作品を知る

肩は、何かを載せる台である——懐月堂度繁・ピアッツェッタ・カトリンほか九点

ミーチートエヌー(傷ついた熊の肩)、首長の妻
ジョージ・カトリン《ミーチートエヌー(傷ついた熊の肩)、首長の妻》1831年。館の記録では、油彩・カンヴァス。53.5×41.9センチ。スミソニアン・アメリカ美術館蔵。ジョージ・カトリン《ミーチートエヌー(傷ついた熊の肩)、首長の妻》スミソニアン協会蔵

この一枚を肩の九点に入れたのは、題のためである。

人の名に、肩の語が入っている。

傷ついた熊の肩、という意味だと館は記す。

つまり、これは体の部分の話ではない。

人の名である。

名の中に、熊と、傷と、肩がある。

この画家は、一八三〇年代に各地を回った。

そして、人々の肖像を描き残した。

名は、聞き取って音で写している。

意味の訳は、そのあとに付けられた。

だから、この訳が正確かどうかはわからない。

わかるのは、館の記録がそう書いていることだけである。

九点のうち、これが最も肩から遠い一点である。

画面の肩には、毛皮が載っているだけである。

名のほうの肩は、熊のものである。

それでも、記録の上では肩の一点である。

機械は、名の中の肩も拾う。

拾ったものを並べると、こういう並びになる。

人の名に体の部分が入るのは、めずらしくない。

日本語にも、肩を使った名はある。

ただし、館の記録に残る形は、訳を経ている。

肩のための、扇形の鉄

鉄の板である。

二つで一組になっている。

左右の肩に当てる。

幅は25.2センチ。

高さは21.5センチ。

厚みは、14.8センチある。

形は、扇に似ている。

上が狭く、下が広い。

表面に、太い筋が何本も走る。

筋は、上の一点から放射状に出る。

扇の骨のようである。

縁は、外へ反る。

下の縁は、波打つ。

金属の表面は、磨かれている。

光が、筋に沿って伸びる。

小さな穴が、いくつか開く。

紐を通すための穴である。

ゴシック式扇形肩甲一対
アントニオ・ミッサリア《ゴシック式扇形肩甲一対》1485年から1500年のあいだ。館の記録では、鋼。全体で幅25.2センチ。番号は1916.2080。クリーヴランド美術館蔵。アントニオ・ミッサリア《ゴシック式扇形肩甲一対》クリーヴランド美術館蔵

館の説明は、刻印について書いている。

甲冑の部品は、鍛え、成形し、磨いたあと、検査された。

寸法の合いと仕上がりを見る。

その段階で、親方が刻印を打つ。

町や組合の印が加わることもある。

ここにある三つの印は、ミラノのものとされる。

上の印は、冠の下に三文字らしいものがある。

下の印は、二度繰り返される。

割れた十字の中に、文字が入る。

館は、これをミッサリア家のものだろうと書く。

館はまた、肩甲という部品の範囲も説明する。

肩を覆い、しばしば腋も覆う。

背と胸の一部にも及ぶ。

つまり、肩甲は肩だけの防具ではない。

肩を中心にした、広い面である。

それでも、名は肩から取られている。

甲冑については、一領を組み上げるで扱った。

少年の肩に、合わせて作る

同じく、肩の防具である。

こちらは左肩だけが残る。

高さ11.4センチ。

幅も11.4センチ。

奥行きは8.9センチ。

前の一点の、半分ほどしかない。

少年のための甲冑である。

形は、筒に近い。

何枚もの細い板が、重なる。

板は、横に走る。

重なりの縁が、うねる。

表面に、彫りがある。

渦や葉らしい形が、帯になって並ぶ。

その帯が、板ごとに入る。

金の色が、ところどころ残る。

縁には、より線の飾りが回る。

少年用装飾甲冑の左肩当(肩の防具)
ハンス・ゾイゼンホーファー《少年用装飾甲冑の左肩当》1532年ごろ。館の記録では、鋼・銅合金・金。高さ11.4センチ。番号は29.158.121。メトロポリタン美術館蔵。ハンス・ゾイゼンホーファー《少年用装飾甲冑の左肩当(肩の防具)》メトロポリタン美術館蔵

館の記録は、産地をインスブルックとする。

説明の文はない。

わかるのは、寸法と材料と、装飾用だということである。

装飾用の甲冑は、実戦には使わない。

行列や式典のために作られる。

だから、彫りが細かい。

前の一点は、実用のものだった。

筋は装飾でもあるが、強さのためでもある。

こちらは、細かい板を重ねて曲げやすくしてある。

動きやすさを、優先している。

そして、寸法が小さい。

11.4センチという数字が、着る人の体を示す。

腕輪の直径が腕の太さを示したのと、同じである。

肩の幅は、成長で変わる。

だから少年用の甲冑は、短い期間しか使えない。

使えなくなっても、残る。

残ったものだけが、いま数えられる。

一領の甲冑は、多くの部品からできている。

その中で、肩の部品だけが残ることがある。

小さくて、丈夫で、形がはっきりしているからだろう。

今回の九点にも、肩の部品が二つ入った。

胴や脚の部品は、一つも出てこなかった。

壺にも、肩がある

黒絵式の水瓶である。

高さは43.2センチ。

口の直径は24.7センチ。

底の直径は15.2センチ。

胴は、大きく張る。

そこから上へ、すぼまる。

すぼまりはじめる曲がり目がある。

そこを、肩と呼ぶ。

肩には、細長い画面がある。

人が二人、向き合う。

一方は、人の体に牛の頭を持つ。

胴の画面は、もっと大きい。

四頭立ての馬車が、正面を向く。

馬の脚が、八本並ぶ。

御者の後ろに、武人が立つ。

左右にも、武人が一人ずついる。

そのうち二人は、こちらを見ている。

いちばん下に、小さな画面がある。

獅子が二頭、鹿に迫る。

黒絵式ヒュドリア(水瓶) 正面向きの四頭立て馬車(胴部)、テセウスとミノタウロス(肩部)
アンティメネスの画家《黒絵式ヒュドリア(水瓶)》紀元前520年ごろ。館の記録では、陶。全体で高さ43.2センチ。番号は1975.1。クリーヴランド美術館蔵。アンティメネスの画家《黒絵式ヒュドリア(水瓶) 正面向きの四頭立て馬車(胴部)、テセウスとミノタウロス(肩部)》クリーヴランド美術館蔵

館の説明は、三つの画面の関係を書いている。

主題は違うが、勝利という点でつながるという。

肩の画面では、テセウスがミノタウロスを倒す。

いちばん下では、獅子が鹿に迫る。

胴の画面では、勝利はまだ来ていない。

三人の武人は、これから戦う。

そのうち二人が、こちらを向いている。

正面向きの顔は、めずらしいと館は書く。

正面向きの馬車と、対になっている。

ここで肩は、器物の部位の名である。

人の肩からの比喩である。

胴があり、首があり、口がある。

器に体の名をつけるのは、多くの言語で起きる。

そしてその名が、記録に残る。

機械は、それを人の肩と区別しない。

区別しないから、こうして並ぶ。

並べてみると、比喩の筋道が見える。

胴がいちばん広く、肩で狭まり、首でさらに狭まる。

人の体と、同じ順である。

だから、同じ名がついた。