作品番号の読み方——ターナーやホイッスラーの記録から
「1937.1.1」は、館に入った年と群と通し番号でできている。met、aic、nga、si。番号の形式は館の歴史を映し、作品を確実に指すための唯一の手がかりでもある。七点で読み方を示す。番号から作品を探す手順も、あわせて示しておきたい。

「1937.1.1」という番号
一枚の板絵から始めたい。

金地の前に、聖母が玉座に座っている。
赤い衣を頭からかぶり、膝に幼子を抱いている。
幼子は緑と橙の衣で、右手を上げている。
玉座は木彫のような構造で、背が高く湾曲している。
上部には三つの円があり、それぞれに天使が描かれている。
背景は全面が金である。
板の縁は擦れ、絵具の剥落が見える。
そして、この作品の所蔵番号を見てほしい。
1937.1.1である。
番号は、三つの数字でできている
美術館の所蔵品には、番号が振られている。
所蔵番号、あるいは受入番号と呼ばれるものである。
この館の場合、三つの数字を点でつなぐ形式になっている。
最初の数字は年である。1937年。
次の数字は、その年の受入の群を示す。
最後の数字は、その群の中の通し番号である。
つまり1937.1.1は、1937年の第一の受入群の第一番目という意味になる。
この館は1937年に設立された。
つまりこの板絵は、館の最初の収蔵品にあたる。
なぜ最初の一点が13世紀のビザンティンの絵なのか。
理由は寄贈の中身である。
設立にあたって、一人の収集家の蔵品がまとめて寄贈された。
その群を古い時代から順に並べ、番号を振ったと考えられる。
つまり番号の順序は、寄贈された作品の年代順に近い。
館の番号は、寄贈者の収集の姿を写していることになる。
番号は事務の記号だが、そこに歴史が入り込む。
同じ群の、109番目

同じ受入群の、別の一点である。
番号は1937.1.109。同じ「1937.1」の中の109番目である。
川に面した庭が描かれている。
左に並木が続き、その向こうに水面が広がる。
木々は逆光で暗く、葉の隙間から光が漏れる。
芝生には人影と犬が小さく描かれている。
川面には舟が数艘。奥に町の建物が霞む。
空は黄白色で、太陽が木立の中央にある。
つまり同じ日に、同じ寄贈者から入った作品が、番号で連続している。
番号を並べれば、その群の規模が分かる。
この群には、少なくとも百点以上が含まれていたことになる。
一人の収集家が集めた作品が、まとめて公共の館へ渡った。
19世紀から20世紀にかけて、こうした寄贈が美術館を作った。
当サイトが公開している作品にも、同じ経緯のものが多い。
受け入れ記録に個人名が並ぶのは、そのためである。
美術館の収蔵品は、寄贈者の名前の集まりでもある。
問い——番号から、何が読めるのか
ここから本稿の問いに入りたい。
所蔵番号は、美術館の内部の管理記号である。
しかし読み方を知っていると、いくつかのことが分かる。
いつ入ったか。どの群で入ったか。何番目か。
そして、どの版・どの一点を指しているか。
当サイトが扱う四つの提供元は、それぞれ別の形式を使っている。
以下、実例で確かめていきたい。
先に結論を書いておく。
番号から読めるのは、館に入った年と群と順番である。
制作年も来歴も、番号には入っていない。
つまり番号は目次であり、内容ではない。
番号は、どうやって付けられるのか
受け入れの手続きも押さえておきたい。
作品が館に入ると、まず記録が作られる。
寄贈者または売主、日付、作品の内容、状態。
そのうえで番号が振られ、台帳に登録される。
これを受入と呼ぶ。
番号は台帳の位置を示す記号であり、作品の身分証明にあたる。
一度振られた番号は、原則として変わらない。
作品が別の部門へ移っても、貸し出されても、番号は付いて回る。
だから番号は、作品を一意に指すための道具になる。
同じ画家の同じ題名の作品が複数ある場合でも、番号があれば区別できる。
作品の裏や額の裏に、番号が書かれていることも多い。
つまり番号は、物としての作品に貼り付いている情報である。
数字が示すのは、入った年である
まず注意しておきたいことがある。
番号の年は、作品の制作年ではない。
先の板絵は13世紀の作品だが、番号は1937年である。
つまり番号は、作品の歴史ではなく、館の歴史を記録している。
そして、必ずしも「最初に人の手に渡った年」でもない。

テムズ川の眺めである。
右手前に平底の舟が並び、茶色い帆柱が斜めに林立する。
左には赤い帆の小舟。水面は灰青で、白い筆が水平に走る。
対岸には低い建物と工場らしい形が並ぶ。
空は灰白で、雲が横に伸びる。
手前の岸には人影が小さく描かれている。
この作品の番号は2014.79.35である。
つまり2014年に受け入れられたことになる。
しかし受け入れ記録には、別の情報がある。
「コーコラン・コレクション(ジェームズ・パーメリーの遺贈、1941年)」とある。
つまりこの絵は、1941年に別の美術館へ遺贈されていた。
2014年に、その館の収蔵品がこちらへ移されたのである。
番号は、その移管の年を記録している。