羽根は、頭へ行く——ホワイト・コーツ・デューラーほか九点
金属や石なら重くて載せられない場所に、羽根は載る。九点を数えると四点までが頭にあり、翼の羽根には遠征の名が書かれ、磁器の像では見たことのない土地のしるしになっていた。軽い材料が重い意味を負う記録である。

女性の手に、一本の羽根がある
縦長の写真である。
画面は20×16.4センチである。
紙は36.8×28センチある。
全体が、灰色の階調でできている。
黒はなく、白もない。
画面の左に、明るい戸口がある。
戸口の縁は、まっすぐ立つ。
その手前に、女性が座る。
体は右を向き、横顔になる。
顔は上を向き、目は伏せられる。
髪は結い上げられ、額が出る。
衣は白く、裾が長い。
裾は床に広がり、大きな面になる。
袖は膨らみ、肘までである。
右手は、胸の高さまで上がる。
手には、細長いものがある。
先が丸く、広がっている。
孔雀の羽根である。
左手は、膝の上にある。
床には、模様のある敷物がある。
奥の壁は、暗い。
輪郭は、どこもぼやけている。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。
そして裏の書き込みを写している。
そこには、題と、描かれた人の名がある。
つまり題は羽根だが、実際は肖像である。
材料は、プラチナ印画に黒鉛を加えたものである。
黒鉛は、あとから手で描き足された。
つまり写真の上に、手が入っている。
どこに描き足されたかは、分からない。
輪郭のぼやけた部分らしい。
写真と素描の境が、あいまいになっている。
羽根は、九つの場所に現れる
この一枚を出発点に、羽根にまつわる九点を数えていく。
羽根は、軽い。
そして、まっすぐな軸と細い枝でできている。
枝は互いに絡み、面になる。
面は薄く、光を通す。
色は、顔料ではなく構造から出ることがある。
孔雀の羽根の青緑が、それである。
先に言ってしまうと、九点のうち、羽根が身につけられているのは五点である。
一点では、羽根は手に持たれている。
一点では、羽根は遊び道具である。
一点では、羽根は翼の一部である。
そして一点では、羽根は人の呼び名である。
つまり羽根は、飾りとしてよりも先に、身につけるものである。
そして九点のうち、鳥として描かれているのは一点だけである。
羽根は、鳥から離れて現れることが多い。
羽根が、題になり、絵の外にある
二点目も、題が羽根である。

横長の画面である。
額なしで70.5×75.6センチある。
画面の右に、女性が座る。
体は左を向き、うつむく。
髪は赤みのある褐色である。
衣は青緑で、大きな花の文様がある。
袖は広く、腕を覆う。
手前に、卓がある。
卓の上には、布が広がる。
布は明るい黄緑である。
その上に、器がある。
器は青く、把手が渦を巻く。
女性の手は、布に触れる。
背景は、淡い緑と灰である。
背景には、文様のある壁掛けがある。
文様は淡く、輪郭がぼける。
人物と背景の境が、溶けている。
館の記録では、この画家は近代の様式に抵抗し、自らを伝統派と称した。
画家は見たものを描くべきだと考えていたという。
そして館は、描かれた人について書いている。
この人は、画家の教え子で、しばしば模特児になった。
のちに自身も肖像画家となり、遠い島々へ渡って、そこに住む人びとを記録したという。
館の記録は、そう説明している。
題にある青い羽根は、画面のどこにあるか分かりにくい。
卓の上の布か、衣の文様かもしれない。
館の記録も、そこに触れていない。
九点のうち、題の羽根が見つけにくいのは、この一点である。
題は、絵の一部を指すとはかぎらない。
雰囲気を指すこともある。
館の記録は、そこを説明しない。
髪に、白い羽根を挿す
三点目では、羽根は髪飾りである。

縦長の肖像である。
画面は60.7×45.7センチある。
若い女性が、胸から上まで描かれる。
顔はやや右を向き、目は正面を見る。
肌は白く、頬に薄い赤みがある。
髪は後ろでまとめられる。
髪の右に、白い羽根が立つ。
羽根は柔らかく、先が丸く垂れる。
その根元に、真珠の粒が並ぶ。
肩には、青い外套が掛かる。
青は、孔雀の羽根の色に近い。
外套の縁には、金の文様がある。
袖口には、白い毛皮がある。
胸元は赤く、大きく開く。
首には、真珠の輪が掛かる。
真珠は小さく、粒がそろう。
光は、粒の上側に一点ずつ入る。
館の記録では、この画家は当時の流行の肖像画家の一人で、この国のパステル画の先駆けだった。
ここでは、若い令夫人が結婚の肖像に描かれている。
異国風の孔雀青の外套は、金で飾られ、白い毛皮で縁取られる。
真珠と羽根が髪を飾り、深く開いた緋色の胴着が、白い肌を見せるという。
館の記録は、そう説明している。
つまり羽根は、真珠と並べて挙げられている。
どちらも、白くて丸い光を持つ。
羽根は柔らかく、真珠は硬い。
しかしパステルでは、どちらも同じ粉で描かれる。
材質の違いは、光の置き方で示される。
この画家の描き方については、パステルの横顔で扱った。
冠飾りの羽根を、細かく描く
四点目でも、羽根は頭にある。