名画の楽しみ方

番号が、二つの数字でできている——シカゴ美術館

アダム
オーギュスト・ロダン《アダム》1881年に原型を作り、1924年ごろ鋳造。暗褐色の緑青のある銅。館の記録では、縦198.1センチ、横73.7センチとされる。番号は1924.4。シカゴ美術館蔵。オーギュスト・ロダン《アダム》シカゴ美術館蔵

裸の男が、立ち上がろうとする姿勢をとる。

体は大きくひねられ、上半身が前へ倒れる。

右腕は下へ垂れ、指が開く。

左腕は体の前を横切る。

頭は深く下がり、顔が胸に近い。

背中の筋が浮き、肩甲骨が突き出る。

足は台の上で、片方が前に出る。

台は不定形で、岩のように見える。

表面には、指で押したような凹凸が残る。

原型の粘土の跡である。

銅の色は暗く、光の当たる面だけが明るい。

年の欄には、二つの年がある。

原型の年と、鋳造の年である。

機械工
エマ・ステビンス《機械工》1859年ごろ。大理石。館の記録では、縦74.9センチ、横29.2センチ、奥行き29.2センチとされる。番号は2000.13.1。シカゴ美術館蔵。エマ・ステビンス《機械工》シカゴ美術館蔵

白い大理石の像である。

男が立ち、右手を腰に当てる。

左手は、脇の台に置かれる。

台の上には、道具らしい形がある。

歯車と、巻いた紐のように見える。

衣は短く、膝の上で終わる。

前掛けのような布が、腰から下がる。

袖はまくられ、腕が出る。

頭には、小さな帽をかぶる。

顔は正面を向き、髭を蓄える。

台座には、作者の名と地名が刻まれる。

番号は、点が二つある形をとる。

年、通し番号、そして枝番の1である。

種別の欄も、あわせて置かれる

部門の欄のほかに、種別の欄もある。

絵画、器、彫刻、陶磁、染織、建築図面。

九点はいずれも違う種別に属する。

同じ館の中で、これだけ違うものが並ぶ。

そして、そのすべてが同じ番号の形を持つ。

これまで扱ってきた館は、絵画を中心とする館だった。

シカゴの館は、分野が広い。

分野が広くても、番号の作りは変わらない。

年と通し番号という単純な形が、あらゆる分野を覆う。

単純だからこそ、広く使える。

複雑にすれば、分野ごとに例外が要る。

例外が増えれば、管理が難しくなる。

番号の設計には、そういう配慮が働いている。

三つ目の数字がある番号

いま見た一点の番号は、2000.13.1である。

年、通し番号、そして三つ目の数字。

館の基本の形は、数字が二つだった。

ここでは三つになっている。

同じ受入に複数の作品が含まれる場合に、この形が使われるようだ。

実際、この作品には対になるもう一点がある。

同じ2000.13の帯に、枝番2の作品がある。

つまり、必要に応じて三つ目を足す。

基本は二つ、必要なら三つ。

柔軟だが、統一されていないとも言える。

九点の番号の形は、その柔軟さの現れである。

漁師の小屋
ハラルド・ソールベリ《漁師の小屋》1906年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦109センチ、横94センチとされる。番号は2000.1。シカゴ美術館蔵。ハラルド・ソールベリ《漁師の小屋》シカゴ美術館蔵

暗い画面である。

手前に、細い木が何本も並ぶ。

幹は黒く、上へまっすぐ伸びる。

枝は上部で交差し、網のようになる。

その向こうに、青い水面が横たわる。

水は静かで、光を薄く返す。

対岸には、低い丘が黒く続く。

空は深い青で、上部ほど暗い。

木立の下、中央よりやや右に、小さな家がある。

家の壁は白く、窓が明るい。

その明かりだけが、画面の中で暖かい。

色は青と黒に絞られる。

番号の通し番号は1である。

その年の最初の受入だったことになる。

番号の順序が、逆になる一点

九点のうち一点は、番号の形がまったく違う。

2.148.1966。

年が最後に来る。

しかも先頭は一桁の数字である。

これは、収蔵品ではなく、長期の貸与によるためだ。

出所の行には、市からの永久貸与と書かれている。

館の所有ではないので、収蔵の番号を振れない。

かわりに、貸与のための別の体系が使われる。

同じ館の記録の中に、二つの番号体系が並んでいる。

番号の形を見ただけで、所有の別が分かる。

シカゴ計画1909年の図版49
ダニエル・H・バーナムほか《シカゴ計画1909年の図版49》1907年。淡黄色の織り目のある紙に水彩と鉛筆、カンヴァスに裏打ち。館の記録では、縦103.5センチ、横480センチとされる。番号は2.148.1966。シカゴ美術館蔵。ダニエル・バーナム《シカゴ計画1909年の図版49》シカゴ美術館蔵

九点でいちばん横に長い画面である。

横は四メートル八十センチある。

縦は一メートル三センチしかない。

比は一対四を超える。

画面は、上から見下ろした都市の景色である。

手前に水面が広がり、そこに長い帯が伸びる。

帯は湖岸の造成地を示している。

その内側に、細い水路が並ぶ。

奥には、街の建物が霞んで見える。

色は淡い黄褐色で、全体が褪せている。

紙が変色していると、記録にも書かれている。

線は鉛筆で引かれ、その上に薄く色が置かれる。

計画を説明するための図である。

題が、一段落ある

いま見た一点は、題も特別である。

図版の番号だけでなく、内容の説明が続く。

湖岸をどう整備するか、公園をどう配置するか。

提案の内容が、題の中に書き込まれている。

読点で区切られた文が、二つ以上続く。

これは、もとの図版に付されていた説明だと考えられる。

館は、それをそのまま題として採った。

短くまとめることもできたはずだ。

しかし短くすれば、提案の内容が落ちる。

書き分けの記事でも見たとおり、記録は縮めない。

長くても、そのまま書く。

スタムノス(混酒器)
シカゴの画家に帰される《スタムノス(混酒器)》紀元前450年ごろ。赤絵式のテラコッタ。館の記録では、縦37センチ、横26センチとされる。番号は1889.22a-b。シカゴ美術館蔵。シカゴの画家《スタムノス(混酒器)》シカゴ美術館蔵

黒い地に、橙色の人物が描かれた器である。

胴は丸く、上へ向かってすぼまる。

左右に、短い把手が横へ出る。

蓋があり、中央につまみが付く。

胴の中央に、三人の人物が並ぶ。

いずれも衣を長く垂らす。

一人は杖のような棒を持つ。

中央には、脚のついた器が置かれる。

人物の輪郭は、細い線で描かれる。

衣の襞も、線だけで示される。

胴の下部には、帯状の文様が回る。

作者の欄には、人の名がない。

作品の様式から付けられた呼び名である。