
窓からの光が横から当たる壁が扱いやすい。正面から当たると反射する。
二つめ。高さを決める。
画面の中心を、床から140〜150センチに置く。立って見る高さである。
座って見る部屋なら、少し下げる。
三つめ。額込みの寸法から考える。
先に見たとおり、額は面積を大きく変える。
壁の空きに対して、額込みで七割を超えないほうが落ち着く。
四つめ。額の幅を決める。
目安として、絵の短辺の八分の一から十二分の一で試すとよい。
30センチの絵なら、幅2.5〜4センチである。
小さい絵は比率を上げ、大きい絵は下げる。先の数字と同じ考え方である。
五つめ。色を決める。
絵の中で二番目に多い色を額に持ってくると、たいてい馴染む。
いちばん多い色を使うと、絵と額が一体化して主題が弱くなる。
六つめ。紙の作品は、必ず余白を入れる。
マットを挟み、画面がガラスに触れないようにする。
紙は湿気で波打つ。ガラスに密着すると、貼り付いて剥がれなくなる。
余白の幅は、上下左右を同じにしなくてもよい。
下だけ少し広くすると、視覚的に安定する。掛けたときに絵が沈まない。
古い版画の台紙も、下辺を広く取ったものが多い。

紙の作品では、余白そのものが作品の一部になることがある。
この一点を見てほしい。女性が身をかがめ、洗面台の器で手を洗っている。
縞の布が腰に巻かれ、床には青地に花模様の敷物。壁は深い緑青色である。
輪郭は細い線で、色は平らな面で置かれている。浮世絵の影響が明らかである。
注目したいのは画面の外側だ。
版の跡が四角く残り、その外に紙の余白が広がっている。
下の余白には鉛筆の書き込みがある。
「画家とムッシュー・ルロワにより刷られた」「メアリー・カサット」「25枚」と読める。
刷った人の名と部数が、余白に手書きされている。
つまりこの余白を隠すと、作品の情報が消える。
紙の作品を額装するとき、版面のぎりぎりで切ってはいけない理由がここにある。
窓を開けるマットは、紙の縁より内側に入れない。書き込みまで見せる。
浮世絵が西洋の絵に何を与えたかは別のコラムで扱った。