美術史・技法

同じ図案が、青銅と鉄で作られる——ラファイエット侯の記念章

作者も年も題も同じ二件が、技法の欄と寸法だけで分かれる。青銅と鉄、直径は4.8センチと4.4センチ。記念章は複製される品である。裏面が公開されない理由も含めて読みたい。九件が、同じ一つの寄贈から来ている。

ラファイエット侯の記念章
フランソワ・オーギュスタン・カノワ《ラファイエット侯の記念章》メトロポリタン美術館蔵

同じ図案が、二つの金属で作られる

記念章を九件、記録の欄で並べてみる。

そのうち二件は、作者も年も同じである。

そして、題も同じだ。

違うのは、技法の欄と寸法だけである。

一方は青銅、他方は鉄。

直径は4.8センチと4.4センチ。

四ミリ違う。

同じ図案を、二つの金属で作っている。

金属が違えば、縮み方が違う。

鋳るときの収縮率の差だろう。

つまり、同じ型から出ても寸法が変わる。

記念章は、複製される

記念章は、一点ものではない。

型を作り、そこから何十枚も打ち出す。

材料を変えれば、値段が変わる。

金や銀は高く、青銅は安く、鉄はさらに安い。

同じ図案で、いくつもの価格帯を用意する。

九件の技法の欄を並べると、その幅が見える。

青銅が四件、鉄が二件、金めっき銀が一件。

金めっき銅が一件。

そして、金属とだけ書かれた一件がある。

前の回の記事で、版画の複製について何度も書いてきた。

記念章も、同じ原理で作られる。

ラファイエット侯の記念章
フランソワ・オーギュスタン・カノワ《ラファイエット侯の記念章》1824年。館の記録では、青銅。直径4.8センチ。番号は83.2.317。メトロポリタン美術館蔵。フランソワ・オーギュスタン・カノワ《ラファイエット侯の記念章》メトロポリタン美術館蔵

円い金属の板である。

地は褐色で、鈍く光る。

中央に、男性の横顔が浮き出る。

顔は右を向く。

髪は短く巻き、額が広い。

鼻がまっすぐで、顎が張る。

首もとに、高い襟が立つ。

上着の肩の線が、下辺で切れる。

顔のまわりに、文字が弧を描いて並ぶ。

左に数語、右に数語。

文字は縁に沿って、外向きに刻まれる。

下辺の縁近くに、小さな署名らしい文字がある。

ラファイエット侯の記念章
フランソワ・オーギュスタン・カノワ《ラファイエット侯の記念章》1824年。館の記録では、鉄。直径4.4センチ。番号は83.2.318。メトロポリタン美術館蔵。フランソワ・オーギュスタン・カノワ《ラファイエット侯の記念章》メトロポリタン美術館蔵

前の一件と、図案が同じである。

同じ男性の横顔が、右を向く。

髪の巻き方も、襟の形も変わらない。

文字の配置も同じである。

違うのは、地の色だ。

こちらは暗い灰色で、褐色が混じる。

表面に、錆の斑が広がる。

浮彫の縁が、前の一件よりやや鈍い。

そして、上部に小さな穴が開いている。

紐を通すための穴だろう。

前の一件には、この穴がない。

穴と、吊り環

九件の写真を見ると、上部の作りに差がある。

穴が開いているものが一件。

金属の輪が付いているものが二件。

何も付いていないものが六件。

輪や穴があれば、身に着けられる。

なければ、手に持って見るか、飾るしかない。

館の記録は、この差を書かない。

技法の欄にも、寸法の欄にも出てこない。

写真を見なければ、分からない。

前の回の記事で、記録の欄が書かないことについて何度も書いてきた。

用途に関わる情報が、しばしば欄から落ちる。

ラファイエット侯の記念章
ジャック・エドゥアール・ガトー《ラファイエット侯の記念章》1830年。館の記録では、鉄。直径4.8センチ。番号は83.2.308。メトロポリタン美術館蔵。ジャック・エドゥアール・ガトー《ラファイエット侯の記念章》メトロポリタン美術館蔵

暗い灰色の円い板である。

上部に、金属の輪が付く。

輪は太く、縦に立つ。

中央に、男性の横顔が浮き出る。

顔は左を向く。

前の二件とは、向きが逆である。

髪は短く、後頭部で盛り上がる。

首もとに、高い襟が見える。

顔の左右に、四桁の数字が刻まれる。

左が古い年、右が新しい年である。

数字は縁に沿って、縦に並ぶ。

地の表面には、細かい傷が散る。

同じ人物を、別の人が彫る

いま見た一件と、次の一件は主題が同じである。

同じ人物の横顔で、左右に年が並ぶ。

年の欄も、どちらも1830年。

ところが、作者の欄の名が違う。

別の人が、それぞれ別の型を彫った。

同じ人物を記念する章が、同時に複数作られたのだろう。

館は、両方を収めている。

そして、寸法がまるで違う。

一方は直径4.8センチ、他方は2.7センチ。

倍近い差がある。

同じ主題でも、大きさは作り手の判断による。

ラファイエット侯の記念章
ジョゼフ・アルノルド・パングレ《ラファイエット侯の記念章》1830年。館の記録では、金めっきの銀。直径2.7センチ。番号は83.2.309。メトロポリタン美術館蔵。ジョゼフ・アルノルド・パングレ《ラファイエット侯の記念章》メトロポリタン美術館蔵

小さな円い板である。

全体が明るい金色に輝く。

上部に、金色の輪が付く。

中央に、男性の横顔が浮き出る。

顔は左を向く。

髪は巻き、後ろで束ねられる。

肩に、房飾りの付いた肩章が見える。

軍服の姿だろう。

顔の左右に、四桁の数字が並ぶ。

左が古い年、右が新しい年である。

下辺の縁近くに、小さな文字がある。

九件でいちばん小さく、いちばん明るい一件だ。

作者の欄が、二人になる件

九件のうち三件は、作者の欄に二人の名がある。

役割は、どちらも作った人である。

区別が書かれていない。

なぜ二人なのか。

記念章には、表と裏がある。

表に肖像、裏に場面や文字を入れる。

その二つを、別々の人が彫ることがある。

だから、作者が二人になる。

館の記録は、そこまで書かない。

どちらが表でどちらが裏かも、書かれない。

前の回の記事で、役割の欄が仕事を示す例を何度も見た。

ここでは、役割が同じで区別がつかない。

通商条約を記念する章
ベルトラン・アンドリュー、レイモン・ゲラール《通商条約を記念する章》1822年。館の記録では、青銅。直径5.1センチ。番号は83.2.423。メトロポリタン美術館蔵。ベルトラン・アンドリュー《通商条約を記念する章》メトロポリタン美術館蔵

褐色の円い板である。

中央に、男性の横顔が浮き出る。

顔は右を向く。

髪は後ろへ流れ、首筋で束ねられる。

束ねた髪が、下へ垂れる。

顎の下に、二重の輪郭がある。

胸から下は、衣の襞になる。

顔の左右に、文字が弧を描いて並ぶ。

左に短い語、右に長い語。

文字は太く、間隔が広い。

下辺の縁近くに、細い署名が入る。

浮彫は高く、輪郭に深い影が落ちる。

題が、人の名になる

九件の題を並べてみる。

そのうち六件は、人の名を含む。

ラファイエット侯が三件。

ワシントンが一件。ピアースが一件。

そして、ある艦長の名が一件。

残る三件は、題が記念章という一語だけである。

誰の、何のための章か、書かれていない。

写真を見れば、横顔が彫られているのは分かる。

しかし、誰かは分からない。

館は、分かるものだけを題に書く。

分からないものは、品名だけを置く。

前の回の記事で、題が説明になる例を何度か見た。

こちらは、題が短くなる方向である。

情報がなければ、題も短くなる。