美術史・技法

三枚で、一つの絵になる——広重《阿波鳴門之風景》ほか三枚続九点

同じ大きさの版画を三枚並べ、一つの画面を作る。海の色も波の線も、二本の継ぎ目を越えて続く。番号に枝番を振るものと振らないもの、寸法を三通りに書き分けるもの。記録の揺れごと読みたい。継ぎ目の本数を数えるだけで、そろっているかどうかが分かる。三枚で一件とする判断も読みたい。

阿波鳴門之風景
歌川広重《阿波鳴門之風景》メトロポリタン美術館蔵

三枚で、一つの絵になる

浮世絵には、三枚続という形がある。

同じ大きさの版画を三枚横に並べ、一つの画面を作る。

一枚ずつ摺り、一枚ずつ売る。

買った人が三枚そろえて、並べて見る。

つまり、物としては三枚、絵としては一つである。

前の回に見た三幅対の掛軸と、構造が似ている。

しかし、数え方は違う。

館は、三枚続を一件として登録している。

三幅対は三件だった。

同じ「三つで一つ」でも、扱いが分かれている。

阿波鳴門之風景
歌川広重《阿波鳴門之風景》1857年。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。三枚を並べた画面は縦36.8センチ、横74.9センチ。各枚は縦36.8センチ、横25.4センチ。番号はJP2834のaからcまで。メトロポリタン美術館蔵。歌川広重《阿波鳴門之風景》メトロポリタン美術館蔵

青い海が、画面いっぱいに広がっている。

中央やや左に、渦が巻いている。

白い線が、幾重にも渦を描く。

その上に、緑の小島が二つ。

奥に、青い山なみと、赤みを帯びた空。

そして、三枚の継ぎ目が二本、縦に走っている。

海の色は、継ぎ目を越えて続いている。

波の白い線も、途切れずにつながっている。

つまり、三枚は一つの版下から割られている。

番号の付け方が、二通りある

九点の番号を見ると、二つの形がある。

JP二八三四のaからcまで。

JP九六五のaからcまで。

JP一七三のaからcまで。

JP二五四〇のaからcまで。

この四点は、枝番でa、b、cが振られている。

三枚それぞれに、記号が付いている。

一方、残りの五点には枝番がない。

JP三〇四〇。JP三〇六〇。JP一五一。JP一三五。JP一八〇〇。

番号が一つだけである。

三枚あるのに、番号は一つ。

同じ館の、同じ分類のなかで、書き方が分かれている。

これは、受け入れた時期の差だろう。

受入年を見ると、枝番のあるものは一九一四年、一九三六年、一九三九年。

無いものは一九一四年、一九一八年、一九二九年、一九四七年が二点。

きれいには分かれない。

方針が定まっていなかった時期があるのだろう。

寸法の欄も、三通りある

寸法の書き方は、もっと分かれている。

一つ目は、三枚を並べた寸法と、一枚の寸法を両方書く形である。

広重の一点と、歌麿の《蛍狩》がこれにあたる。

二つ目は、三枚を並べた寸法だけを書く形である。

三つ目は、一枚ぶんの寸法だけを書く形である。

東都名所、隅田川雪景一覧
歌川広重《東都名所、隅田川雪景一覧》1840年ごろ。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。寸法の欄には縦36.8センチ、横25.4センチとある。番号はJP3040。メトロポリタン美術館蔵。歌川広重《東都名所、隅田川雪景一覧》メトロポリタン美術館蔵

この一点の寸法は、縦三六・八センチ、横二五・四センチ。

これは、一枚ぶんの数字である。

三枚を並べれば、横は七十五センチを超えるはずである。

ところが欄には、二五・四センチとしか書かれていない。

技法の欄には「三枚続」とあるのに、である。

記入の際に、一枚の寸法だけを書いたのだろう。

読む側は、技法の欄と突き合わせて判断するしかない。

画像には、雪の景色が写っている。

手前に、白く覆われた川岸と、家並み。

その向こうに、青い川が横に流れる。

さらに奥に、雪をかぶった屋根が続く。

上のほうは、朱色の空である。

三枚の継ぎ目が、縦に二本。

川の流れは、その線を越えて続いている。

隅田川の祭
勝川春山《隅田川の祭》18世紀後半。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。寸法の欄は三枚それぞれを書き分け、縦は38.1センチと37.9センチが二枚、横はいずれも26センチとする。番号はJP1800。メトロポリタン美術館蔵。勝川春山《隅田川の祭》メトロポリタン美術館蔵

こちらの寸法は、三枚を別々に書いている。

一枚目が縦三八・一センチ。

二枚目と三枚目が縦三七・九センチ。

横は三枚とも二六センチ。

二ミリの差まで書き分けている。

三枚続は、三枚別々に摺る。

紙の断ち方が違えば、寸法もわずかに違う。

その差を、そのまま記録している。

画像には、川辺の場面が写っている。

左に、屋根のある建物と、そこに集まる人々。

中央に、川と、傘を差した人の列。

右に、緑の土手と、桜らしい木。

大勢の人物が、三枚にわたって並んでいる。

三枚を、どこで割るか

三枚続を作るとき、画面をどこで割るかは重要である。

人物の顔の上で割ると、見苦しい。

だから、割れ目に何を置くかを考える。

琴棋書画
喜多川歌麿《琴棋書画》1788年から1790年ごろ。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。三枚を並べて縦38.1センチ、横76.2センチ。番号はJP965のaからcまで。メトロポリタン美術館蔵。喜多川歌麿《琴棋書画》メトロポリタン美術館蔵

室内の場面である。

左に、縁側と、そこに座る人々。

中央に、緑の庭と、垣根。

右に、建物の内部と、大勢の女性。

題の《琴棋書画》は、四つの芸のことである。

琴を弾く、碁を打つ、書を書く、絵を描く。

文人のたしなみとされた四つを、一つの場面に入れている。

三枚の継ぎ目は、建物の柱や、垣根の切れ目に置かれている。

人物の顔の上を、避けている。

蛍狩
喜多川歌麿《蛍狩》1796年から1797年ごろ。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。三枚を並べて縦35.2センチ、横72.7センチ。各枚は縦35.2センチ、横24.1センチ。番号はJP151。メトロポリタン美術館蔵。喜多川歌麿《蛍狩》メトロポリタン美術館蔵

夜の場面である。

黒い背景に、人物が浮かんでいる。

左に、団扇を持った女性と、小さな子ども。

中央に、着物の女性が数人。

右に、身をかがめた人と、子ども。

そして、画面のあちこちに小さな白い点がある。

蛍である。

三枚の継ぎ目は、人物と人物のあいだを通っている。

背景が黒いので、継ぎ目はほとんど目立たない。

暗い画面は、三枚続に向いている。

一枚だけでも、絵になる作り

三枚続には、もう一つの設計がある。

三枚それぞれが、単独でも絵として成り立つように作る。

なぜかといえば、一枚ずつ売られるからである。

三枚まとめて買う人もいれば、一枚だけ買う人もいる。

吉原の場景
喜多川歌麿《吉原の場景》1790年。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。各枚は縦37.5センチ、横29.5センチ。番号はJP3060。メトロポリタン美術館蔵。喜多川歌麿《吉原の場景》メトロポリタン美術館蔵

三枚に、それぞれ人物の群れがある。

左に、格子のある部屋と、そこにいる人々。

中央に、布を垂らした場所と、座る人。

右に、湯を使う場面らしい人物たち。

三つの場面が、横に並んでいる。

一つの場面が三枚にまたがっているのではない。

三つの場面が、続けて置かれている。

こういう作りなら、一枚だけでも読める。

隅田川の屋形船
鳥居清長《隅田川の屋形船》1788年から1790年ごろ。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。寸法の欄には縦37.5センチ、横25.4センチとある。番号はJP135。メトロポリタン美術館蔵。鳥居清長《隅田川の屋形船》メトロポリタン美術館蔵

こちらは、一つの場面が三枚にまたがっている。

長い屋形船が、画面を横切っている。

船の上に、大勢の人がいる。

酒を注ぐ人、楽器を持つ人、外を見る人。

船体は、三枚の継ぎ目を越えて続いている。

一枚だけ取り出すと、船が切れる。

つまりこの一点は、三枚そろわないと成り立たない。

寸法の欄は、ここでも一枚ぶんしか書かれていない。

三枚が横に長くない場合

晴れ着の三人の役者による神事の舞
勝川春扇《晴れ着の三人の役者による神事の舞》1785年ごろ。館の記録では、三枚続の木版画、紙に墨と彩色。全体で縦31.1センチ、横42.2センチ。番号はJP173のaからcまで。メトロポリタン美術館蔵。勝川春扇《晴れ着の三人の役者による神事の舞》メトロポリタン美術館蔵

この一点は、他の八点より小さい。

三枚を並べても、横四二・二センチしかない。

一枚あたり、横は十四センチほどである。

細判と呼ばれる、細い判型の版画である。

画像を見ると、三枚が離して並べられている。

紙と紙のあいだに、白い隙間がある。

つまり、この写真では三枚が接していない。

左に、黒い衣の役者。

中央に、髭のある役者と、その背後の炎。

右に、着物の役者。

三人が、それぞれの紙に一人ずつ描かれている。

これも、一枚ずつで成り立つ作りである。

役者絵の三枚続には、この形が多い。

平清盛の怪異
歌川広重《平清盛の怪異》1845年ごろ。館の記録では、三枚続の錦絵、紙に墨と彩色。全体で縦38.1センチ、横73.7センチ。番号はJP2540のaからcまで。メトロポリタン美術館蔵。歌川広重《平清盛の怪異》メトロポリタン美術館蔵

雪の庭の場面である。

左に、雪をかぶった巨大な岩と、松。

中央から右に、赤い柱の建物。

そこに、大勢の人物がいる。

そして、雪の中に無数の白い塊がある。

よく見ると、それが顔の形をしている。

髑髏が、雪景色のなかに現れている。

題の《平清盛の怪異》は、その場面を指している。

三枚の継ぎ目は、建物の柱のあたりを通っている。

技法の欄には、変わった書き方がある。

「三枚続の錦絵の本」。

本という語が入っている。

版画の記録に、本という語は合わない。

記入の誤りだろう。

館の記録には、こういう小さな揺れが残っている。

大判という判型

九点のうち八点は、一枚あたり縦三五センチから三八センチ、横二四センチから二九・五センチである。

これは、大判と呼ばれる判型にあたる。

江戸時代の版画で、もっとも多く使われた大きさである。

紙の大きさが決まっていれば、三枚並べたときの寸法も決まる。

横は、七十二センチから七十六センチほどになる。

つまり、三枚続の全体の大きさは、はじめから決まっている。

絵師は、その大きさのなかで構図を考える。

畳の上に置いて見るか、壁に貼って見るか。

七十五センチという幅は、そのどちらにも収まる。

一方、残りの一点は細判である。

一枚あたり横が十四センチほど。

三枚並べても、四十二センチしかない。

判型が違えば、同じ三枚続でも用途が違う。

細判の三枚続は、役者の姿を三人並べるのに使われた。

大判の三枚続は、広い場面を描くのに使われた。

寸法の欄を読めば、その違いが分かる。

摺りの順序と、色の合わせ

三枚続では、色を合わせるのが難しい。

三枚を別々に摺るのだから、色の濃さがずれることがある。

同じ藍でも、一枚目と三枚目で濃さが違えば、並べたときに段差になる。

広重の《阿波鳴門之風景》では、海の青が三枚にわたっている。

もし色がずれていれば、継ぎ目で色が変わって見えるはずである。

画像を見るかぎり、そうなっていない。

摺る側が、三枚をまとめて扱ったのだろう。

同じ日に、同じ絵具で、続けて摺る。

そうすれば、色はそろう。

三枚続を作るには、絵師だけでなく、彫師と摺師の段取りも要る。

そして、売る側も三枚をまとめて扱う必要がある。

一枚だけ在庫が切れれば、組が売れなくなる。

つまり、三枚続という形式は、作る側の体制を前提にしている。

一枚の版画より、手間も費用もかかる。

それでも作られたのは、需要があったからだろう。

広い場面を、安く手に入れられる。

肉筆の屏風や襖は買えないが、三枚続なら買える。

錦絵という語

技法の欄には、ときどき「錦絵」という語が出てくる。

多色摺の版画のことである。

十八世紀の後半に、色数を大きく増やした版画が現れた。

それを、織物の錦にたとえて呼んだ。

九点のうち、この語が入っているのは一点だけである。

他の八点は「木版画」とだけ書かれている。

どちらも多色摺であることに変わりはない。

用語の使い分けが、そろっていないだけである。

前の回にも、こうした揺れをいくつか見てきた。

分類の欄が単数と複数で揺れる。

寸法の欄が、測った範囲を書いたり書かなかったりする。

用語が、錦絵と木版画で揺れる。

大きな目録では、避けられないことである。

読む側は、揺れの幅を知っておけばよい。

そして、揺れているのは表記であって、事実ではない。

三枚で一件、という判断

三枚続を一件とするのは、なぜか。

理由は、三枚が同時に作られ、同時に売られたからだろう。

三幅対の掛軸は、三本を別々に仕立てる。

軸も、表装も、三本ぶん要る。

物として、独立の度合いが高い。

三枚続の版画は、そうではない。

同じ紙、同じ大きさ、同じ日の摺り。

並べれば一つの絵になる。

だから、まとめて一件にしやすい。

もっとも、枝番の有無に揺れがあることは、さきに見たとおりである。

a、b、cを振る場合と、振らない場合がある。

振っておけば、あとで一枚ずつを指定できる。

振らなければ、三枚をまとめてしか扱えない。

記録の細かさが、後の扱いやすさを決める。

三枚が離して写っている一点

勝川春扇の細判三枚続の画像を、もう一度見たい。

この写真だけ、三枚が接していない。

紙と紙のあいだに、白い隙間がある。

他の八点では、三枚がぴったり並べられている。

なぜ、この一点だけ離れているのか。

考えられるのは、三枚が別々に台紙に貼られている場合である。

あるいは、撮影のときに並べ方が違っただけかもしれない。

館の記録は、そこまで書いていない。

ただ、この写真には利点がある。

三枚であることが、一目で分かる。

継ぎ目を探さなくてよい。

ぴったり並べた写真では、継ぎ目が細い線にしか見えない。

離して並べた写真では、三枚だとすぐ分かる。

写真の撮り方は、単位の見せ方でもある。

前の回に、写生帖の綴じ目を写した例を見た。

台紙ごと写したホイッスラーの帖も見た。

どこまでを写すかで、単位の形が伝わるかどうかが決まる。

そろっていることの、意味

九点は、いずれも三枚そろっている。

これは、当たり前ではない。

三枚続は、ばらけやすい。

一枚ずつ売られ、一枚ずつ額に入れられ、別々の場所へ行く。

次の回では、一枚だけになった例をまとめて見ることにしたい。

そろって残るには、はじめから三枚を買った人がいなければならない。

そして、その三枚を分けずに持ち続けた人が要る。

九点の受入年は、一九一一年から一九四七年に散らばっている。

出所も、それぞれ違う。

つまり、九通りの経路で、九組がそろって館へ入った。

そろっていることのほうが、実は珍しい。

三枚に分かれた画面の、読み方

三枚続を見るとき、目はどう動くか。

日本の絵は、右から左へ読む習慣がある。

巻子も、本も、そうである。

三枚続でも、右の一枚から見る人が多いだろう。

そして、右から左へ視線を送る。

その動きに合わせて、絵が組み立てられていることがある。

勝川春山の《隅田川の祭》では、右に木があり、中央に人の列があり、左に建物がある。

人の列は、右から左へ進んでいるように見える。

視線の動きと、描かれた動きが同じ方向である。

広重の《東都名所、隅田川雪景一覧》では、川が奥へ向かって伸びている。

こちらは、手前から奥への動きである。

三枚続の横幅は、この二つの動きのどちらにも使える。

横に長い形式は、時間の流れを表しやすい。

巻子と同じ性質である。

ただし、巻子と違って、全部が一度に見える。

順に現れるのではなく、はじめから並んでいる。

だから、視線は行き来できる。

左を見てから右に戻ることもできる。

この自由さが、三枚続の見え方を作っている。

一枚あたりの値段

三枚続は、三枚ぶんの値段になる。

一枚の版画より、三倍高い。

それでも売れたのは、三枚そろえたときの効果が大きいからだろう。

そして、三枚を一度に買えない人は、一枚ずつ買い足すこともできた。

今月は右、来月は中央、というふうに。

版元にとっては、そのほうが売りやすい。

一枚ずつ買える形式は、一枚ずつ散る形式でもある。

九点がそろって残っているのは、その途中で誰かがまとめて持っていたからである。

三枚続が扱った主題

九点の主題を並べてみる。

海の渦。雪の川。怪異の場面。遊里の光景。四つの芸。蛍狩。屋形船。祭。三人の役者。

いずれも、人や物が多い場面である。

一枚では収まらない。

渦を見るには、海の広さが要る。

屋形船を描くには、船の長さが要る。

祭を描くには、群衆が要る。

つまり、三枚続は「広さ」を必要とする主題のために作られた。

そして、その広さは横方向である。

縦に長い主題には向かない。

滝や、立ち姿の人物や、高い山は、一枚のほうがよい。

形式が主題を選び、主題が形式を選ぶ。

九点を並べると、その関係がはっきり見える。

同じ画家が、一枚の版画も三枚続も作っている。

何を描くかで、判型を選び分けていた。

一件のなかの、三つの記号

枝番のa、b、cについて、最後に触れておきたい。

四点にこの記号がある。

aが右か左かは、記録に書かれていない。

前の回に見た三幅対では、番号の順が掛ける順だった。

三枚続でも、たぶん右からa、b、cだろう。

しかし、確かめる手立てがない。

そして、五点には枝番そのものがない。

その五点では、三枚を個別に指すことができない。

修理や展示のときに、どの一枚かを指定できない。

もっとも、三枚をばらして扱うことは、めったにないだろう。

一件としてまとめて扱う。

そのかぎりでは、枝番が無くても困らない。

記録の細かさは、想定される使い方で決まる。

ばらす可能性が低ければ、細かく振らなくてよい。

逆に、三幅対のように一本ずつ掛ける可能性があるものは、番号を分ける。

数え方の背後には、いつもそういう判断がある。

継ぎ目の線を、どう見るか

最後に、画像に写っている縦の線について書いておきたい。

三枚を並べれば、必ず二本の継ぎ目ができる。

紙と紙の境目である。

この線は、絵の一部ではない。

しかし、消すこともできない。

見る人は、線があることを知りながら、その向こうを見る。

海の色は続いている。

船体は続いている。

雪の斜面も続いている。

線があっても、目がつないでしまう。

これは、前の回に見た写生帖の見開きと同じである。

紙の境目を、目が越える。

三枚続という形式は、その性質を利用している。

一枚では入らない広さを、三枚で作る。

そして、三枚であることを見る人に忘れさせる。

一件という単位のなかに、三枚の紙と、二本の線と、一つの景色がある。

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