暮らしと名画

収穫は、刈ったあとを描く——ブルトン・ドービニー・ホーマーほか九点

刈る動作は一瞬で終わり、束ねて運ぶ時間が長く続く。収穫の九点を数えると、鎌を振る人は一人もおらず、写るのは篩と桶と荷車と舟と袋と籠だった。湿地の草も、綴織から取り出す金糸も、同じ語で収穫と呼ばれている。

菜種の収穫
ジュール・ブルトン《菜種の収穫》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

束を頭に載せて、人が立ち上がる

横長の大きな画面である。

全体は93.98×137.16センチある。

画面は、刈り終えた野である。

地面は黄土色で、平らである。

刈り株が、短く並ぶ。

画面の中央に、女が立つ。

体は正面をやや向く。

顔はこちらを見る。

髪は布で覆われる。

上着は白く、袖をまくる。

前掛けは青で、腰から下へ垂れる。

両手で、平たい丸いものを持つ。

篩である。

篩は木の枠で、底が浅い。

その左に、男が立つ。

男は身をかがめ、束を持ち上げる。

束は黄色く、太い。

束は頭の上まで上がる。

腕は伸びきり、肩が張る。

その左には、積み上がった山がある。

山は束を重ねたもので、高い。

手前には、女が二人しゃがむ。

一人は赤い上着で、束を集める。

一人は白い布を広げる。

右の隅にも、人が座る。

その人は、頭を布で包む。

奥には、平らな野が続く。

野の上に、束の山が点々と並ぶ。

空は灰と桃色で、雲が低い。

夕方らしい。

菜種の収穫
ジュール・ブルトン《菜種の収穫》1860年。館の記録では、油彩・カンヴァス。全体は93.98×137.16センチ。番号は2014.136.21。ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵。ジュール・ブルトン《菜種の収穫》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

つまり、誰が誰かは書かれていない。

題には、刈り取る植物の名がある。

その種から、油を絞る。

収穫とは、育ったものを切り離すことである。

切り離せば、それ以上は育たない。

だから収穫には、時期が決まっている。

早くても遅くても、質が落ちる。

だから収穫の日は、人が集まる。

一人では、間に合わないからである。

最初の一枚にも、七人以上がいる。

収穫は、九つの場所に現れる

この一枚を出発点に、収穫にまつわる九点を数えていく。

収穫の場面には、三つの段階がある。

刈ること、束ねること、運ぶことである。

そして、そのあとに祝いが来る。

先に言ってしまうと、九点のうち、刈っている場面は一点もない。

三点は、束を運んでいる場面である。

二点は、刈り終わった野である。

一点は、収穫のあとの宴である。

一点は、収穫の月を待つ場面である。

そして二点では、収穫は寓意の姿と、金属の話である。

つまり九点のうち、鎌を振る人は一人もいない。

収穫のあとで、酒を飲む

二点目は、宴である。

葡萄の収穫
ル・ナン《葡萄の収穫》1650年代。館の記録では、油彩・カンヴァス。額なしで92×121センチ。番号は1958.175.1。クリーヴランド美術館蔵。葡萄の収穫》クリーヴランド美術館蔵

横長の画面である。

額なしで92×121センチある。

画面の左に、大きな樽がある。

樽は縦に立ち、輪が回る。

樽の上には、葡萄の蔓が垂れる。

その手前に、卓がある。

卓には、白い布が掛かる。

卓を囲んで、人が数人立つ。

人びとは、器を持ち上げる。

奥は暗く、顔がよく見えない。

画面の中央に、若い女が座る。

女は白い頭巾をかぶる。

顔はこちらを向く。

口元が、わずかに緩む。

膝の上と足元に、子どもが数人いる。

子どもは丸い顔で、こちらを見る。

その右に、男が座る。

男は横を向き、女のほうへ寄る。

右の隅には、犬がいる。

犬は伏せ、こちらを見る。

地面には、布と壺が置かれる。

館の記録では、この時代には身分の低い人びとを表すことへの関心が戻った。

この兄弟の画家たちは、田舎の人びとの日々の営みをよく描いたという。

そして館は、この一点について書いている。

対になる作があり、そちらは子どもたちが踊る場面である。

この一点は、別の画家の作とされることもあるという。

さらに館は、画面の内容を細かく書いている。

奥の日陰では、気のいい、しかし品のない男たちが飲んでいる。

中央の若い女は、酔った連れの手が近づくのに気づいている。

その気づきが、笑みに表れているという。

館の記録は、そう説明している。

つまり収穫そのものは、画面にない。

あるのは、そのあとの時間である。

九点のうち、宴を描くのは、この一点である。

卓の上には、器と布しかない。

収穫した葡萄は、描かれていない。

描かれているのは、それが酒になったあとである。

牛が、荷を引いて帰る

三点目は、版画である。

葡萄の収穫
シャルル・フランソワ・ドービニー《葡萄の収穫》1865年。館の記録では、エッチングとドライポイント。版の跡は23.7×36.6センチ。番号は1920.665。クリーヴランド美術館蔵。シャルル・フランソワ・ドービニー《葡萄の収穫》クリーヴランド美術館蔵

横長の版画である。

版の跡は23.7×36.6センチある。

線は細く、灰色である。

画面の下半分に、野がある。

野は平らで、低い草が生える。

画面の中央より右に、荷車がある。

荷車は木で、車輪が大きい。

荷台には、桶が積まれる。

桶は縦に並ぶ。

荷車の前に、牛が二頭いる。

牛は白く、体が太い。

首には、木の枷が渡る。

一頭は頭を下げる。

一頭は前を向く。

その脇に、人が立つ。

人は小さく、輪郭だけである。

奥には、低い木立が続く。

さらに奥には、丘の稜線がある。

稜線は薄く、空との境があいまいである。

空は白く、細い横線が並ぶ。

線の間隔で、雲の濃さが変わる。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

つまり場所も、季節の説明もない。

題にある収穫は、葡萄のものである。

桶は、その実を運ぶための器である。

しかし桶の中は、見えない。

九点のうち、運ぶ道具が車なのは、この一点である。

干し草の山が、木陰に並ぶ

四点目は、刈り終えた野である。