空が、四分の三を占める——ファン・ホーイェン
都市の絵なのに、都市が小さい
構図の意味を考えたい。題名は、町の名を挙げている。つまり都市の絵である。
しかし画面で最も広いのは、空と水である。町は、細い帯として遠くにある。
これは、都市を紹介する絵とは違う扱いである。町は、風景の一要素として置かれている。
同じ町を、別の日に、別の位置から描いた作品もある。
同じ町を、別の側から
その一点を見たい。

同じ町を、別の方向から描いている。
こちらでは、帆船が画面の中央に大きく描かれる。帆が二枚、風をはらんで膨らむ。
舟には人が十人ほど乗る。手前の小舟にも人がいて、こちらへ漕いでくる。
町は、右奥に小さく見える。教会の塔の形で、同じ町だと分かる。
雲は、先の一点より立体的である。白い頂と灰色の底が、はっきり分かれる。
誰が買っていたのか
買い手についても触れておきたい。17世紀のオランダでは、市民が絵を買った。
宮廷や教会だけが注文主ではない。商人や職人の家にも、絵が掛かっていた。
家が広くない以上、絵も大きくはできない。板の小品が多いのは、その条件と合う。
つまり画面の大きさは、飾る場所の大きさで決まる。家具としての絵という見方は、
別のコラムでも扱った。
同じ場所を、繰り返し描く
同じ主題を繰り返す方法にも触れたい。同じ町を、違う位置と違う天候で描く。
これは、同じ場所を条件だけ変えて描く方法に近い。連作の考え方については、
別のコラムで扱った。
ただしファン・ホーイェンの場合、連作として企画された形跡はない。
売れる主題を、繰り返し作っていたと考えるほうが自然である。
大きな画面もある
寸法の幅も見ておきたい。

これは大きい。縦101.6センチ、横135.3センチ。
先ほどの板絵の、面積で十倍近くになる。
手前は砂丘と道である。右下に荷馬車があり、人が数人集まる。
道は左へ下り、その先に平野が広がる。中央奥に町の塔が立ち、右に風車が並ぶ。
空には大きな積雲がある。白い頂が盛り上がり、下面は灰色に沈む。
同じ年の板絵と比べると、細部の描き込みが多い。大きな画面では、手のかけ方が変わる。
板と画布を、使い分ける
材料にも注目したい。9点のうち、板が6点、画布が3点である。
そして、板の作品はいずれも小さい。最大でも66×97.2センチである。
画布の作品は、63.1×87.2センチと101.6×135.3センチ。大きな画面は画布で描かれている。
板は硬く、大きくすると重い。画布なら軽く、大きな寸法にも対応できる。
材料の選択は、寸法の要求から決まっている。板絵の性質については、
別のコラムで扱った。
氷の上の人々
主題の幅も見ておきたい。

ほぼ正方形の画面である。縦36.5センチ、横34.3センチ。
凍った水面が、画面の下半分を占める。氷の上に人が二十人以上いる。
右手前に、木を組んだ高い櫓が立つ。梯子が斜めに架かり、上に小屋がある。
左に馬が二頭。橇を引き、人を乗せている。
奥には町の影が薄く見える。空は上部が灰色で、左上に青がわずかに覗く。
櫓は、何のためのものか
細部を確かめたい。氷の上に立つ木組みの櫓は、物見のための構造だとされる。
上に小屋があり、梯子で登る。氷の状態を見張るためとも、競技の審判のためとも説明される。
所蔵館の記録は、題名で「物見櫓」と書くだけである。用途の詳細までは書かれていない。
分からないことは、分からないと書いておきたい。
冬の主題は、なぜ売れたのか
氷の風景は、17世紀のオランダで人気のある主題だった。
寒い冬には運河や湖が凍り、人が集まって遊んだ。労働も、氷の上に移る。
つまり、日常の延長にある非日常である。買う側にとって、見覚えのある場面だった。
風景画が売れる条件は、見たことがあるかどうかにも左右される。
廃墟が、画面の端に立つ
もう一点、水辺の絵を見たい。

左に、崩れかけた石の門が立つ。四角い塔の形で、上部が欠けている。
その脇に木が茂り、屋根の低い家が見える。
右には水面が広がり、小舟が一艘。人が二人、網らしきものを扱う。
遠くに町の輪郭が横に伸びる。空は上半分を占め、雲が横に流れる。
つまり構造は、他の作品と同じである。垂直の要素を端に置き、水平の広がりを中央に取る。