画家を知る

空が、四分の三を占める——ファン・ホーイェン

都市の絵なのに、都市が小さい

構図の意味を考えたい。題名は、町の名を挙げている。つまり都市の絵である。

しかし画面で最も広いのは、空と水である。町は、細い帯として遠くにある。

これは、都市を紹介する絵とは違う扱いである。町は、風景の一要素として置かれている。

同じ町を、別の日に、別の位置から描いた作品もある。

同じ町を、別の側から

その一点を見たい。

北から見たドルトレヒト
ヤン・ファン・ホーイェン《北から見たドルトレヒト》1650年代前半。油彩・画布。縦63.1センチ、横87.2センチ。額を含めて縦92.7センチ、横116.2センチ、厚さ12.7センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヤン・ファン・ホーイェン《北から見たドルトレヒト》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

同じ町を、別の方向から描いている。

こちらでは、帆船が画面の中央に大きく描かれる。帆が二枚、風をはらんで膨らむ。

舟には人が十人ほど乗る。手前の小舟にも人がいて、こちらへ漕いでくる。

町は、右奥に小さく見える。教会の塔の形で、同じ町だと分かる。

雲は、先の一点より立体的である。白い頂と灰色の底が、はっきり分かれる。

誰が買っていたのか

買い手についても触れておきたい。17世紀のオランダでは、市民が絵を買った。

宮廷や教会だけが注文主ではない。商人や職人の家にも、絵が掛かっていた。

家が広くない以上、絵も大きくはできない。板の小品が多いのは、その条件と合う。

つまり画面の大きさは、飾る場所の大きさで決まる。家具としての絵という見方は、
別のコラムでも扱った。

同じ場所を、繰り返し描く

同じ主題を繰り返す方法にも触れたい。同じ町を、違う位置と違う天候で描く。

これは、同じ場所を条件だけ変えて描く方法に近い。連作の考え方については、
別のコラムで扱った。

ただしファン・ホーイェンの場合、連作として企画された形跡はない。

売れる主題を、繰り返し作っていたと考えるほうが自然である。

大きな画面もある

寸法の幅も見ておきたい。

レーネンの眺め
ヤン・ファン・ホーイェン《レーネンの眺め》1646年。油彩・画布。縦101.6センチ、横135.3センチ。額を含めて縦127.6センチ、横161.9センチ、厚さ5.7センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヤン・ファン・ホーイェン《レーネンの眺め》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

これは大きい。縦101.6センチ、横135.3センチ。

先ほどの板絵の、面積で十倍近くになる。

手前は砂丘と道である。右下に荷馬車があり、人が数人集まる。

道は左へ下り、その先に平野が広がる。中央奥に町の塔が立ち、右に風車が並ぶ。

空には大きな積雲がある。白い頂が盛り上がり、下面は灰色に沈む。

同じ年の板絵と比べると、細部の描き込みが多い。大きな画面では、手のかけ方が変わる。

板と画布を、使い分ける

材料にも注目したい。9点のうち、板が6点、画布が3点である。

そして、板の作品はいずれも小さい。最大でも66×97.2センチである。

画布の作品は、63.1×87.2センチと101.6×135.3センチ。大きな画面は画布で描かれている。

板は硬く、大きくすると重い。画布なら軽く、大きな寸法にも対応できる。

材料の選択は、寸法の要求から決まっている。板絵の性質については、
別のコラムで扱った。

氷の上の人々

主題の幅も見ておきたい。

木造の物見櫓のある氷の風景
ヤン・ファン・ホーイェン《木造の物見櫓のある氷の風景》1646年。板に油彩。縦36.5センチ、横34.3センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヤン・ファン・ホーイェン《木造の物見櫓のある氷の風景》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

ほぼ正方形の画面である。縦36.5センチ、横34.3センチ。

凍った水面が、画面の下半分を占める。氷の上に人が二十人以上いる。

右手前に、木を組んだ高い櫓が立つ。梯子が斜めに架かり、上に小屋がある。

左に馬が二頭。橇を引き、人を乗せている。

奥には町の影が薄く見える。空は上部が灰色で、左上に青がわずかに覗く。

櫓は、何のためのものか

細部を確かめたい。氷の上に立つ木組みの櫓は、物見のための構造だとされる。

上に小屋があり、梯子で登る。氷の状態を見張るためとも、競技の審判のためとも説明される。

所蔵館の記録は、題名で「物見櫓」と書くだけである。用途の詳細までは書かれていない。

分からないことは、分からないと書いておきたい。

冬の主題は、なぜ売れたのか

氷の風景は、17世紀のオランダで人気のある主題だった。

寒い冬には運河や湖が凍り、人が集まって遊んだ。労働も、氷の上に移る。

つまり、日常の延長にある非日常である。買う側にとって、見覚えのある場面だった。

風景画が売れる条件は、見たことがあるかどうかにも左右される。

廃墟が、画面の端に立つ

もう一点、水辺の絵を見たい。

ユトレヒト近郊のペルクスの門
ヤン・ファン・ホーイェン《ユトレヒト近郊のペルクスの門》1646年。板に油彩。縦36.8センチ、横57.2センチ。額を含めて縦59.1センチ、横78.7センチ、厚さ7センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヤン・ファン・ホーイェン《ユトレヒト近郊のペルクスの門》メトロポリタン美術館蔵

左に、崩れかけた石の門が立つ。四角い塔の形で、上部が欠けている。

その脇に木が茂り、屋根の低い家が見える。

右には水面が広がり、小舟が一艘。人が二人、網らしきものを扱う。

遠くに町の輪郭が横に伸びる。空は上半分を占め、雲が横に流れる。

つまり構造は、他の作品と同じである。垂直の要素を端に置き、水平の広がりを中央に取る。