猿は、人の役を引き受ける——探幽・デューラー・ドゥカンほか九点

上下に文字が並び、そのあいだに小さな絵がある。
絵は10.3×10.6センチしかない。
右には、天蓋の付いた寝台がある。
赤と黄の布が掛けられ、縁に模様が入る。
その上に、人が横たわっている。
顔をこちらへ向け、体は布に覆われている。
寝台のそばに、人が二人しゃがんでいる。
左には、赤い天幕が下がる。
その手前で、男が二人、身をかがめている。
一人は刃物を持ち、下へ向けている。
足もとには、小さな獣が横たわっている。
猿である。
館の記録では、王子は将棋を指す猿に噛まれた。
その手の傷が悪くなり、医者たちは一つの治療しかないと言った。
猿の血を傷に塗り、乾かすことである。
王子はしぶしぶ猿を殺すことを許した。
左の二人の男が、その重い仕事をしている。
館の記録は、そう説明している。
そして右の余白には、作者の名が書かれているという。
この写本には、その名高い画家の、知られる限り最古の絵が含まれている。
館の記録は、そう続ける。
つまりこの一葉は、猿の死を描くと同時に、画家の出発点でもある。
そして館は、寝台についても一行を添えている。
布の下にあるのが、噛まれて悪くなった手だという。
つまり画面には、傷そのものは描かれていない。
見えているのは、覆われた体と、殺される獣だけである。
原因と結果のうち、結果のほうだけが絵になっている。
色の使い方も見ておきたい。
赤い天幕、黄の寝台、青い衣。
明るい色が並ぶ中で、猿の体だけが小さく暗い。
猿は、人の服を着て説教する
四点目と五点目で、猿は服を着る。

淡い色で描かれた風景である。
左に大きな木が立ち、枝が右へ広がる。
その枝から、籠が一つ吊り下げられている。
籠の中に、猿が一匹立っている。
頭巾の付いた長い衣を着ている。
片手を高く上げ、口を開いている。
籠は説教台の代わりである。
その下、草地に、七面鳥が何羽も集まっている。
羽を広げたもの、首を伸ばしたもの。
みな顔を上げ、籠のほうを見ている。
右奥には湖と山が薄く広がる。
館の記録では、これは猿真似の絵と呼ばれる一群に属する。
人の服を着た猿が、人の行いをまねる絵である。
ここでは、猿が木から吊るした籠の説教台から七面鳥に説教している。
七面鳥は愚かさのしるしと解され、修道服をまとった狡猾な猿にだまされている。
館の記録は、そう読む。
同じ画家の猿の部屋については、猿の部屋で扱った。
七面鳥の数も見ておきたい。
前景に五羽、その後ろに三羽ほどが重なる。
数えられるぎりぎりの数である。
一羽ずつ姿勢が違い、羽の広げ方も変えてある。
聞いている者が多いほど、説教は効いているように見える。
猿は一匹だけで、高いところにいる。
一対多という配置が、そのまま騙す者と騙される者の配置になっている。

薄暗い室内である。
右手に、大きな額に入った絵が立てかけられている。
絵の中身は、白っぽい獣らしいものである。
その絵の前に、猿が何匹も集まっている。
みな人の服を着ている。
黒い上着に白い襟。
一匹は椅子に腰かけ、身を乗り出している。
一匹は立って、腕を組んでいる。
一匹は帽子をかぶり、後ろから覗き込む。
顔はそれぞれ違う方向を向いている。
床には本が開いたまま置かれている。
館の札は「絵画」「風刺」「猿」の三つである。
つまり館は、この一点を風刺として登録している。
絵を見て評する者たちが、猿として描かれている。
九点のうち、猿が絵を見ている場面は、この一点だけである。
そして絵の中の絵は、画面の右半分を占めている。
つまりこの一点は、絵を見る絵である。
見る側の猿たちは、こちらに背を向けたり、横を向いたりしている。
顔がはっきり見えるのは二匹だけである。
残りは、姿勢だけで態度を示している。
腕を組む、身を乗り出す、後ろから覗く。
その姿勢は、いまも画廊で見かけるものと変わらない。
館が付けた「風刺」という札は、その一致を指している。
ダゲレオタイプの猿は、二つ並ぶ
六点目は写真である。

黒い台紙に、楕円の像が二つ並んでいる。
左右ほとんど同じ図である。
どちらにも、猿が一匹写っている。
体は白っぽく光り、背景は黒い。
猿は細い枝につかまっている。
片手を上へ伸ばし、もう一方の手を下げている。
腰を落とし、後ろ脚で台に立つ。
顔は正面をやや外れた方向を向く。
体の毛が、一本ずつ光っている。
左右の像を見比べると、猿の位置がわずかにずれている。
館の記録では、立体視の器械は1849年に考案された。
考案した人は英国の製造業者の関心を得られず、1850年にパリへ持ち込んだ。
そこでこの作者に見せたところ、その人は器械を作るだけでなく、自分でも立体写真を作り始めた。
この一点もその一つだという。
そして館は、この人が自然史の標本のほかに、絵や彫刻も撮ったと書いている。
つまりこの猿は、標本として写された可能性がある。
生きているのか、剥製なのかは、記録に書かれていない。
ずれた二つの像を重ねると、猿は奥行きを持つ。
奥行きを持つということは、背後の闇にも距離ができるということである。
黒い背景は、平らな黒ではなくなる。
猿の後ろに、何もない空間が広がる。
そのため猿は、標本というより、闇の中に置かれた一匹に見える。
館の記録はさらに、この作者の立体写真の愛好者に女王がいたと書いている。
つまりこの猿は、宮廷でも覗き見られた可能性がある。
小さな器械の穴から、一匹の猿が立体になって現れる。