美術史・技法

金は、厚みで語られる——メソニエ・ロッセリーノ・イーゼンブラントほか九点

純金の箱と、銀に掛けた金鍍金は見分けがつかない。それでも記録は二つを別の語で書き分ける。九点のうち金が実際に使われているのは六点で、面として広がるのは二点だけ。残りは線か帯か、剥げ残った痕である。記録の言葉と、目に見える量が食い違っている。

金の小箱
ジュスト=オーレル・メソニエ《金の小箱》クリーヴランド美術館蔵

掌に載る箱が、まるごと金でできている

小さな箱である。

全体で3×8.3×5.2センチしかない。

掌に載る大きさで、厚みは指一本ぶんもない。

上から見ると、輪郭は円ではない。

四方が波打ち、角がふくらんで張り出している。

側面には、縦の溝が幾筋も刻まれている。

その溝の上下は、太い縁で締められている。

蓋の中央に、盾の形の枠がある。

枠の中には、細かい紋章が彫り込まれている。

枠のまわりには、深い青の石が嵌め込まれている。

青は四か所に分かれ、蓋の面を区切っている。

残りの面は、すべて金である。

彫りの立ち上がりが鋭く、光の当たる面と影の面がはっきり分かれる。

金の小箱
ジュスト=オーレル・メソニエ《金の小箱》1728年から29年。館の記録では、金とラピスラズリ。全体は3×8.3×5.2センチ。番号は2026.12。クリーヴランド美術館蔵。ジュスト=オーレル・メソニエ《金の小箱》クリーヴランド美術館蔵

館の記録では、中央の枠、重い縁取り、溝の刻まれた側面が、作者の建築への関心を示している。

そして、動きの強い輪郭、並外れた細部、金とラピスラズリの劇的な対比が、この箱を際立たせているという。

さらに館は、この種の箱の用途も書いている。

嗅ぎ煙草入れと呼ばれ、香りを付けた粉状の煙草を入れた。

貴重な材料で作られ、多くの装飾を施され、持ち主の富と流行への意識と社会の位置を伝えた。

そして贈り物としてしばしば用いられたという。

館の記録は、そこまで説明している。

つまりこの箱では、金は色ではない。

重さと硬さを持つ金属である。

そして蓋の紋章から、注文した人の名まで分かっている。

館の記録では、この箱はスペインの先の王妃のために作られた。

蓋には、その人の紋章と、亡き夫の紋章が並ぶという。

さらに館は、刻印についても書いている。

作者の頭文字、検査役の印、そして金の細工に用いられた課税の印。

三つの印が、この小さな面に打たれている。

そして館は、乾いた一行を添えている。

作者の刻印を持つ品として知られているのは、二点しかない。

来歴の欄も長い。

王妃の手を離れ、ある国の政府の所有となり、1930年に売られている。

金でできた小箱は、持ち主を替えながら二百年を渡ってきた。

金は、絵の具ではない

この一点を出発点に、金の使われた九点を数えていく。

記録の技法欄に色の名が現れるとき、それはたいてい物質の名である。

青は石であり、白は鉛か貝殻であり、黒は煤である。

そして金は、まぎれもなく金属である。

伸ばせば箔になり、砕けば粉になり、量れば重さがある。

先に言ってしまうと、九点のうち、金が実際に使われているのは六点である。

残る三点では、金は描かれているか、語られているだけである。

量られる金、夢に見る金の延べ棒、そして賞の名としての金。

数えていくと、この物質が画面に入る前に済ませてきた手続きが見えてくる。

鋼の上に、金が焼き付けられる

二点目は、甲冑の一部である。

ルドルフ二世の甲冑一式のうち鞍前輪の板金
アントン・ペッフェンハウザー《ルドルフ二世の甲冑一式のうち鞍前輪の板金》1571年ごろ。館の記録では、青焼きと腐食と鍍金を施した鋼。番号は1916.1888。クリーヴランド美術館蔵。アントン・ペッフェンハウザー《ルドルフ二世の甲冑一式のうち鞍前輪の板金》クリーヴランド美術館蔵

弓なりに曲がった金属の板である。

外側の縁は大きく弧を描き、内側はくり抜かれている。

地の色は青みを帯びた灰色である。

その地の上を、金色の帯が走っている。

帯は太く、途中で結び目のように交差する。

交差した輪の内側には、細かい葉と、房のような植物が詰められている。

金色の部分は、地よりわずかに沈んで見える。

腐食させて彫り下げ、そこへ金を置いたからである。

館の記録では、この板はもと鞍の一部だった。

皇帝の子である二人の大公のために作られた、人馬そろいの馬上槍試合用の甲冑に属する。

残りの部品の多くは、いまも別の館の武具室にあるという。

そして館は、色の組み合わせについて書いている。

装飾の文様は、皇帝の色である黒と金でできている。

優美な結び目をつくり、その輪の中に特徴的な葉とホップの若枝が詰められている。

館の記録は、そう説明している。

つまりここでの金は、家の色である。

そして館は、乾いた一行を添えている。

もと鞍の一部だったこの板は、乗り手の腿を守っていた。

飾りであると同時に、防具でもある。

同じ時代の甲冑については、ニュルンベルクとアウクスブルクの甲冑で扱った。

技法欄には、三つの工程が順に並んでいる。

青焼き、腐食、鍍金である。

まず鋼を熱して青くし、次に薬品で文様を彫り下げ、そこへ金を置く。

順序を入れ替えれば、この面は成り立たない。

つまり技法欄は、材料の一覧であると同時に、工程の順序でもある。

館の記録の寸法欄は空である。

大きさは書かれていない。

一式の甲冑から外れた部品なので、単独の寸法が測られていないのかもしれない。

ただし、それは記録に書かれていない。

刀の金具に、六つの材料が集まる

三点目は、刀剣である。

鞘付きサーベル
アジェム・オウル《鞘付きサーベル》19世紀。館の記録では、鋼・銀鍍金・金・瑪瑙・木・革。長さ94.3センチ。番号は36.25.1294。メトロポリタン美術館蔵。アジェム・オウル《鞘付きサーベル》メトロポリタン美術館蔵

細く反った刀身と、それを収める鞘が並んでいる。

刀身は灰色に光り、先へ向かってわずかに細くなる。

峰の側には、ゆるやかな稜が走る。

柄は短く、先が鉤のように曲がる。

柄の材は淡い色で、縞の模様が見える。

瑪瑙である。

柄と刀身の境には、金色の金具が巻かれている。

鞘は黒く、金属の帯が三か所に回る。

帯には吊るすための輪が付く。

その帯の表面に、細かい文様が刻まれている。

館の記録では、材は六種類ある。

鋼、銀に金を掛けたもの、金、瑪瑙、木、革である。

つまり一本の刀の中で、金は二通りに現れる。

金そのものとしてと、銀の上に薄く掛けられたものとしてである。

館の記録は、その二つを分けて書いている。

金鍍金と純金では、厚みも値段も違う。

しかし見た目は、どちらも金色である。

見ただけでは区別のつかない違いが、技法欄では区別されている。

長さ94.3センチという寸法も見ておきたい。

刀身と鞘を合わせた長さである。

その全長のうち、金が使われているのは金具の部分だけである。

面積でいえば、十分の一にも満たない。

しかし記録の材料欄では、金は三番目に置かれている。

鋼、銀鍍金、金の順である。

量の多い順ではなく、外から見える順に近い。

材料の並べ方にも、見え方の順序が入り込んでいる。