作品を知る

大理石は、削るしかない——ロダン・パーマー・エーレトほか九点

粘土は足して直せ、青銅は型から何度でも出せる。大理石は削るだけで、削り残しがそのまま意匠になる。九点を数えると、原型から十七年後に彫られた像、題にあって材料の欄にない天板、光だけを通す透かし格子があった。一方向の作業をめぐる記録である。

女性像の小像
古代ギリシア《女性像の小像》シカゴ美術館蔵

白い石が、人の形にまで削られている

細長い小像である。

39.9×11.6×4.9センチしかない。

厚みは五センチもない。

正面から見ると、人の姿である。

横から見ると、板に近い。

頭は楕円で、後ろへ反る。

顔には、鼻だけがある。

目も口も、彫られていない。

首は短く、肩は水平に張る。

腕は胸の前で組まれる。

左腕が上、右腕が下である。

腕の境は、浅い溝で示される。

胸の下には、横の線が一本ある。

腰から下は、まっすぐ落ちる。

膝のあたりに、浅い溝がある。

脚は二本に分かれる。

足先は下へ向き、まっすぐ伸びる。

石の色は、乳白色である。

ところどころ、褐色の染みがある。

染みは面の下から出ているように見える。

塗られたものではない。

土の中で長く置かれた跡らしい。

女性像の小像
古代ギリシア《女性像の小像》前期青銅器時代、紀元前2600年から2400年。館の記録では、大理石。39.9×11.6×4.9センチ。番号は1978.115。シカゴ美術館蔵。古代ギリシア《女性像の小像》シカゴ美術館蔵

館の記録では、材料は大理石の一語である。

大理石は、石灰岩が熱と圧力で変わったものである。

粒がそろっていて、どの方向にも割れにくい。

だから細かく削れる。

そして削るしかない。

足すことができない。

削りすぎれば、戻せない。

九点のうち、彫刻の材料としての大理石は五点である。

浮き彫りを別に数えれば、六点になる。

数え方で、答えが一つ動く。

大理石は、削られた分だけの形になる

この一つを出発点に、大理石にまつわる九点を数えていく。

大理石には、二つの顔がある。

一つは、白くて均質な、形を彫るための石である。

もう一つは、色と筋の入った、模様を見せるための石である。

先に言ってしまうと、九点のうち、白い大理石は五点である。

一点では、大理石は色と筋のほうである。

一点では、大理石が写真に写っている。

一点では、大理石が絵に描かれている。

そして一点では、大理石は題にあって材料の欄にない。

つまり九点のうち二点で、大理石は記録の中で位置がずれている。

題にあるか、説明文にあるかの差である。

頭だけが、残っている

二点目は、小さな頭部である。

男性の頭部
ミシェル・コロンブ《男性の頭部》1520年から25年。館の記録では、大理石。全体は14×12.2×8センチ。番号は1921.1003。クリーヴランド美術館蔵。ミシェル・コロンブ《男性の頭部》クリーヴランド美術館蔵

首から上だけの像である。

全体は14×12.2×8センチしかない。

顔はやや右を向く。

額は広く、眉が張る。

目は細く、瞳が彫り込まれている。

鼻は高く、先が丸い。

頬はこけ、口の脇に皺がある。

口は閉じ、口角が下がる。

顎は小さく、前へ出る。

髪は短い巻き毛である。

巻き毛は額のまわりに並ぶ。

耳は、髪に半分隠れる。

首の切り口は、斜めである。

切り口の面は粗く、削り跡が残る。

後から切り離されたらしい。

石の色は白く、灰色の筋がある。

館の記録では、この二つの大理石の頭部が、もともと何のためのものかは分からない。

館の記録は、そう書いている。

城館の浮き彫りの一部だったか、あるいは墓の彫刻だったかと推測されている。

様式は、ある彫刻家の作を思わせる。

その人は、ある地方で王侯貴族に仕えた著名な彫刻家である。

しかしこの頭部は、その人に近い追随者か、工房の一員が彫ったものかもしれないという。

館の記録は、そう説明している。

つまり作者も、もとの場所も、確かではない。

分かっているのは、材料と大きさだけである。

そして館は、この頭部がもう一つと対をなすと書いている。

二つで一組の彫刻だったことになる。

しかし、何の一部かは分からない。

彫刻の材料の欄については、材料の欄で扱った。

白い胸像が、黒い台に載る

三点目では、二種類の大理石が使われる。

若者の胸像(洗礼者聖ヨハネ)
フランチェスコ・モーキ《若者の胸像(洗礼者聖ヨハネ)》1630年から40年。館の記録では、大理石、斑のある黒大理石の台座。40.5×33×29センチ。番号は1989.1。シカゴ美術館蔵。フランチェスコ・モーキ《若者の胸像(洗礼者聖ヨハネ)》シカゴ美術館蔵

胸から上の像である。

40.5×33×29センチある。

顔は正面を向き、わずかに上を見る。

目は大きく、瞳が深く彫られる。

唇はやや開く。

髪は太い巻き毛で、頭の周りを渦巻く。

巻き毛の一本ずつが、下まで彫り抜かれている。

隙間に、影が入る。

首は太く、傾く。

肩には、布が掛かる。

布は右肩を覆い、左胸で折れる。

胸は裸で、鎖骨が見える。

下端は、水平に切られる。

その下に、黒い台がある。

台は段になって広がる。

黒には、白い筋が走る。

筋は細く、まばらである。

台の段ごとに、筋の向きが変わる。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

材料の欄は、大理石と、斑のある黒大理石の台座である。

つまり同じ石が、二つの役を持つ。

上は形を見せ、下は模様を見せる。

白い像は、光を柔らかく通す。

黒い台は、光を返さない。

九点のうち、白と黒の大理石が同居するのは、この一点である。

台座は、像の一部ではない。

しかし館の記録は、材料の欄に書いている。

像と台を、一つの作品として扱っている。

削り残した部分が、そのまま見える

四点目では、削らなかった部分が意味を持つ。