番号が、二つの数字でできている——シカゴ美術館

二つの布片が、並べて写されている。
いずれも縦長で、下が広がる。
地の色は暗い赤褐色である。
その上に、黄色の文様が並ぶ。
四角い形が、規則的に繰り返される。
上端には、別の布が縫い付けられる。
そちらは緑と赤の細かい文様である。
下端は、糸がほつれて垂れる。
二枚は形が似ているが、同じではない。
一方がやや大きい。
寸法の欄は空である。
技法の欄も書かれていない。
九点の中で、欄が空なのはこの一点だけだ。
空の欄も、記録である
最後の一点には、寸法も技法も書かれていない。
測っていないのか、公開していないのかは分からない。
しかし、空であること自体が読める情報である。
銘記の欄でも書いたとおり、書かれていないことも情報になる。
他の八点には、寸法が細かく書かれている。
彫刻には奥行きまである。
その中で一点だけが空である。
理由は分からないが、差があることは分かる。
記録を読むときは、埋まっている欄だけでなく、空の欄も見る。
空の位置に、その館の作業の進み具合が現れる。
年の欄も、多様である
九点の年の欄を並べると、書き方が広い。
紀元前450年ごろ。500年から900年。
1810年から1820年。1859年ごろ。1869年。1906年。1907年。
そして、二つの年を並べたものが二点ある。
石膏で型を取った年と、銅で鋳造した年。
粘土で原型を作った年と、鋳造した年。
彫刻では、この二段構えがよく使われる。
原型と鋳造は、別の作業だからだ。
しかも、鋳造は作者の死後に行われることもある。
斜線の用法と同じで、二つの時点を示している。
平面の絵画では、こういう区別は起きにくい。
分野が広がると、年の欄の書き方も広がる。
紀元前と、二十世紀
九点の年を古い順に並べてみる。
紀元前450年ごろ。500年から900年。
そして1810年代から1907年まで。
いちばん古い一点と、いちばん新しい一点で、二千三百年以上ひらく。
最初の受入の記事で見た館では、幅はせいぜい五百年だった。
分野の広い館では、扱う時間の幅も広くなる。
それでも、番号の形は同じである。
紀元前の器も、二十世紀の図面も、同じ書き方で番号を持つ。
年と通し番号。ただそれだけだ。
番号は、作品の年代を区別しない。
区別するのは、館に入った年だけである。
だから二千三百年の幅が、同じ体系に収まる。
これは、番号という道具の強みでもある。
通し番号の大きさ
九点の通し番号を並べてみる。
232、22、77から79、398、13、1、4、そして貸与の148。
大きいものは398、小さいものは1である。
通し番号が大きいほど、その年の受入が多かったことになる。
1959年には、少なくとも398件の受入があった。
2000年には、通し番号1の作品がある。
その年の最初の受入という意味だ。
館が開いてから百年以上たっても、番号は毎年1から振り直される。
年ごとに区切ることの利点は、そこにある。
通し番号が際限なく大きくならない。
一年ぶんの件数が、番号から読める。
館の受入番号も、同じ考え方だった。
年で区切るのは、記録の基本的な工夫である。
出所の行は、六通り
九点の出所の行を数えると、六通りある。
収集の名が一点。
個人の寄贈が二点、うち一点は作者本人からの寄贈だ。
二人の連名による寄贈が一点。
資金の提供による購入が二点。
そして、市からの永久貸与が一点。
作者本人からの寄贈は、九点で一点だけである。
作った人が、その作品を館に渡す。
別の記事で扱った館の九点には、こういう例はなかった。
同時代の作家が寄贈する場合に起きる形である。
出所の行の型は、館が同時代の作品を扱うかどうかで変わる。
番号の形は、館ごとに違う
九点を通して見えるのは、番号の設計である。
年と通し番号の二つが基本。
必要なら三つ目を足す。
部分は文字でつなぎ、複数点は線でつなぐ。
貸与の作品には、別の体系を使う。
ワシントンの館とは、細かいところが違う。
しかし考え方は同じである。
年で束ね、番号で分け、必要なら枝を伸ばす。
どの館も、同じ問題を解こうとしている。
一点ずつを確実に指し、群としても扱えるようにすること。
その答えが、館ごとに少しずつ違う。
違いを見比べると、番号という道具の性質がよく分かる。
正解が一つではないから、館ごとに形が分かれる。
そして、どの形にも同じ制約がある。
いったん振った番号は、変えられない。
変えれば、過去の文献との対応が切れる。
だから設計の判断は、最初の一度で決まる。
百三十年前に決めた形を、いまも使い続けている。
九点の番号は、その継続の証しでもある。
1887年の番号と、2000年の番号が、同じ形をしている。
その間に、館の規模も分野も大きく変わった。
それでも、番号の形は変わらなかった。
変えないことが、記録を長持ちさせている。
もっとも、まったく変わらないわけではない。
三つ目の数字を足したり、文字の枝番を使ったり。
必要に応じて、拡張が行われている。
骨格を変えずに、末端だけを伸ばす。
その伸ばし方が、九点の番号に現れている。
七通りの形は、百三十年ぶんの工夫の積み重ねである。
一つずつの形には、それぞれ理由があった。
蓋があるから、文字を二つ。
三点で一組だから、番号を線でつなぐ。
貸与だから、別の体系を使う。
理由を知れば、形の違いは覚えやすくなる。










