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メアリー・カサットの代表作と特徴——母と子をどこから見て描いたのか

メアリー・カサットの代表作と特徴をまとめます。《子供の入浴》と色刷り版画を図版に、高い視点・平らな色面・こちらを見ない人物という画面の作りを、館の記録から確かめます。どの美術館で見られるかも合わせて記します。

子供の入浴
メアリー・カサット《子供の入浴》シカゴ美術館蔵

メアリー・カサットの代表作

メアリー・カサットの代表作としてまず挙がるのは、《子供の入浴》である。

次いで《舟遊び》、そして1890年から1891年にかけての色刷り版画の連作が挙げられる。

前者はシカゴ美術館、後者はナショナル・ギャラリー(ワシントン)にある。版画はシカゴとクリーヴランドの両館にそろう。

子供の入浴
メアリー・カサット《子供の入浴》1893年。館の記録では、カンヴァスに油彩。101.3×67.3センチ。番号は1910.2。シカゴ美術館蔵。メアリー・カサット《子供の入浴》シカゴ美術館蔵

カサットは1844年に生まれ、1926年に没したアメリカの画家である。制作の大半はパリで行われた。

印象派の画家たちの展覧会に加わり、その一員として作品を出した。主題に選んだのは、身近な女性と子どもの時間である。

館の記録によれば、《子供の入浴》の縦は101.3センチ。人物はほぼ等身大に近い大きさで描かれている。

母と子をどこから見て描いたのか

高いところからである。カサットは視点を人物の頭より上に置き、床まで見下ろす形で画面を作った。

《子供の入浴》では、洗面器の水面が真上から見たように丸く見える。同時に、二人の顔は横から見た形で描かれる。

一枚の中に、見下ろす角度と横から見る角度が同居している。この作りが、床の模様を壁のように立ち上げる。

母は左手で子の足を持ち、右手で腿を押さえる。子は膝の上で足を器へ入れる。

二人の視線はどちらも下を向き、こちらを見ない。見る側は、場面をのぞき込む位置に置かれる。

母の服は緑と白と桃色の縦縞である。縞は体の丸みに沿って曲がり、膝のところで折れる。

床には赤と青の幾何学模様が敷かれ、壁には花の模様が続く。人物の周りは、模様で埋められている。

模様の中で、子の肌と白い布だけが柄を持たない。だから視線は、まずそこへ落ちる。

バルコニーにて
メアリー・カサット《バルコニーにて》1878年から1879年。館の記録では、カンヴァスに油彩。85.2×65.5センチ。番号は1938.18。シカゴ美術館蔵。メアリー・カサット《バルコニーにて》シカゴ美術館蔵

初期の油彩では、絵具の置き方が粗い。背景の花は筆の跡をそのまま残している。

白い服の女性は大判の紙を両手で広げ、顔を伏せて読む。これも、こちらを見ない人物である。

浮世絵から何を取り入れたのか

輪郭の線と、平らな色の面である。当サイトの画家の記録では、1890年にパリで日本の版画の展覧会を見たのち、色版を重ねる版画に本格的に取り組んでいる。

湯浴みする女
メアリー・カサット《湯浴みする女》1890年から1891年。館の記録では、色刷りのアクアチントとドライポイント。版の跡は36.4×26.9センチ。番号は1932.1281。シカゴ美術館蔵。メアリー・カサット《湯浴みする女》シカゴ美術館蔵

《湯浴みする女》では、女性が後ろ姿で身をかがめ、器の水へ手を浸す。衣は桃色と緑の縞で、腰から下を覆う。

肌と衣の境は、細い線で区切られている。影による丸みづけは、ほとんど使われていない。

床の敷物は青地に草花の模様、家具は黄色の平らな面。柄と柄がぶつかり、奥行きよりも面の対比が前に出る。

上の鏡には、うつむいた顔が小さく映る。顔を正面から見せないという選び方は、ここでも変わらない。

館の記録では、この版画には色刷りのアクアチントとドライポイントが使われている。ドライポイントは銅の板を針で直接ひっかく技法である。

アクアチントは、松脂の粉をまいた板を腐食させて面の調子を作る。線をドライポイント、色面をアクアチントで受け持たせた形になる。

版は色ごとに分ける。刷る順に紙を重ねていくため、線と面の位置が少しずつずれることもある。

母の愛撫
メアリー・カサット《母の愛撫》1890年から1891年。館の記録では、色刷りのアクアチントとドライポイント、ソフトグラウンド併用。版の跡は36.8×26.8センチ。番号は1932.1288。シカゴ美術館蔵。メアリー・カサット《母の愛撫》シカゴ美術館蔵

《母の愛撫》では、子が母の頬へ顔を寄せる。母の服は白地に小さな模様、椅子は黄と朱の花柄である。

色の数は少なく、面と面が線で分かれる。浮世絵の版が持つ性質を、銅版の技法へ移した結果である。

ただし主題は移していない。描かれるのは役者でも名所でもなく、部屋の中の母と子である。

摺りの仕組みそのものについては浮世絵が西洋の絵に渡したもので扱った。版元と絵師の関係は写楽《三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛》の解説が参考になる。

カサットの絵はどこで見られるか

油彩の代表作は、シカゴ美術館とナショナル・ギャラリー(ワシントン)にある。版画はシカゴとクリーヴランドの両館が持つ。

当サイトが図版に使えるのは、これらの館が自ら公開した画像である。権利を手放した画像だけを扱う決まりで運営している。

館の記録では、《青い肘掛椅子の少女》は1878年、《浜辺で遊ぶ子どもたち》は1884年の作である。

どちらもナショナル・ギャラリー(ワシントン)にあり、当サイトの作品ページから画面を確かめられる。

乗合馬車の中で
メアリー・カサット《乗合馬車の中で》1890年から1891年。館の記録では、色刷りのドライポイントとアクアチント。版の跡は36.6×26.8センチ。番号は1941.71。クリーヴランド美術館蔵。メアリー・カサット《乗合馬車の中で》クリーヴランド美術館蔵

《乗合馬車の中で》は、母と子の主題を屋外の乗り物へ移した一枚である。

三人の人物が横に並び、窓の外には川と橋と対岸の建物が見える。窓枠が画面を横に切る。

左の女性は杖を持ち、外へ顔を向ける。右の女性は子を膝に抱え、うつむく。

人物は近く、風景は遠い。その二つが一枚の中で、上下に積み重ねられている。

油彩と版画を並べて見ると、同じ関心が続いているのが分かる。高い視点、平らな色、こちらを見ない人物である。

印象派の画家たちが何を共有していたかは印象派とは何かにまとめてある。

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