美術史・技法

泉の語が、春を連れてきた——ルグロ・コルベ・カランザほか九点

英語では、湧き出る水と季節の春が同じ語である。九点で数えると、水の出る場所は三点しかなく、春を主題にしたものが五点混じった。花があるのは五点、泉の三点にはいずれも花がない。語の重なりが、水と季節を一つの棚に並べてしまう。

イルカに乗るプットーのいる噴水
アルフォンス・ルグロ《イルカに乗るプットーのいる噴水》クリーヴランド美術館蔵

噴水の口から、水が落ちている

一枚の素描に、噴水がある。

紙は27×28センチ。

ほぼ正方形である。

緑がかった淡彩と、黒鉛だけで描かれている。

画面の中央に、二人の子どもがいる。

いずれも衣を着ておらず、丸みのある体つきである。

一人は左を、一人は右を向く。

二人の下に、大きな魚のような形がある。

館の記録の題によれば、それは海豚である。

子どもたちは、その背に乗っている。

魚の口から、水が落ちている。

水は二筋、下へ細く伸びる。

その下には、水盤の縁がある。

背景には、四角い壁の枠が見える。

線は速く、輪郭が重なっている。

淡彩は、影の部分にだけ置かれる。

館の記録によれば、右下に署名がある。

ただし、紙の縁で切れているという。

裏には、青いクレヨンで数字が書かれている。

イルカに乗るプットーのいる噴水
アルフォンス・ルグロ《イルカに乗るプットーのいる噴水》十九世紀後半。館の記録では、黒鉛の上に筆と緑の淡彩。紙は27×28センチ。番号は1974.232。クリーヴランド美術館蔵。アルフォンス・ルグロ《イルカに乗るプットーのいる噴水》クリーヴランド美術館蔵

泉と井戸は、水の出る場所である。

町にとって、いちばん大事な場所でもある。

そして、そこには人が集まる。

九点を並べて、その扱いを数えたい。

「泉」の語が、春を連れてきた

集めかたは、館の記録の題によっている。

泉、井戸、清水、噴水にあたる語が入るものを拾った。

英語の題では、泉を意味する語である。

ところが、その語には別の意味がある。

季節の春である。

英語では、湧き出る水と春が同じ綴りになる。

その結果、春を主題にした作品が四点混じった。

九点のうち、水の出る場所が描かれているのは三点。

春を主題にしたものが、四点。

そして、人名の綴りによる一致が一点ある。

残る一点は、後で扱う。

つまり、今回は外れのほうが多い。

泉のある三点

水の出る場所の三点を見たい。

一点目は、いま見た素描である。

二点目は、銅版画である。

画面は38.7×51.1センチ。

版の面は40.7×52.9センチ、紙は45.7×59.7センチある。

横長の画面である。

画面のほとんどを、巨大な草が占めている。

葉は細長く、幾重にも重なる。

その一枚ずつが、細かい線で描かれている。

上のほうには、木の枝が広がる。

画面の左に、石造りの構築物がある。

門か、泉の装置らしい。

その手前に、二人の人物が座っている。

一人は楽器を抱え、弦をつま弾く。

もう一人は、身を寄せて聞いている。

二人の上半身だけに、光が当たる。

館の記述によれば、この画家は巨大な草を描いた版画で知られる。

そして、その形式に名が付いている。

下生えの神秘を体験させる画面だという。

館は、遠近が歪んでいるとも書いている。

草が拡大されているためである。

泉のほとりで乙女に竪琴を奏でる若者
カール・ヴィルヘルム・コルベ《泉のほとりで乙女に竪琴を奏でる若者》1803年。館の記録では、厚手の網目紙にエッチング。画面38.7×51.1センチ。版の面40.7×52.9センチ。番号は2019.243。クリーヴランド美術館蔵。カール・ヴィルヘルム・コルベ《泉のほとりで乙女に竪琴を奏でる若者》クリーヴランド美術館蔵

三点目は、写真である。

画面は16.8×23.3センチ。

台紙まで含めると40.6×50.8センチになる。

画面の中央に、大きな屋根の建物がある。

屋根は深く張り出し、四隅が反り上がる。

その上に、小さな丸屋根が四つ載る。

いちばん上には、細い尖塔がある。

建物の壁には、格子の入った窓が並ぶ。

壁の面には、細かい装飾が刻まれている。

手前は、白く乾いた道である。

左のほうに、低い建物と木が見える。

人は、ほとんど写っていない。

館の記録の題によれば、これは泉である。

つまり、水を汲むための建物である。

館の記述によれば、撮影者は工場の技師だった。

そして、独学で写真を学んだという。

蝋を引いた紙の陰画を使い、材料も自分で作った。

定着液も自分で調合し、黒がやや灰色になったという。

そのおかげで、影の部分が透けて見えると館は書く。

コンスタンティノープル、ソフィアの泉
エルネスト・ド・カランザ《コンスタンティノープル、ソフィアの泉》1854年頃。館の記録では、紙の陰画から作った塩紙印画。画面16.8×23.3センチ。台紙を含めて40.6×50.8センチ。番号は2001.148。クリーヴランド美術館蔵。エルネスト・ド・カランザ《コンスタンティノープル、ソフィアの泉》クリーヴランド美術館蔵

春を表す四点

語の外れに移りたい。

いずれも、春を主題にした作品である。

一点目は、磁器の浮き彫りである。

全体で40.6×55.9センチ。

白一色で、彩色がない。

画面には、人物が十数人いる。

いずれも衣が渦を巻き、体をひねる。

中央には、花を持つ人物が座る。

上のほうには、翼のある子どもが飛ぶ。

下には、獣が数頭いる。

館の記述によれば、獅子と犬と鷲が見つかるという。

館の記録の題は、春である。

四季を表す浮き彫りの一つだという。

館の記述によれば、この工房は彫刻家の型を買い取った。

そして、その型から磁器で作った。

つまり、これは彫刻の複製である。

もとの浮き彫りは、十八世紀初めに作られた。

春
ドッチャ磁器工房《春》十八世紀半ば。館の記録では、磁器。全体で40.6×55.9センチ。番号は1999.213。クリーヴランド美術館蔵。ドッチャ磁器工房《》クリーヴランド美術館蔵

二点目は、油彩である。

91.4×73センチ。

九点のなかで、いちばん大きい。

画面の中央に、若い女性が座っている。

大きなつばの帽子をかぶる。

帽子は淡い黄色で、白い紐が垂れる。

白い衣を着て、膝の上に布を広げる。

布には、花の模様が描かれる。

手には、花の輪を持っている。

背後の左に、石の壺が置かれている。

右には、緑の茂みがある。

館の記録の題は、春である。

つまり、季節を人の姿で表している。

館の記録に、記述の欄はない。