作品を知る

羽根は、頭へ行く——ホワイト・コーツ・デューラーほか九点

金属や石なら重くて載せられない場所に、羽根は載る。九点を数えると四点までが頭にあり、翼の羽根には遠征の名が書かれ、磁器の像では見たことのない土地のしるしになっていた。軽い材料が重い意味を負う記録である。

孔雀の羽根
クラレンス・エイチ・ホワイト《孔雀の羽根》クリーヴランド美術館蔵

女性の手に、一本の羽根がある

縦長の写真である。

画面は20×16.4センチである。

紙は36.8×28センチある。

全体が、灰色の階調でできている。

黒はなく、白もない。

画面の左に、明るい戸口がある。

戸口の縁は、まっすぐ立つ。

その手前に、女性が座る。

体は右を向き、横顔になる。

顔は上を向き、目は伏せられる。

髪は結い上げられ、額が出る。

衣は白く、裾が長い。

裾は床に広がり、大きな面になる。

袖は膨らみ、肘までである。

右手は、胸の高さまで上がる。

手には、細長いものがある。

先が丸く、広がっている。

孔雀の羽根である。

左手は、膝の上にある。

床には、模様のある敷物がある。

奥の壁は、暗い。

輪郭は、どこもぼやけている。

孔雀の羽根
クラレンス・エイチ・ホワイト《孔雀の羽根》1902年ごろ。館の記録では、黒鉛を加えたプラチナ印画。画面は20×16.4センチ、紙は36.8×28センチ。番号は1980.145。クリーヴランド美術館蔵。クラレンス・エイチ・ホワイト《孔雀の羽根》クリーヴランド美術館蔵

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

そして裏の書き込みを写している。

そこには、題と、描かれた人の名がある。

つまり題は羽根だが、実際は肖像である。

材料は、プラチナ印画に黒鉛を加えたものである。

黒鉛は、あとから手で描き足された。

つまり写真の上に、手が入っている。

どこに描き足されたかは、分からない。

輪郭のぼやけた部分らしい。

写真と素描の境が、あいまいになっている。

羽根は、九つの場所に現れる

この一枚を出発点に、羽根にまつわる九点を数えていく。

羽根は、軽い。

そして、まっすぐな軸と細い枝でできている。

枝は互いに絡み、面になる。

面は薄く、光を通す。

色は、顔料ではなく構造から出ることがある。

孔雀の羽根の青緑が、それである。

先に言ってしまうと、九点のうち、羽根が身につけられているのは五点である。

一点では、羽根は手に持たれている。

一点では、羽根は遊び道具である。

一点では、羽根は翼の一部である。

そして一点では、羽根は人の呼び名である。

つまり羽根は、飾りとしてよりも先に、身につけるものである。

そして九点のうち、鳥として描かれているのは一点だけである。

羽根は、鳥から離れて現れることが多い。

羽根が、題になり、絵の外にある

二点目も、題が羽根である。

青い羽根
ウィリアム・ジェイ・エドモンドソン《青い羽根》1917年。館の記録では、油彩・カンヴァス。額なしで70.5×75.6センチ。番号は1917.400。クリーヴランド美術館蔵。ウィリアム・ジェイ・エドモンドソン《青い羽根》クリーヴランド美術館蔵

横長の画面である。

額なしで70.5×75.6センチある。

画面の右に、女性が座る。

体は左を向き、うつむく。

髪は赤みのある褐色である。

衣は青緑で、大きな花の文様がある。

袖は広く、腕を覆う。

手前に、卓がある。

卓の上には、布が広がる。

布は明るい黄緑である。

その上に、器がある。

器は青く、把手が渦を巻く。

女性の手は、布に触れる。

背景は、淡い緑と灰である。

背景には、文様のある壁掛けがある。

文様は淡く、輪郭がぼける。

人物と背景の境が、溶けている。

館の記録では、この画家は近代の様式に抵抗し、自らを伝統派と称した。

画家は見たものを描くべきだと考えていたという。

そして館は、描かれた人について書いている。

この人は、画家の教え子で、しばしば模特児になった。

のちに自身も肖像画家となり、遠い島々へ渡って、そこに住む人びとを記録したという。

館の記録は、そう説明している。

題にある青い羽根は、画面のどこにあるか分かりにくい。

卓の上の布か、衣の文様かもしれない。

館の記録も、そこに触れていない。

九点のうち、題の羽根が見つけにくいのは、この一点である。

題は、絵の一部を指すとはかぎらない。

雰囲気を指すこともある。

館の記録は、そこを説明しない。

髪に、白い羽根を挿す

三点目では、羽根は髪飾りである。

メアリー・ラドクリフ令夫人
フランシス・コーツ《メアリー・ラドクリフ令夫人》1755年。館の記録では、簀の目紙にパステル、カンヴァスで裏打ち。画面は60.7×45.7センチ。番号は1946.463。クリーヴランド美術館蔵。フランシス・コーツ《メアリー・ラドクリフ令夫人》クリーヴランド美術館蔵

縦長の肖像である。

画面は60.7×45.7センチある。

若い女性が、胸から上まで描かれる。

顔はやや右を向き、目は正面を見る。

肌は白く、頬に薄い赤みがある。

髪は後ろでまとめられる。

髪の右に、白い羽根が立つ。

羽根は柔らかく、先が丸く垂れる。

その根元に、真珠の粒が並ぶ。

肩には、青い外套が掛かる。

青は、孔雀の羽根の色に近い。

外套の縁には、金の文様がある。

袖口には、白い毛皮がある。

胸元は赤く、大きく開く。

首には、真珠の輪が掛かる。

真珠は小さく、粒がそろう。

光は、粒の上側に一点ずつ入る。

館の記録では、この画家は当時の流行の肖像画家の一人で、この国のパステル画の先駆けだった。

ここでは、若い令夫人が結婚の肖像に描かれている。

異国風の孔雀青の外套は、金で飾られ、白い毛皮で縁取られる。

真珠と羽根が髪を飾り、深く開いた緋色の胴着が、白い肌を見せるという。

館の記録は、そう説明している。

つまり羽根は、真珠と並べて挙げられている。

どちらも、白くて丸い光を持つ。

羽根は柔らかく、真珠は硬い。

しかしパステルでは、どちらも同じ粉で描かれる。

材質の違いは、光の置き方で示される。

この画家の描き方については、パステルの横顔で扱った。

冠飾りの羽根を、細かく描く

四点目でも、羽根は頭にある。