作品を知る

紫は、青と赤のあいだで揺れる——ブリオーニ・ターナー・ルンゲほか九点

夕日の光が、金と菫色になる

四点目は、肖像である。

ロール・ボロー夫人の肖像
ギュスターヴ・クールベ《ロール・ボロー夫人の肖像》1863年。館の記録では、布に油彩。額なしで81×61.2センチ。番号は1962.2。クリーヴランド美術館蔵。ギュスターヴ・クールベ《ロール・ボロー夫人の肖像》クリーヴランド美術館蔵

縦長の画面である。

額なしで81×61.2センチある。

中央に、女性が上半身を見せている。

顔は右を向き、目はこちらを見ていない。

黒い帽子をかぶり、黒い衣を着ている。

衣にはレースの縁飾りが付く。

胸のあたりで、両手が小さな花束を持つ。

花は白と桃色である。

背景は、左が暗く、右が明るい。

明るい部分は、金色と、その上の菫色に分かれる。

雲の下端が、横に伸びている。

夕方の空である。

館の記録では、作者はこの人の肖像を四点描いた。

これはその最後で、もっとも仕上げられたものだという。

そして館は、色について書いている。

黒い絹の衣とレース、そろいの帽子。

金と菫色の夕日の光が、背景を柔らかく照らしている。

館の記録は、そう説明している。

さらに、理想化されていないとも書く。

影の落ちた目と、豊かな首を描いたことについて、当時の批評家が厳しい言葉を残したという。

つまり紫は、批判された部分ではない。

批判されたのは、顔と首である。

背景の空も、この肖像の作りに関わっている。

黒い衣を暗い背景に置けば、輪郭が消える。

だから右半分だけを明るくし、そこへ肩と帽子の線を出している。

金と菫色は、その明るさを作るための色である。

つまり紫は、人物を切り抜くために置かれている。

そして花束の白と桃色が、胸のあたりで明るさを受け持つ。

黒い面の中に、明るい点が二つある構図である。

この画家の挑発については、挑発で扱った。

羽の光が、紫に見える

五点目は、鳥の水彩である。

パープルグラックル
ジョン・ジェームズ・オーデュボン《パープルグラックル》年記なし。館の記録では、水彩・鉛筆・チョーク・インク・紙。紙は48.9×35.5センチ。スミソニアン・アメリカ美術館蔵。ジョン・ジェームズ・オーデュボン《パープルグラックル》スミソニアン協会蔵

縦長の紙である。

48.9×35.5センチある。

画面の中央に、太い茎が縦に立つ。

葉が長く垂れ、先が折れている。

とうもろこしの株らしい。

穂の皮が裂け、実が覗いている。

その茎に、鳥が二羽とまっている。

上の一羽は、体を横に向ける。

くちばしは太く、先が尖る。

体は暗い褐色で、輪郭だけが描かれている。

下の一羽は、頭を実のほうへ伸ばす。

こちらの体には、青と紫の光沢がある。

首から胸にかけて、色が変わる。

背景は塗られていない。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

題にある名には、紫という語が入る。

しかし鳥の羽そのものに、紫の色素があるわけではない。

羽の構造が光を散らし、見る角度によって青や紫に見える。

つまりこの紫は、材料ではなく光の働きである。

上の一羽に紫がないのは、向きが違うからかもしれない。

ただし、それは記録に書かれていない。

ガラスの中で、紫が渦を巻く

六点目は、型押しのガラスである。

カップ
チャリナー・テイラー社《カップ》1870年から90年。館の記録では、紫のマーブル型押しガラス。高さ5.1センチ、径6.4センチ。番号は46.140.730。メトロポリタン美術館蔵。チャリナー・テイラー社《カップ》メトロポリタン美術館蔵

小さなカップである。

高さ5.1センチ、径6.4センチしかない。

胴は下がすぼまり、上が開く。

両側に、小さな取っ手が付く。

胴の面には、縦の溝が並ぶ。

ガラスの色は、白と紫が混じっている。

混じり方は一様ではない。

白い部分の中を、紫の筋が渦を巻いて走る。

濃いところと薄いところが、はっきり分かれる。

大理石の断面に似ている。

一つとして同じ模様はない。

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

材料の欄には、紫のマーブル型押しガラスとある。

つまり模様は、絵付けではない。

色の違うガラスを溶かして混ぜ、型に押し込んだ結果である。

この会社のマーブル・ガラスについては、大理石のようなガラスで扱った。

九点のうち、紫が偶然の形をしているのは、この一点である。

そして型押しという作り方も見ておきたい。

溶けたガラスを型に流し、押して形を作る。

一つずつ吹いて作るより速く、安くできる。

その代わり、模様は型が決める。

しかし色の混じり方だけは、型では決められない。

だから同じ型から出た品でも、渦の形は一つずつ違う。

安く大量に作りながら、同じものが二つとない。

その矛盾が、この種のガラスの見どころになっている。

釉の中の金属が、紫に光る

七点目は、陶の像である。

オウム
ジョルナイ工房《オウム》1910年ごろ。館の記録では、ラスター釉の陶器。全体は38.3×26.7×19.9センチ。番号は1984.190。クリーヴランド美術館蔵。ジョルナイ工房《オウム》クリーヴランド美術館蔵

鳥の形をした像である。

高さは38.3センチある。

鳥は体を丸め、首を左へ曲げている。

くちばしは太く、先が下へ大きく曲がる。

目のまわりに、細かい彫りがある。

翼は体に沿ってたたまれている。

尾は下へ長く伸びる。

体の表面は、金と緑が混じった金属の光沢を持つ。

見る角度によって、色が変わる。

台座は岩の形をしている。

その面は、青と紫と金が混じった光沢である。

紫は、光の当たる縁のあたりに強く出る。

館の記録では、この鳥の独特の金属光沢は、ラスター釉という技法による。

砕いた金属を釉の工程に取り込む方法だという。

多くは銀か金か白金である。

そして館は、色を分けて書いている。

鳥は緑と金の光沢で、台座は青と紫と金の光沢で飾られている。

館の記録は、そう説明している。

つまりこの紫は、砕かれた金属の色である。

そして光沢は、見る位置によって変わる。

正面から見れば金に近く、斜めから見れば紫や緑が強くなる。

つまりこの像の色は、一つに決められない。

写真に写る色も、撮った角度の色である。

館の記録は、鳥と台座で色を書き分けている。

書き分けられるということは、二種類の釉が使い分けられているということである。

同じ技法で、金属の種類か焼き方を変えている。

台座を岩の形にしたのも、色の違いを自然に見せるためかもしれない。