面は、覆いである——明珍宗介・小川破笠・デューイングほか九点
広間に、面が散る
油彩である。
88.9×119.4センチ。
横長である。
画面は、大きな広間である。
奥に、扉が開く。
柱が、左右に立つ。
天井から、緑の飾りが下がる。
右のほうに、卓が並ぶ。
白い布が、掛かる。
人が、大勢いる。
三十人以上いる。
衣は、さまざまである。
赤、青、白、黄。
帽子をかぶった者が多い。
中央に、噴水がある。
その手前で、二人が踊る。
一人は、桃色の衣である。
床には、何かが落ちている。
右奥に、椰子の葉が見える。

館の札は、六つある。
噴水、室内、男性たち、女性たち、踊り、そして都市の名である。
面の札はない。
題には、仮面舞踏会という語が入る。
しかし、画面の人物は小さい。
一人ひとりの顔は、点ほどの大きさしかない。
面を着けているかどうか、確かめにくい。
前の一点では、面が一つだけ見えた。
ここでは、面は見えない。
見えないが、題がそれを保証している。
そして、この絵の主題は面ではない。
大勢が集まっていることである。
面は、その集まりの名の一部にすぎない。
集まりの名に、面が入る。
入っていれば、誰が誰かわからない催しだとわかる。
わからないことが、この催しの条件である。
だから、顔が小さく描かれていてもよい。
描き分ける必要が、そもそもない。
踊ることについては、踊る足は、地に着いているで扱った。
面を、手に持つ
油彩である。
全体で56.2×61.3センチ。
横長である。
画面の右寄りに、女が座る。
椅子に、浅く腰かける。
体は、左を向く。
顔は、やや下を向く。
髪は、後ろでまとめる。
衣は、淡い灰緑である。
肩から、ゆるく落ちる。
袖は、肘までである。
腕が、露わになる。
右手は、膝の上にある。
その手に、小さなものがある。
丸く、白い。
面である。
顔に、当てていない。
持っているだけである。
背後の壁に、細長い掛物がある。
画面全体が、霞んでいる。

館の記録は、短い。
作者と題と年と材料と寸法だけである。
説明の文はない。
題が、動作を言っている。
面を持つ婦人。
かぶっているとは、書かれていない。
そして、画面でも持っているだけである。
膝の上で、下を向いている。
顔は、そのまま出ている。
前の二点は、舞踏会の場面だった。
この一点は、室内に一人である。
面は、使われていない。
使われていない面は、ただの物である。
それでも、題に残る。
持っているというだけで、題になる。
そして、この面は白い。
何の表情もない。
前の五点の面には、表情があった。
怒り、鬼、あるいは仮装の華やぎ。
この面だけが、何も言わない。
そして、持ち主の顔のほうに表情がある。
面と顔の役が、入れ替わっている。
額の中に、怪奇な面がある
板に描かれた油彩である。
額を外すと85×74センチ。
女が一人、椅子に座る。
上半身が描かれる。
頭に、白い布をかぶる。
顔は、やや右を向く。
目は、こちらを見る。
衣は、黒い。
袖に、毛皮が付く。
胸元に、細い金の鎖がある。
腰に、紐が垂れる。
両手は、体の前にある。
指が、長い。
右手に、小さな数珠を持つ。
椅子の背は、木彫りである。
そして、画面の左に柱がある。
柱の上に、顔が彫られている。
人とも獣ともつかない。
その口から、鎖が下がる。
鎖の先に、盾がある。

館の説明は、この彫りの由来を書いている。
作者は、四年ほど羅馬に住んだ。
その町の美術と遺物に、深く影響を受けた。
半身の座像、緊張しつつ優美な手、そして怪奇な古代風の面。
それらが、その経験の跡である。
一方で、質感を細かく写す好みは、北方の伝統に由来する。
館は、描かれた人物の経歴も書く。
一五三五年に結婚し、ある町に住んだ。
画家は、その町で描いたのだろう。
そして、面から下がる紋章についても書く。
二つの家の印を組み合わせている。
だから、対になる夫の肖像があったはずである。
ここで面は、建築の飾りである。
顔の形をしているが、かぶるものではない。
前の回で見た、壺の肩や口と同じである。
体の部分の形が、建物に移されている。
そして、この面は口を開けている。
その口から、鎖が下がる。
鎖の先に、家の印が付く。
口が、物を吊るす金具になっている。
顔の形をした道具が、顔の働きをしていない。
死んだ顔から、型を取る
青銅である。
高さ19.5センチ。
顔だけがある。
耳の前までがある。
額の上は、平らである。
髪は、彫られていない。
目は、閉じている。
瞼が、落ちくぼむ。
眉は、目立たない。
鼻は、高い。
鼻梁が、まっすぐである。
小鼻は、張る。
口は、閉じる。
唇は、薄い。
口角に、力がない。
頬は、こけている。
顎は、丸い。
首は、ない。
裏は、空洞である。