作品を知る

番号の差が、八である——タッカー製陶所ほかのカップと受皿

カップと受皿
ラルフ・ホール商会《カップと受皿》1836年から1841年ごろ。館の記録では、陶器、転写摺。カップは高さ4.1センチ。受皿は径11.4センチ。番号は45.35の30と31。英国、アメリカ向け。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・ホール商会《カップと受皿》メトロポリタン美術館蔵

九点でいちばん低いカップである。

高さ四・一センチ。

把手が付いていない。

画像は白黒である。

左に、鉢のような形のカップ。

外側に、人物の顔らしい図が転写されている。

右に、受皿。

こちらの中央にも、人物の胸像が円のなかに描かれている。

まわりに、文字と装飾の輪。

アメリカの人物を描いた品だろう。

英国で作り、アメリカで売る。

そういう商品が、十九世紀には多く作られた。

素材の欄が、二通りある

技法の欄には、いくつかの語がある。

磁器。軟質磁器。陶器。

磁器は、高い温度で焼いた、白く硬い器である。

軟質磁器は、それより低い温度で焼いたものを指す。

十八世紀の英国では、こちらが作られた。

陶器は、さらに低い温度で焼いた、粗い土の器である。

つまり、技法の欄は焼き方の違いを示している。

そして、その違いは値段の違いでもある。

カップと受皿
王立磁器製造所《カップと受皿》1844年から1847年ごろ。館の記録では、磁器。カップは高さ9.2センチ。受皿は径14.6センチ。番号は48.135の7と14。ドイツ。メトロポリタン美術館蔵。王立磁器製造所《カップと受皿》メトロポリタン美術館蔵

九点でいちばん高いカップである。

高さ九・二センチ。

そして、いちばん華やかである。

内側と外側の上半分が、金一色である。

その下に、緑の帯があり、金の葉の模様が並ぶ。

把手は金で、大きく曲がっている。

受皿も同じで、外周が緑と金、中央が金である。

文化の欄はドイツ。

十八世紀に創立された王立の製造所である。

番号は、七と一四。

差は七である。

さきほどの八とは違うが、考え方は同じだろう。

カップに一から七まで、受皿に八から一四まで。

そう振れば、差は七になる。

揃いの食器という商品

十九世紀のアメリカで、揃いの食器は家の格を示す品だった。

来客に、そろった器で茶や珈琲を出す。

そのために、同じ模様の器を何客も買う。

つまり、これらの器ははじめから複数として作られている。

一点ものではない。

同じ型で成形し、同じ模様を付け、同じ窯で焼く。

前の回に見た版画の揃物と、考え方が近い。

同じ設計で、数を作る。

そして、時間がたつと欠ける。

割れ、失われ、散らばる。

残った数客が、市場に出る。

館が買うのは、その残りである。

だから、番号の差から推せる客数は、もとの揃いの数ではない。

館に入った時点で残っていた数である。

もとが十二客だったか、二十四客だったかは分からない。

分かるのは、受け入れた時点で八客あった、というようなことである。

前の回に見た《二十四孝》の十枚と、同じ状況である。

もとの数と、いまの数は違う。

そして、いまの数は記号から読める。

作り手の欄が、会社の名である

九点の作者の欄には、人の名がほとんど無い。

タッカー製陶所。王立磁器製造所。ウスター製陶所。

リチャード・チャファーズ商会。ラルフ・ホール商会。

ユニオン磁器工場。オットとブルワー。ウィレッツ製造会社。

いずれも、工場や会社の名である。

そして役の欄は「作り手」である。

「画家」でも「甲冑師」でもない。

食器は、多くの人の手を通って作られる。

型を作る人、成形する人、模様を付ける人、焼く人。

誰か一人の名で括ることができない。

だから、会社の名が入る。

活動した年も、会社の年である。

一八二六年から一八三八年。一八六三年から一九二二年。

人の生没年ではなく、事業の期間である。

前の回に見た甲冑では、個人の甲冑師の名が残っていた。

刻印があったからである。

食器にも、底に窯印が付くことがある。

しかし、それは会社の印である。

作った個人までは分からない。

二つの番号を、いつ結び付けたか

読点でつないだ番号について、もう少し考えたい。

カップに番号を振り、受皿に番号を振る。

そのあとで、どの二つが組かを決める。

この判断は、いつ行われたのか。

受け入れた直後かもしれないし、後の整理のときかもしれない。

判断の根拠は、模様と大きさである。

同じ模様で、大きさが合うものを組にする。

もし、同じ模様の器が八客あれば、どのカップとどの受皿を組にするかは任意である。

つまり、いまの組み合わせが、もとの組み合わせとは限らない。

もっとも、同じ揃いの器なら、どう組み合わせても違いはない。

そこが、対の肖像とは違う。

対の肖像では、相手が決まっている。

揃いの食器では、決まっていない。

同じ「二つで一組」でも、組の性質が違う。

一組と、一揃い

ここで、単位の話をしたい。

カップと受皿は、二つで一組である。

しかし、もとは一組だけで作られたわけではない。

食器は、揃いで作る。

六客、十二客、二十四客。

そして、砂糖入れやクリーム入れも付く。

つまり、一組は揃いの一部である。

前の回に見た揃物の版画と、構造が似ている。

一枚が一件になり、揃物の名が題に残る。

食器では、揃いの名は残らない。

題は《カップと受皿》とだけである。

もとが何客の揃いだったかは、記録に書かれていない。

もっとも、手がかりはある。

番号の差である。

差が八なら、同じ受入に八客あったと考えられる。

つまり、番号の付け方から、揃いの規模が推せる。

カップと受皿
ユニオン磁器工場《カップと受皿》1875年から1885年。館の記録では、磁器。カップは高さ7.6センチ、口径8.9センチ。受皿は径14.3センチ。番号は69.194の17と18。アメリカ。メトロポリタン美術館蔵。ユニオン磁器工場《カップと受皿》メトロポリタン美術館蔵

白い磁器である。

模様が、彫りと浮き出しで作られている。

カップの胴に、細かい網目の模様。

把手は、枝を模した形をしている。

受皿の縁も、波打っている。

そして受皿の中央には、葉の形の窪みがある。

色は、白一色である。

金も、彩色もない。

形と、表面の凹凸だけで作られている。

番号は一七と一八。

差は一である。

こちらは、一組ずつ振る方式である。