画家を知る

方眼を引いたまま、残る——ケニオン・コックス

彫刻家を、描く

七点目は、肖像である。

オーガスタス・セント=ゴーデンズ
ケニオン・コックス《オーガスタス・セント=ゴーデンズ》1887年制作、1908年に自身の手で再制作。油彩、カンヴァス。縦85.1センチ、横119.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。作者の友人たちの寄贈、1908年。ケニオン・コックス《オーガスタス・セント=ゴーデンズ》メトロポリタン美術館蔵

横長の画面である。

男性が、立って作業する。

白い上衣を着て、袖をまくる。

右手を、壁面に当てる。

前に、木の台と粘土の面がある。

台には、海綿と道具が置かれる。

背後に、額と白い胸像。

白い上衣

男性の衣を見たい。

白く、袖が膨らむ。

そして、袖口をまくり上げている。

つまり、作業のための服である。

何をしている絵か

男性は、粘土の面に触れる。

そして、そこに浮き彫りが作られている。

つまり、彫刻の制作中である。

手の位置

右手を見たい。

粘土の面に、直接触れる。

そして、指が曲がる。

つまり、いま形を作っている。

道具ではなく、手で扱っている。

彫刻家の仕事場

背景を見たい。

白い胸像と、額に入った浮き彫り。

そして、木の枠組み。

つまり、彫刻家の仕事場である。

台の上の道具

台を見たい。

海綿が置かれる。

粘土を湿らせるための道具である。

つまり、実際の作業が描かれている。

大きな画面

寸法を見たい。

縦85.1センチ、横119.7センチ。

つまり、九点の中で最も大きい。

作業の場面を収めるには、幅が要る。

「再制作」という記録

制作年の欄を見たい。

一八八七年制作、一九〇八年に再制作とある。

つまり、二つの年が並ぶ。

自作を、もう一度描く

再制作とは、何か。

同じ画家が、自分の絵をもう一度描くことである。

つまり、複製ではない。

作者自身の手による二枚目である。

なぜ、再制作するか

理由は、いくつか考えられる。

最初の絵が手放されていた場合。

あるいは、館に納めるために描いた場合。

館の記録は、事情を示していない。

だから、当サイトも断定しない。

寄贈の形

来歴を見たい。

作者の友人たちの寄贈とされる。

そして、年は一九〇八年である。

つまり、再制作と同じ年である。

二人の画家と彫刻家

九点のうち、二枚は同業者の肖像である。

一枚は彫刻家、一枚は画家。

つまり、仲間を描いている。

注文ではない絵だろう。

二つの年が、つながる

再制作の年と、寄贈の年が同じである。

つまり、館へ納めるために描かれた可能性が高い。

もっとも、館の記録は明示していない。

だから、可能性として書いておく。

セオドア・ロビンソン
ケニオン・コックス《セオドア・ロビンソン》1878年。鉛筆、紙。縦27.9センチ、横21.6センチ。メトロポリタン美術館蔵。マーガレットとレイモンド・J・ホロウィッツの寄贈、2007年。ケニオン・コックス《セオドア・ロビンソン》メトロポリタン美術館蔵

同業者の素描

八点目は、素描の肖像である。

男性の胸から上が描かれる。

顔は、やや左を向く。

そして、口髭がある。

上衣は、白く、線が薄い。

右上に、文字と数字がある。

鉛筆という材料

技法欄を見たい。

鉛筆、紙とある。

つまり、簡素な材料である。

そして、小さな紙である。

手軽に描けるということでもある。

顔と、衣の差

描き方を比べたい。

顔は、細かく描かれる。

一方、上衣は輪郭だけである。

つまり、力の入れどころが分かれている。

右上の書き込み

画面の右上を見たい。

文字と、数字が並ぶ。

年だろう。

つまり、その場で記録している。

一八七八年という年

制作年は、一八七八年である。

九点の中で、最も早い。

作者は、二十二歳ごろになる。

小さな紙

寸法を見たい。

縦27.9センチ、横21.6センチ。

つまり、下絵の紙より小さい。

持ち歩ける大きさである。

若い時期の一枚

九点の年代を並べると、この一枚が最も早い。

そして、壁画の習作は二十年後である。

つまり、活動の初めと途中が並ぶ。

描かれた人

題は、人名である。

そして、その人物も画家である。

つまり、画家が画家を描いている。

若い時期の交友の記録でもある。

飛ぶ影
ケニオン・コックス《飛ぶ影》1883年。油彩、カンヴァス。縦76.2センチ、横92.1センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ケニオン・コックス《飛ぶ影》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

もう一枚の風景

九点目も、風景である。

手前に、黄土色の草地。

そして、中央に緑の谷。

奥へ、丘が続く。

空には、白い雲が浮かぶ。

大きな画面

寸法を見たい。

縦76.2センチ、横92.1センチ。

つまり、六点目より大きい。

同じ年の風景でも、寸法が違う。

題の意味

題は、飛ぶ影である。

つまり、雲の影が地面を走る様子だろう。

そして、実際に画面には明暗の帯がある。

緑の谷

中央を見たい。

緑の木立が、谷を埋める。

そして、その両側が黄土色の斜面である。

つまり、色が三つの帯になっている。

雲の影

草地を見たい。

明るい部分と、暗い部分がある。

そして、その境が斜めに走る。

つまり、雲の影である。

六点目との比較

六点目と九点目を並べたい。

いずれも、一八八三年の風景である。

そして、丘の重なりを描く。

何が違うか

六点目は、色が沈む。

そして、九点目は緑が明るい。

つまり、季節が違うのだろう。

同じ年に、違う季節を描いている。

大きさの差

寸法を比べたい。

六点目が40.6センチ掛ける76.2センチ。

九点目が76.2センチ掛ける92.1センチ。

つまり、九点目のほうがはるかに大きい。

九点の内訳

九点をまとめたい。

素描が五枚、油彩が四枚。

そして、素描のうち四枚が制作のための下絵である。

二つの館

九点の所蔵先を見たい。

八点がニューヨーク、一点がワシントン。

つまり、ほとんどが一つの館にある。

下絵がまとまって収蔵されたためだろう。

二つの仕事

九点は、二つに分けられる。

一つは、壁画や天井装飾のための仕事。

もう一つは、風景と肖像である。

装飾画という分野

十九世紀末から二十世紀初め、建物の内部を絵で飾る仕事があった。

公共の建物、図書館、大学。

つまり、注文の大きな仕事である。

そして、下絵が大量に描かれる。

下絵が、残る理由

完成した壁画は、建物にある。

そして、動かせない。

一方、下絵は紙である。

だから、美術館に収蔵されやすい。

見えない完成品

九点のうち四枚は、下絵である。

そして、その完成品は美術館にない。

つまり、途中だけが残っている。

途中を、見る

方眼の引かれた紙、転写用の紙、衣文だけの紙。

いずれも、完成品では見えないものを示す。

どう拡大したか、どう衣を考えたか。

制作の手順が、そのまま紙に残っている。

そして、その線は消されずに公開されている。

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