刀は、身分の道具である——ウードリー・春英・ジャンボローニャほか九点
刀を、一本だけ差す
二枚続の版画のうち、二枚が並ぶ。
一枚が32.5×14.4センチ。
もう一枚は33×14.6センチ。
わずかに違う。
右の画面に、男が立つ。
役者である。
顔は、正面をやや外れる。
眉は、太い。
髷は、小さい。
衣は、淡い桃色である。
大きな丸い文様が散る。
腰のあたりに、刀が一本ある。
柄が、左の腰から前へ出る。
左の画面には、女の姿の役者がいる。
こちらには、刀がない。
背景は、緑の土手と、桃色の枝である。
空は、淡い。

館の札は「刀」と「役者」の二つである。
刀という札が、はっきり付いている。
そして、題にも刀の語が入る。
一本を差した、という言い方である。
わざわざ本数が書かれている。
二本差すのが、武士の決まりだったからである。
長いものと、短いものを腰に差す。
一本しか差していなければ、武士ではない。
あるいは、正装ではない。
つまり、本数が身分を示す。
前の四点では、剣の飾りが身分を示していた。
ここでは、数が示している。
同じ道具でも、何を見るかで読み方が変わる。
そして、この一枚は役者絵である。
役者は武士ではない。
武士を演じるときにだけ、二本になる。
この一枚では、一本である。
だから、武士ではない役だとわかる。
二枚続のもう一枚には、刀がない。
女の姿だからである。
刀の有無が、役の性別も示している。
剣と、宝石を持つ
写本の一葉である。
紙は17.8×12.5センチ。
裏に、文字がある。
画面に、男が一人立つ。
横向きに近い。
頭に、白い頭巾を巻く。
髭は、黒く、短い。
外套を着ている。
緑の地に、花の文様が並ぶ。
縁に、毛皮が付く。
裾には、房が下がる。
下に、白い上衣を着る。
帯が、腰を締める。
袴は、縞である。
右手を、胸の高さに上げる。
指先に、赤いものがある。
宝石である。
左手は、下へ垂れる。
その手に、細長いものがある。
剣である。
先が、床に近い。

館の説明は、この種の肖像の由来を書いている。
宮廷の史官によれば、皇帝は領内の重臣たちの似姿を取らせた。
こうして巨大な画帖が作られた。
過ぎ去った者は新しい命を得て、生きている者には不死が約束される。
その息子も、この伝統を続けた。
写実的な肖像を注文し、皇室の画帖に収めた。
そして、この廷臣の装いが細かく書かれる。
毛皮で縁取り、房の付いた天鵞絨の外套。
その下に、帯で締めた白い上衣と、縞の袴。
これは、中央亜細亜の騎馬の民に由来する典型の装いだという。
ここで剣は、持ち物の一つである。
宝石と並んで、手に持たれている。
どちらも、価値のあるものである。
宝石は、右手で示される。
剣は、左手で下げられている。
示すものと、下げるもの。
同じ肖像の中で、扱いが違う。
剣は、装いに含まれる。
宝石は、その場で見せるものである。
だから、宝石だけが指先にある。
そして、この画帖の目的は不死だった。
似姿を残せば、名が残る。
持ち物も、いっしょに残る。
剣を、振りかざす
ペンと淡彩の素描である。
紙は16.9×12.2センチ。
小さい。
画面の中央に、男が一人いる。
体は、大きくねじれる。
右腕を、高く上げる。
その手に、剣がある。
刃は、湾曲する。
先が、画面の上を向く。
左腕は、前へ伸ばす。
顔は、右上を見る。
口は、開いている。
衣は、短い。
脚が、露わである。
足は、前後に大きく開く。
背後に、階段がある。
石段が、奥へ上がる。
右に、厚い帳が垂れる。
上に、獅子の像が見える。

館の説明は、この画家の作風を書いている。
劇的で、物語を語る素描の様式を作った。
挿絵に向く様式である。
この一枚も、そうした用途のものかもしれない。
同時代の多くの画家と同じく、近い過去の歴史に関心があった。
その中の重要な人物を、繰り返し描いた。
ここに描かれたのは、十六世紀のある王だろうという。
館は、作者の父にも触れる。
有名な画家の息子だが、まったく違う様式を作った。
ここで剣は、振り上げられている。
九点の中で、はじめて動いている剣である。
前の六点は、すべて止まっていた。
飾られ、差され、下げられていた。
振り上げられてはじめて、刃が上を向く。
そして、振り下ろされる場面は描かれない。
そして、この一枚は挿絵の下絵らしい。
小さく、紙も安い。
劇的な場面を、素早く組み立てている。
階段と帳が、舞台のように配される。
剣は、その舞台の中心にある。
戦いについては、戦いの絵に、戦いはないで扱った。
剣を振る腕に、剣がない
青銅の像である。
高さ39センチ。
台を入れると41.6センチ。
男が一人、立つ。
裸である。
兜も、甲冑もない。
体は、ねじれる。
腰から上が、右へ回る。
左足が、前へ出る。
右足は、後ろに残る。
歩みの途中である。
右腕は、後ろへ大きく引かれる。
肘が、曲がる。
手は、握られている。
しかし、何も握っていない。
指のあいだが、空いている。
顔は、左前を見る。
髭が、短い。
筋肉は、はっきりと分かれる。