美術史・技法

金は、厚みで語られる——メソニエ・ロッセリーノ・イーゼンブラントほか九点

紙の上の金は、糸の値段と結び付く

四点目は、写本の一葉である。

柘榴を持つ若者:単葉写本の挿絵
リザー・イェ・アッバースィー《柘榴を持つ若者》1600年から1650年ごろ。館の記録では、紙に不透明水彩と金。図は15.3×8センチ。番号は1947.497。クリーヴランド美術館蔵。リザー・イェ・アッバースィー《柘榴を持つ若者:単葉写本の挿絵》クリーヴランド美術館蔵

濃い青緑の地に、細長い枠がある。

枠の中に、若者がひとり立っている。

体を斜めに向け、顔は横を向く。

頭には、白い布を巻いた帽子をかぶる。

上着は縞で、緑と褐色が交互に並ぶ。

腰から下は、淡い緑の長い衣である。

手には、丸い実を持っている。

柘榴である。

枠の外側、青緑の地の一面に、金で草花が描かれている。

細い茎が曲がり、葉と花が点々と付く。

鳥の姿も混じる。

金は線として引かれ、面としては塗られていない。

館の記録では、この一枚は宮廷でもっとも才のあった画家の様式を映している。

その人の仕事は、ほかの画家による多くの翻案と模写を生んだという。

そして館は、装いについて具体的に書いている。

この若者は、近くの二枚の絵の人物より控えめな装いをしている。

金の糸が少ないのである。

おそらく身分の低さを示しているのだろうという。

さらに館は、重要な一行を添えている。

金の糸はあまりに高価だったので、支配者たちは古い織物を焼いて、その金の価値を回収することがあった。

館の記録は、そう書いている。

つまり、絵の中の金の量が、身分の高さを表している。

そして絵の外では、金は焼いて取り戻せる資産だった。

紙の上の金も、同じ性質を持つ。

金泥は膠で溶いた金の粉である。

紙ごと燃やせば、灰の中に金が残る。

だから写本の金は、装飾であると同時に蓄えでもある。

この一葉では、金は枠の外側にだけ使われている。

人物の衣には、金の線が引かれていない。

内側を控えめにし、外側を金で埋める。

その配分が、若者の身分の低さと結び付けられている。

石膏の表面に、金の痕が残る

五点目は、浮き彫りである。

聖母子
アントニオ・ロッセリーノ《聖母子》1470年ごろ。館の記録では、彩色した石膏に鍍金の痕。全体は83.5×65.1センチ。番号は1970.44。クリーヴランド美術館蔵。アントニオ・ロッセリーノ《聖母子》クリーヴランド美術館蔵

縦長の浮き彫りである。

上部が半円の枠に収まっている。

中央に、女性が体を斜めに向けて座る。

腕に幼子を抱えている。

幼子は体をひねり、顔を上へ向ける。

その左右に、小さな子どもの頭が二つ並ぶ。

衣の襞は深く彫られ、影が濃く落ちる。

表面の色は、褪せた桃色と白と灰色が混じる。

ところどころ、色が剥げ落ちている。

そして縁のあたりに、金色がわずかに残る。

枠は木で、全面が金色である。

枠の表面には、細かい刻みが並ぶ。

館の記録では、この浮き彫りは大理石の原作から型を取った複製の一つである。

原作は1460年代のもので、いまは別の館にあるという。

そして館は、この作例の状態を率直に書いている。

古い、はっきりした欠損があるが、それでも全体の構図と、量感のいくらかは伝わる。

さらに、十五世紀の彩色と鍍金が十分に残っている。

それによって、大理石には決して意図されなかった色彩の豊かさと、装飾に富む表面が想像できる。

そしてそれが、この作品を同時代の板絵と結び付けているという。

館の記録は、そう読んでいる。

つまり大理石の原作は白かった。

複製のほうが、色と金を持っている。

そして館は、額についても書いている。

金色の木の額は、この浮き彫りのために作られたものではない。

別の土地の、五十年ほど古いものである。

金は、中身より先に別の場所にあった。

そして額のほうが、浮き彫りより古い。

館の記録では、額は1400年から1450年ごろのものである。

浮き彫りは1470年ごろだから、二十年から七十年の差がある。

古い額に、新しい中身が入れられている。

いま金がいちばん多く残っているのは、その古いほうである。

中身の金は剥げ、枠の金は残った。

触れられる場所と、触れられない場所の差かもしれない。

ただし、それは記録に書かれていない。

金地の板絵については、金地から顔へで扱った。

帳面の小口が、金で塗られている

六点目では、金は絵の外にある。

手漕ぎ舟の素描(スケッチブックより)
アルバート・ビアスタット《手漕ぎ舟の素描(スケッチブックより)》1891年ごろ。館の記録では、黒鉛・網目紙、小口金、革表紙装。全体は12.1×19.7×1.1センチ。番号は1995.379.3。メトロポリタン美術館蔵。アルバート・ビアスタット《手漕ぎ舟の素描(スケッチブックより)》メトロポリタン美術館蔵

小さな帳面の一頁である。

12.1×19.7センチしかない。

紙は白く、線は黒鉛だけである。

画面の中央に、細長い舟が一艘描かれている。

舟は横向きで、船首が右へ上がる。

へりの線が二本、平行に走る。

内側には、腰掛けの板が三枚見える。

その下に、うっすらと別の線がある。

描き直した跡かもしれない。

背景には何も描かれていない。

紙の上下の縁は、丸みを帯びている。

館の記録では、この帳面は革の表紙で綴じられている。

そして紙の小口には、金が施されている。

館の記録は、その二つを技法欄に並べて書いている。

つまり金は、描かれた面ではなく、紙の束の側面にある。

閉じているとき、金は帯として見える。

開けば、金は消える。

九点のうち、金がまったく見えない状態で存在するのは、この一点である。

そして描かれているのは、舟の輪郭だけである。

帳面の中身については、帳面の中身で扱った。

金は、量られ、数えられる

ここから、金が描かれる三点に入る。