作品を知る

牡丹は、重なりをどう見せるかで分かれる——惲寿平・華嵒・バジールほか九点

籠の牡丹は、役者の紋になる

四点目は、摺物である。

籠に活けた牡丹
葛飾北斎《籠に活けた牡丹》1810年または1814年。館の記録では、多色木版の摺物。紙は52.1×38.3センチ。番号は1943.5。クリーヴランド美術館蔵。葛飾北斎《籠に活けた牡丹》クリーヴランド美術館蔵

大きめの紙である。

52.1×38.3センチある。

中央に、編んだ籠が置かれている。

籠は口が広く、底がすぼまる。

その中に、花が活けられている。

花は大きく、幾重にも花びらが重なる。

色は白と薄紅である。

葉は濃い緑で、外へ大きく広がる。

籠のまわりには、余白が広く取られている。

上部には、文字が数行ある。

館の記録では、摺物は私的に注文された刷り物である。

そしてこの一枚は、ある役者の身に起きた出来事を祝うものだという。

その役者の紋が、牡丹だった。

さらに館は、日本の伝統では牡丹が四季の花の一つで、夏の花にあたると付け加える。

つまりこの花は、季節のしるしであり、同時に人のしるしでもある。

前の回で見た菊の摺物と同じく、これも季節の節目に配られた紙である。

そちらは籠に扇と菊と茸が入っていた。

こちらは籠に牡丹だけが活けてある。

同じ画家が、同じ形式で、別の花を扱っている。

紙の大きさも違う。

菊の刷り物は横に長く、19.1×52.8センチだった。

こちらは縦に大きく、52.1×38.3センチある。

摺物には決まった判型がいくつかある。

大きな紙は、費用がかかる。

私的な刷り物ほど、紙と摺りに金をかけることがある。

館の記録には、摺りを担当した人の名も記されている。

版画で摺師の名が残るのは、多くはない。

壺の面に、白い牡丹が盛り上がる

五点目は、磁器である。

牡丹文の蓋付き壺
三代清風与平《牡丹文の蓋付き壺》1897年から1912年。館の記録では、型と彫りによる文様と下絵付の磁器。高さ27センチ、径26.4センチ。番号は2022.200。クリーヴランド美術館蔵。三代清風与平《牡丹文の蓋付き壺》クリーヴランド美術館蔵

丸い蓋付きの壺である。

高さ27センチ、径26.4センチある。

ほぼ球に近い形をしている。

胴の面に、大きな白い花がいくつも付いている。

花びらは面から盛り上がっている。

一枚ずつの縁が立ち、内側に線が刻まれている。

花の中心は、黄色く塗られている。

葉は青い線と刷きで描かれる。

花のまわりには、青がぼかして置かれている。

蓋の上には、宝珠の形のつまみがある。

館の記録では、花びらは型で作った粘土を胴に貼り付け、線を刻んで形を出している。

中心を黄色で、葉を藍の線と刷きで描く。

花のまわりには、覆いを使って藍の濃淡を付けた。

蓋にも藍で葉の文様が描かれ、最後に全体へ透明の釉をかけている。

館の記録は、その工程を順に書いている。

そして、精確さと制御によって完全に釣り合った構成を作った例だと結んでいる。

同じ工房の別の作は、鶴と亀の回貝の回で見た。

そちらでは、線で描く方法と、器の形にする方法だった。

こちらでは、面から花を盛り上げている。

そして底には、銘が刻まれている。

大日本清風造、という六字である。

さらに箱の蓋にも印が押されている。

つまり器と箱の両方に、作り手の印がある。

球に近い形は、どこから見ても同じ輪郭に見える。

そのぶん、面の上の花の配置が全体の印象を決める。

館の記録が釣り合いのとれた構成と書くのは、その配置のことである。

布の上で、牡丹はくり返される

六点目は、捺染の布である。

牡丹
ケイト・フォークナー《牡丹》1920年。館の記録では、平織の木綿に捺染。全体は86×99.4センチ。番号は1937.700。クリーヴランド美術館蔵。ケイト・フォークナー《牡丹》クリーヴランド美術館蔵

一枚の布である。

86×99.4センチある。

地の色は淡い青である。

その上に、花と葉の模様がくり返される。

花は大きく開き、花びらが重なる。

輪郭は濃い線で描かれている。

葉は細長く、曲がって伸びる。

模様の単位は小さく、正方形に近い。

その単位が、上下左右に隙間なく続く。

つまり同じ花が、布の上に何度も現れる。

館の記録では、この図案はある工房のために作られたらしい。

作者は、その工房の初期の相手の妹である。

そして館は、注意すべき一行を添えている。

この模様の小さな、ほぼ正方形のくり返しは、工房を率いた人よりこの作者に特徴的である。

その人は大きな模様を好んだ、と記録は書く。

さらに、この作者が刺繍、壁紙、彩色したタイルと陶器、漆喰の装飾も手がけたことを記す。

そして工房を率いた人は、女性を共に働く者として進歩的に扱った。

当時の中流の女性の手仕事の単調さに、こうした図案は挑んでいたという。

館の記録は、そう説明している。

くり返しの大きさは、布の使い道に関わる。

大きな模様は、広い壁掛けや大きな窓の帳に向く。

小さなくり返しは、椅子の張り地や小物に向く。

つまり模様の寸法は、置かれる場所を先に決めている。

この布は86×99.4センチで、切り取られた一枚である。

もとは反物として、はるかに長く続いていた。

くり返しに終わりはなく、切ったところが端になる。

九点のうち、端が作品の輪郭でないのは、この一点だけである。

花束の中の一輪

七点目は、図譜の一枚である。