抱くと、輪郭が一つになる——デューラー・ムリーリョ・ドガほか九点

横長の紙である。
22.9×29.2センチある。
紙は灰色に沈んでいる。
線は細く、途切れがちである。
画面の左に、女が座る。
体は右を向く。
膝の上に、小さな体がある。
赤子である。
女の腕が、その体を囲む。
顔は下を向く。
輪郭は一度しか引かれていない。
塗りは、ほとんどない。
その右に、建物の柱が並ぶ。
柱は縦の線で示される。
上には、簡単な柱頭がある。
さらに右には、欄干がある。
欄干は横の線と、短い縦線でできる。
画面の右下には、小さな人物が三つある。
三つとも、走っている形である。
腕を上げ、脚を開く。
顔は描かれていない。
館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。
館の札には「乳児」と「母」がある。
そして題には、括弧の中に問いが入っている。
ある画家の絵からの写しか、あるいは別の寓意からか、という問いである。
つまり館は、出どころを決めていない。
疑問符が、題の中に残されている。
九点のうち、題に問いが残るのは、この一点である。
板の器具に、子が納められる
五点目では、子は器具の中にいる。

縦長の肖像である。
73.7×60.9センチある。
画面の中央に、女が座る。
体は正面を向く。
顔はやや左を向く。
髪は黒く、真ん中で分ける。
首には、細かい飾りが幾重にも掛かる。
衣は暗い色で、縦に太い帯が走る。
帯は赤と黄と緑と白である。
帯には、細かい文様が並ぶ。
膝の上に、細長い板がある。
板は上下に長く、縁が立つ。
板の上部に、弓形の枠が付く。
その中に、子どもの顔がある。
顔は小さく、正面を向く。
目は開いている。
体は板に固定され、見えない。
女の両手が、その板を支える。
板の表にも、色の帯がある。
背景は、緑と褐色の木立である。
背景は暗く、輪郭がぼける。
館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。
題は、その人の名を音で写している。
そして、していることを説明として添えている。
つまり抱かれているのは、子であり、同時に板である。
板があるので、手を離しても子は動かない。
抱く動作の一部を、道具が代わりに引き受けている。
この画家の題の付け方については、二つの名前で扱った。
三十五人の中で、一人だけが抱く
六点目は、写真である。

横長の写真である。
画面は15×23.9センチある。
台紙に貼られ、四隅が丸い。
画面いっぱいに、子どもが並ぶ。
並びは、緩やかな半円である。
奥に立ち、手前に座る。
数は、三十を超える。
多くは白い衣を着る。
腰に、幅の広い帯を締める。
中央には、台がある。
台の上に、一人が立つ。
その子は、背に翼を付ける。
翼は白く、大きい。
手には、小さな体を抱えている。
抱えているのは、赤子である。
その足元に、二人が座る。
一人は白い衣、一人は暗い衣である。
背後には、垂れ幕がある。
床には、模様のある敷物がある。
左上の隅に、小さな印がある。
右下にも、文字が入る。
館の記録では、この写真館は兄弟が営んでいた。
二人は書店と印刷所も営み、一人は漫画家としても成功したという。
そして館は、この一枚について書いている。
三十五人の子どもを巧みに並べ、ある宗教の行事を記念する集合写真を作った。
天使の姿の少女が赤子を抱き、その足元の少女と少年は、婚礼の写真のように並んでいるという。
館の記録は、そう説明している。
つまり抱いている人は、三十五人のうち一人である。
そして、その一人だけが台の上に立つ。
高さが、役を分けている。
九点のうち、抱く人が群衆の中にいるのは、この一点である。
抱くことが、人質を取ることになる
七点目では、抱く意味が反転する。

大きな混酒器である。
口の直径49.9センチ、高さは50.5センチある。
口は広く、外へ開く。
胴は下へすぼまり、円い足に立つ。
把手は左右に二つ、上向きに付く。
地は黒く、艶がある。
胴の正面に、大きな円がある。
円のまわりには、細い光の筋が放射する。
円の中に、人物が立つ。
その人物は、車に乗る。
車を引くのは、翼のある獣である。
円の左右に、翼のある人物がいる。
下のほうには、台がある。
台の上に、小さな体が二つ横たわる。
その前後に、人物が近づく。
裏の面には、別の場面がある。
そちらでは、男が台の上に立つ。
男は片手に子を抱え、もう一方に武器を持つ。
その左右から、二人が駆け寄る。
館の記録では、正面の場面はある悲劇にかかわる。
魔女が、竜の引く車で飛び去る。
夫への復讐のために、二人の子を殺したところであるという。
そして館は、裏の場面について書いている。
別の悲劇から採られている。
傷ついた戦士が、祭壇で幼い子を人質に取っている。
その両親が、子を救おうと駆け寄るという。
館の記録は、そう説明している。
つまりここでは、抱くことが脅しである。
同じ動作が、守ることにも、奪うことにもなる。
古代の器の形と用途については、器の形と用途で扱った。