嘆く人は、顔を隠している——アンフォラ・フラ・アンジェリコ・始興ほか九点
嘆きを描いた九点を数えると、涙の描かれた絵は一点もなかった。顔は頭巾や布や手で隠され、姿勢だけが悲しみを示す。前七世紀の壺で腕を上げる形は、二千七百年後の画面でもそのまま読み取れる。屏風の一点では、悲しみは歌の中にあった。

壺の首に、髪をかきむしる人が並ぶ
大きな壺である。

高さは60センチある。
膝ほどの高さである。
胴は丸く張る。
首は細く、上で広がる。
両側に、把手が付く。
色は、赤褐色と黒である。
面は、横の帯に分けられる。
帯には、細かい模様が並ぶ。
菱形と、四角と、線である。
首のところに、人の姿がある。
人は小さく、黒い影で描かれる。
腕を、頭の上へ上げる。
両手が、髪に触れる。
館の記録では、髪をかきむしる姿である。
頭を叩く姿も、そこにあるという。
その人たちの中央に、台がある。
台の上に、体が横たわる。
体の上に、布が掛かる。
布には、市松の模様がある。
館の記録では、これは遺体の安置である。
胴のほうには、別の帯がある。
そこに、二頭立ての戦車が並ぶ。
戦車は、壺を一周する。
館の記録では、行き先は分からないという。
墓地か、戦場かのどちらかである。
把手と縁には、蛇の形が付けられる。
館は、それが冥界を指すのかもしれないと書く。
模様の並び方を、もう一度見る。
人の姿も、模様の一部のように置かれる。
体は三角、腕は細い線である。
頭は丸い点で示される。
顔の中身は、描かれない。
目も、口もない。
それでも、腕を上げた形だけは分かる。
同じ形が、横に何度も繰り返される。
繰り返しが、群れを作る。
一人ずつを描き分ける必要がない。
館の記録では、よく残っているのは裏の面だという。
公開される写真も、その面である。
二千七百年ものあいだ、割れずに残った。
悲しむことは、九つの場所に現れる
このコラムでは、嘆く絵を九点並べる。
九点は、館も年代も技法も違う。
陶があり、石があり、板絵があり、素描がある。
石膏があり、屏風もある。
共通するのは、館の記録に嘆きか葬いの語があることだけである。
数えるのは、顔が見えるかどうかである。
頭巾の中に、顔が沈む
二点目は、小さな石の像である。

立像である。
全体は41×20.3×12.4センチある。
腕の長さほどの高さである。
石は白く、やや黄ばむ。
表面は、部分ごとに手触りが違う。
布の面は滑らかである。
毛皮の縁は、粗く彫られる。
像は、僧のような姿である。
頭から、大きな頭巾をかぶる。
頭巾は深い。
顔は、その奥にある。
俯いているので、目は見えない。
鼻と口の一部だけが分かる。
衣は、足元まで長い。
襞は、縦に太く落ちる。
両腕は、前で組まれる。
手には、書物がある。
書物は開かれている。
頁の線まで彫られる。
館の記録では、これは四十体のうちの一体である。
墓の下の部分に、行列として並んでいた。
上には、細かく彫った柱廊があったという。
館は、そう説明している。
つまり、この像は行列の一人である。
館の記録では、これはある修道院から出た。
その地は、公たちの墓所になっていた。
注文したのは、亡くなった人の子である。
さらに前の代の墓を、手本にしたという。
館は、そこまで説明している。
同じ形の像が、四十体並んでいた。
一体ずつ、姿勢と持ち物が違う。
この一体は、書物を持っている。
読みながら歩く姿である。
アラバスターは、柔らかい石である。
だから、毛皮や頁まで彫れる。
館の記録では、今の墓には複製が置かれる。
本体は、こうして館にある。
布に載せて、体を運ぶ
三点目は、板に描かれた絵である。

縦長の板である。
全体は88.9×54.9センチある。
上のほうは、風景である。
丘があり、緑の木がある。
奥に、青い山が見える。
丘の上に、三つの十字架が立つ。
画面の中央から下に、人が集まる。
十人ほどいる。
服は、赤、青、白、緑である。
色は、いずれも明るい。
中央に、体が横たわる。
体は白い布の上にある。
布は黄色く、大きく広がる。
数人が、その布の端を持つ。
体を、運ぼうとしている。
その周りに、女たちが立つ。
一人は、両手を組む。
一人は、跪く。
顔は、いずれも下を向く。
頭の後ろに、金の輪がある。
手前の地面に、白い布が敷かれる。
布の上に、釘と、細い物が置かれる。
奥の岩に、洞窟の口が見える。
そこが、行き先である。
色の置き方を見ておきたい。
人の衣は、赤と青と緑である。
どれも彩度が高い。
テンペラは、卵で顔料を溶く。
乾くと、色が濁らない。
そのため、金の輪も鮮やかに残る。
輪は、頭の後ろに平たく置かれる。
遠近の向きとは関係しない。
面として、正面を向いている。
手前の白い布の上には、釘が置かれる。
館の記録では、受難の道具である。
小さく描かれるが、位置は画面の中央である。
見る人が、必ず目を落とす場所にある。
二人が、別々の枠に立つ
四点目は、油彩である。