COLUMNSコラム: 名画の楽しみ方

  • 名画の楽しみ方

    題が、音と訳と立場でできている——ジョージ・カトリンの肖像九点

    音を写した名、その訳、そして立場や属する集団。三つが読点で区切られて題になる。書き留めたのは外から来た人であり、綴りはその人の耳と文字による。いまの表記との違いも含めて、題の作られ方を読みたい。名を書き留めた側の立場も見たい。

  • 名画の楽しみ方

    壺の底に、押された印——ジョージ・オアほかアメリカの陶器九点

    置いてしまえば隠れ、持ち上げなければ読めない。それでも、印は必ず押される。焼く前の柔らかい土に型を当て、そのまま窯に入れる。見えない面に置かれた小さな文字が、その品の記録の量を決めている。底の印が語る来歴を読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    贈るための銀器に、十行の献辞——フレッチャーの壺ほか九点

    誰から、誰に、何のために、そしていつ。台座や胴の平らな面に、それだけの文が彫り込まれる。十二キロを超える銀は、団体が金を出し合って作らせた品である。曲がった面に文字を彫るという仕事を読みたい。贈るという目的が形を決めている。

  • 名画の楽しみ方

    銀の杯に、二種類の文字——作り手の極印と、持ち主の頭文字

    極印は打ち、頭文字は彫る。前者は目立たない場所に、後者は人から見える場所に置かれる。三つの文字を三角に配せば、夫婦の持ち物だと分かる。磨くたびにわずかずつ減っていく、銀器の文字を読みたい。打つ文字と彫る文字を分けたい。

  • 名画の楽しみ方

    悼むための物に、名を刻む——菱形の紋章から大理石の記念碑まで九点

    菱形の紋章、髪を収めたブローチ、記念のメダル、そして三メートルを超える碑。材料も大きさもばらばらだが、九点はいずれも名か頭文字か日付を持っている。それがなければ、ただの飾りになってしまう。名を残すための工夫を読みたい。

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    布に、文字を縫う——アン・チェイスの手本布ほか九点

    文字を一通り並べ、模様を縫い、最後に自分の名と年と齢を入れる。九点の作り手は、ほとんどが十代の少女である。生年と制作年を引き算してみると、十二歳の仕事が二点あることが分かる。針で書いた文字を読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    円の縁を回る文字——19世紀アメリカのメダル九点

    文字は上から始まり、左右に分かれて縁を降りていく。下の縁では、年だけが水平に置かれる。円弧に沿って文字を彫るのは難しく、しかも型の上では左右が逆である。小さな円板に刻まれた文字を読みたい。彫る順序と読む順序を追いたい。

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    皿に刷られた、教えと日付——デイヴンポートほか九点

    一つの悪い癖に使う金があれば、子供が二人育つ。子供に読ませるために作られた皿である。日付、戦役の名、綴りの誤り、そして揃いの名。景色を刷っただけではない転写皿の、裏と表の文字を読みたい。言葉を載せるために作られた皿である。

  • 名画の楽しみ方

    景色の名の隣に、作った会社の頭文字——19世紀の転写皿九点

    裏の同じ枠の中に、描かれた土地の名と製造した会社の名が同居している。名前の途中に頭文字が挟まることさえある。読みにくいまま題にするのは、刷られた順序を残すためだ。商標としての文字を読みたい。地名と社名の並び方を見たい。

  • 名画の楽しみ方

    題が、皿の裏に刷られた文字である——英国製アメリカ向けの転写皿九点

    館の題に斜線が入り、大文字と小文字が不規則に混じっている。館が付けた題ではなく、皿の裏の枠に刷られた文字をそのまま写しているからだ。食卓に置けば隠れてしまう面の文字が、いま作品の名になっている。裏の枠が題を決めている。

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    一枚の台紙に、番号が七つ——ジョージ・カトリンの厚紙絵九点

    厚紙の左下、台紙に貼った札、裏の鉛筆書き、橙色の蝋筆、桃色の絵具、そして粘着テープ。同じ一枚の上に、七つの時期の番号が重なっている。誰も消さなかったおかげで、この絵の通ってきた道が読める。番号の層を古い順にほどきたい。

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    画中の看板と幟——ホフマン《バークス郡救貧院》ほか九点

    ここまで見てきた署名は、どれも隠れる方向に置かれていた。今回の九点の文字は逆である。大きく、遠くからでも読めるように書かれる。題、標語、船の名、役員の名。見せるために描かれた文字を読みたい。絵の外へ向けられた声である。

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    追悼画に書かれた碑文——19世紀アメリカの記念の絵九点

    柳が垂れ、白い墓標が立っている。その面には、名と亡くなった日と齢が書かれる。一年一か月十五日。日にちまで数えて記した例もある。家の壁に掛けるために作られた、小さな墓のような絵の文字を読みたい。刺繍と水彩の九点を並べたい。

  • 名画の楽しみ方

    木枠が覚えている、名と日付——ウィリアム・ジェニスの一家三人ほか九点

    布を張るためだけの棒に、名と生年と齢が書かれている。九点のうち三点は、もとの木枠がいまも付いたままである。一度でも交換されれば消えたはずの文字が、二百年を越えて残った。裏の棒が担ってきた記録を読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    裏に書かれ、いまは見えない——19世紀アメリカの肖像九点

    裏面、もはや見えない。九点の銘記の欄には、この但し書きが並ぶ。裏打ちの作業で覆われた文字は、いまでは作業前に撮られた写真の中にだけ残っている。写真という技術が、消えかけた言葉を助けた例を読みたい。記録にだけ残る一行を追いたい。

  • 名画の楽しみ方

    年の最後の一字が、読めない——トマス・コール、モネ、ホッベマほか九点

    九点とも、年の上三桁までは読める。最後の一桁だけが、絵具の傷みで消えている。館は角括弧と疑問符でそれを示し、しかも年の欄にまで持ち込む。分からないことを分からないまま次へ渡すための仕組みを読みたい。残った三桁が支える推定を読みたい。

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    後の手が、書き足した文字——ペルジーノ、ギルバート・スチュアートほか九点

    後の手による。知られていない手による。九点の欄には、この言い方が並ぶ。書き足されたのは名、称号、生没年、そして家族の名である。忘れられてしまう前に誰かが書いた文字を、館はいまも消さずに残している。その筆跡もまた記録である。

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    偽って署名された、と記録が書く——ホッサールト、アングルほか九点

    九点の銘記の欄は、いずれも偽って、という語から始まる。それでも館は、書かれた文字そのものを消さない。まず写しとり、そのうえで偽りだと明記する。この二段構えが何を守っているのかを、九点の欄を並べて読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    額装込みの寸法が、併記される——シカゴ美術館の絵画九点

    画面の大きさと、額装した状態の大きさ。九点のうち八点に、この二段目がある。額の差は点によって違い、四十センチ開く一点もある。表と裏で寸法が違う一点も併せて読みたい。額のない一点も、九点の中にある。年の欄は、六百年に散らばっている。

  • 名画の楽しみ方

    原型の年と、彫った年——十九世紀アメリカの彫刻

    年の欄が二つに分かれ、後半に彫られた年、あるいは鋳造された年と添えられる。差は一年から四十二年まで開く。作者の死後に鋳た例もある。一体に何人が関わったかを読みたい。番号の枝が、五つある一点も含まれる。

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