COLUMNSコラム: 名画の楽しみ方

  • 名画の楽しみ方

    題の末尾に、疑問符がある——ミケル・シトウほかの肖像

    誰それの肖像(か)。九点のうち五点の題は、括弧の中の一文字で終わる。名は伝わっているが、確証がない。絵の中に名が書かれていても、疑問符が外れない一点もある。中間の状態を書き残す道具を読みたい。寄贈者の姓が、題の名と同じ一点もある。

  • 名画の楽しみ方

    一行で終わる来歴と、二十行の来歴——フラ・アンジェリコとヴェルネ

    ある人が持っていて、館に贈られた。それだけで終わる来歴がある。一方、注記を含めて一万字を超える来歴もある。その差は五百倍。長さが何を示し、何を示さないのかを、九点の来歴の欄から読みたい。名が四度も変わった一点も含まれている。

  • 名画の楽しみ方

    「おそらく」は、どこに掛かるか——ヤコポ・バッサーノほかの年の欄

    おそらく1637年。おそらく1500年ごろ。同じ語でも、後ろに来るものが違えば意味が変わる。十年をひとまとまりで書く形や、その年以降と開いておく形もある。九点の年の欄から、留保の段階を読みたい。技法の欄にも、同じ疑問符が置かれている。

  • 名画の楽しみ方

    斜線は、二つの意味を持つ——ティツィアーノとルーベンスの年の欄

    年の欄の斜線は、幅を示すこともあれば、二つの時点を示すこともある。同じ記号が正反対に近い働きをする。手直しの年、偽の署名、二人の画家の作業。九点の年の欄から、記号と語の使い分けを読みたい。偽の署名を写したうえで、館は別の年を採る。

  • 名画の楽しみ方

    同じ画家の名に、二つの語が付く——ベラスケスとティツィアーノ

    周辺、追随者、工房、助手、そして「に帰される」。九点の作者の欄には五つの言い方が並ぶ。同じ画家をめぐって、語が使い分けられている。語順と括弧だけで確からしさを示す仕組みを、九点から読み解きたい。六点は、館の最初の受入から来ている。

  • 名画の楽しみ方

    同じ名字が、五通りに書かれる——ポール・メロン

    同じ家から来た絵でありながら、出所の行が五つに分かれる。同じ受入番号の中でさえ、行が二種類に割れている。夫妻の共有と単独所有、記念の句の有無。統一しないという判断が、三十年ぶんの時間を記録に残した。名字で束ね、その後の語で分ける作りである。

  • 名画の楽しみ方

    買うための金に、人の名がある——基金の行

    美術館が絵を買うとき、金はたいてい基金から出る。そして基金には人の名が付いている。九点の番号は、いずれも枝番が1で終わる。購入は一点ずつ決まるからだ。行の形と番号の形から、買い方の違いを読みたい。寄贈の群とは、番号の形からして違う。

  • 名画の楽しみ方

    括弧の中に、前の館がある——コーコラン美術館からの移管

    出所の行に括弧が入り、その中にもう一つの受入が書かれている。外は2014年、中は1869年。七千点を超える移管で、前の館の贈り主の名が一点ずつ写された。括弧という記号が何を守っているのかを、九点から考えたい。

  • 名画の楽しみ方

    表と裏に、別の枝番がつく——レオナルドほか

    一枚の板の両面に、別々の番号が与えられる。表がa、裏がb。技法の欄も、面ごとに書き分けられる。一方、横に並ぶ四枚の板には数字の枝番がつく。面を数えるか、板を数えるか。十点の番号の末尾から、その判断を読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    番号の頭が、1937である——ナショナル・ギャラリー最初の受入

    1937.1.3。館が開くより四年早く、絵のほうが先に番号を持っていた。四百七十年ぶんの絵が、一つの年号の下に畳まれている。出所の行と番号から、最初の受入に含まれた九点を読み直したい。来歴には、同じ画商の名が繰り返し出てくる。

  • 名画の楽しみ方

    作品番号の読み方——ターナーやホイッスラーの記録から

    「1937.1.1」は、館に入った年と群と通し番号でできている。met、aic、nga、si。番号の形式は館の歴史を映し、作品を確実に指すための唯一の手がかりでもある。七点で読み方を示す。番号から作品を探す手順も、あわせて示しておきたい。

  • 名画の楽しみ方

    美術館はなぜ画像を手放したのか——モネと北斎の公開画像

    作品の著作権が切れていても、その写真の権利は美術館が持つと考えられてきた。方針が変わったのは2010年代である。手放した理由、同じ図を並べて比べられるようになったこと、そして画像の質や権利の限界を、実際の公開記録で確かめる。

  • 名画の楽しみ方

    Open Access が配ったのは、画像ではなく確実性だった——北斎とロランで確かめる

    Open Access が配ったのは画像ではなく確実性だった。保護期間と写真の権利、割れたままの司法判断、CC0 が放棄していないもの、そして当サイトが一点ごとに何を記録しているかまで。

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