画家を知る

舟を、画室にする——シャルル=フランソワ・ドービニー

夕方の川

セーヌ川のポルトジョワ
シャルル=フランソワ・ドービニー《セーヌ川のポルトジョワ》1858年または1868年。板に油彩。縦24.4センチ、横44.1センチ。メトロポリタン美術館蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《セーヌ川のポルトジョワ》メトロポリタン美術館蔵

さらに横長である。縦24.4センチ、横44.1センチ。

画面の下半分は暗い水面である。

左に白い壁の家が二軒。赤い屋根と、細長い樹が立つ。

水際に小さな舟があり、人影が一つ見える。

右には低い樹叢が続き、水面に黒く映る。

空は雲で覆われ、中央だけに青い隙間がある。

雲は灰と暗褐色で、厚みがある。

つまり天気の悪い日の川である。

明るい部分は、雲の隙間と水面の照りだけである。

川という主題の意味

なぜ川なのか、という問いも立てておきたい。

19世紀のフランスでは、川は輸送路であり、労働の場だった。

石炭や木材を運ぶ平底の舟が往来し、岸では洗濯が行われる。

つまり川は、産業と生活が交差する場所である。

同時に、都市から出た人が休みに行く場所にもなっていた。

鉄道が伸び、川沿いに舟遊びの店が並ぶ。

この画家の絵には、その両方が現れている。

荷を積んだ舟と、洗濯をする人。

一方で、休日の風景を思わせる静かな水面もある。

つまり川の絵は、当時の社会の変化を映す主題だった。

後の印象派の画家たちも、同じ川を主題に選んでいる。

ただし彼らが描いたのは、余暇の川である。

労働の川から余暇の川へ。主題の重心が移っていく。

その変化のあいだに、この画家の仕事がある。

洗濯をする人々

ヴァルモンドワ近くのオワーズ川の洗濯女
シャルル=フランソワ・ドービニー《ヴァルモンドワ近くのオワーズ川の洗濯女》1865年。板に油彩。縦24センチ、横46センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《ヴァルモンドワ近くのオワーズ川の洗濯女》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

こちらも極端に横長である。

画面の左半分は水面。静かで、対岸の樹が映っている。

右手前の岸に、人が数人集まっている。

白い布を広げ、水に浸している。洗濯の作業である。

その傍らに白い布が積まれ、地面に広がっている。

背後には低い土手と、樹の列。

空は淡い青灰で、雲が薄く流れる。

つまり労働の場面が、風景の中に組み込まれている。

オーヴェール(洗濯女たち)
シャルル=フランソワ・ドービニー《オーヴェール(洗濯女たち)》1861年。板に油彩。縦24.4センチ、横46.7センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《オーヴェール(洗濯女たち)》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

同じ主題の別の一点である。

左に細い帆柱の舟が停まっている。荷を積んだ平底の舟である。

右の岸には、洗濯をする人々が七、八人。

白い布と、赤や青の衣が点として置かれている。

奥には土手が上がり、樹の塊が並ぶ。

空は灰色の雲で覆われ、上部が暗い。

水面はほとんど動きがなく、鏡のように見える。

つまり川は、労働と運搬の場でもあった。

風景画の中の労働については別のコラムでも扱った。

二点を並べると、同じ主題の反復が分かる。

洗濯の場面を、四年隔てて二度描いている。

構図も似ている。水面が左、人が右、奥に土手。

つまり売れる主題を繰り返していたと考えられる。

同じ画家が同じ構図を作り直す事情は、装飾画の回でも扱った。

その仕組みはこちらのコラムにまとめてある。

反射の描き方

水面の反射について、少し書いておきたい。

反射は、上の物をそのまま逆さに写すわけではない。

水面が波立てば、像は崩れて縦に伸びる。

静かなら、像はほぼ完全に映る。

この画家の絵では、反射がたいてい少し崩れている。

樹の像は縦に長く伸び、輪郭が曖昧になる。

つまり水面がわずかに動いている状態を描いている。

完全な鏡にしないことで、水が液体であることが示される。

細部の判断が、素材の質を決めている。

村を描いた一点

オプトヴォズの集落
シャルル=フランソワ・ドービニー《オプトヴォズの集落》1852年ごろ。油彩・画布。縦57.8センチ、横92.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《オプトヴォズの集落》メトロポリタン美術館蔵

こちらは大きい。縦57.8センチ、横92.7センチ。

支持体も画布である。

集落が描かれている。石と漆喰の家が並び、屋根は暗い。

手前には水路があり、家の壁が映っている。

左の家の前に馬が一頭、荷車のそばに立つ。

樹は家の背後に固まり、暗い塊になっている。

空は狭い。画面の上端に、灰色の帯として見えるだけである。

つまりこれは水辺の絵でありながら、視点が高い。

岸の上から見下ろす構図である。

制作は1852年ごろ。舟の画室を持つ前の時期にあたる。

農場の絵

農場
シャルル=フランソワ・ドービニー《農場》1855年。油彩・画布。縦51.4センチ、横81.3センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《農場》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

1855年の作である。

画面の左に大きな納屋が建っている。三角の屋根が黄土色に光る。

その手前に木の荷車が一台。車輪が大きい。

右へ低い建物が続き、白い壁と赤い屋根が並ぶ。

地面は褐色で、草がわずかに生える。

空は画面の上半分を占め、淡い青と白い雲である。

つまり空が広い。しかし水はない。

主題は農家の建物と、その前の空き地である。

初期には、こうした地上の主題も描いていたことになる。

花の咲く果樹

林檎の花
シャルル=フランソワ・ドービニー《林檎の花》1873年。油彩・画布。縦58.7センチ、横84.8センチ。メトロポリタン美術館蔵。シャルル=フランソワ・ドービニー《林檎の花》メトロポリタン美術館蔵

こちらは果樹園である。

中央に大きな林檎の樹が立ち、白い花が枝いっぱいに咲いている。

枝は左右に広がり、幹は太く傾いている。

奥にも花の咲いた樹が並び、白い塊が続く。

手前の草地には牛が二頭。赤褐色と白である。

空は淡い青で、雲が横に流れる。

花の白は、絵具を厚く置いて作られている。

近づくと粒の集まりに見え、離れると花に見える。