美術史・技法

寸法の欄に、聖人の名が並ぶ——タッデオ・ガッディの祭壇画ほか九点

不定形、と書かれる寸法

いま見た一点の寸法の欄には、不定形、とある。

つまり、四角ではない。

輪郭が、弧と角で複雑に切られている。

だから、縦と横の最大の長さを書く。

前の回で、多角形の皿の寸法を見た。

同じ書き方が、ここでも使われている。

形が単純でなければ、数字は目安になる。

キリストと十二使徒
タッデオ・ディ・バルトロ《キリストと十二使徒》1400年ごろ。館の記録では、板にテンペラ、金の地。縦24.4センチ、横185.7センチ。番号は1991.27.1。メトロポリタン美術館蔵。タッデーオ・ディ・バルトーロ《キリストと十二使徒》メトロポリタン美術館蔵

極端に横長の板である。

高さは、幅の八分の一ほどしかない。

十三人の人物が、横一列に並ぶ。

いずれも、上半身だけである。

中央の人物が、正面を向く。

その左右に、六人ずつ並ぶ。

顔は、少しずつ向きが違う。

衣は、赤、青、緑、黄である。

頭の後ろに、金の輪がある。

輪は、隣どうしで接する。

地は、金である。

十三人を、横に並べる

いま見た一点には、十三人が並ぶ。

つまり、中央の一人と、十二人。

館の題が、その数を言う。

そして、幅は185.7センチある。

一人あたり、十四センチほどだ。

顔の幅は、十センチに満たないだろう。

つまり、小さな顔が十三並ぶ。

それぞれの名は、持ち物で示される。

台の下の、細長い板

この形の板を、台の下の板という。

祭壇画のいちばん下に、横に渡す部分である。

そこに、細かい場面や人物を並べる。

つまり、もとは大きな祭壇画の一部だった。

いまは、この帯だけが残る。

前の回で、一部だけが残る話をした。

寸法の比率が、それを示している。

八対一という比は、独立した絵にはならない。

磔刑
パオロ・ウッチェロ《磔刑》おそらく1450年代なかば。館の記録では、板にテンペラ、金の地。中央の板は枠を含めて縦45.7センチ、横27.9センチ。描かれた面は縦41.9センチ、横24.1センチ。番号は1997.117.9。メトロポリタン美術館蔵。パオロ・ウッチェロ《磔刑》メトロポリタン美術館蔵

三枚の板が、蝶番でつながる。

中央の板の上が、尖る。

中央に、十字架が立つ。

その上に、人物が架けられる。

左右の空に、小さな天使が飛ぶ。

十字架の下に、人物が数人集まる。

左の翼に、青い衣の女性が立つ。

右の翼に、赤い衣の女性が立つ。

翼の上には、天使が描かれる。

地は、金である。

枠は、細く黒い。

小さな祭壇画

いま見た一点は、小さい。

中央の板は、枠を含めて縦45.7センチ。

つまり、両手で持てる。

前の回で、持ち運ぶ祭壇画の話をした。

こちらも、同じ用途だろう。

そして、三枚それぞれの寸法が書かれる。

枠を含む数字と、描かれた面の数字。

つまり、六つの数字が並ぶ。

受胎告知と降誕を伴う聖母子
グッドハートのドゥッチョ風の画家《受胎告知と降誕を伴う聖母子》1310年から1315年ごろ。館の記録では、板にテンペラ、金の地。枠を含めて縦30.8センチ、横21センチ。描かれた面は縦26センチ、横16.5センチ。番号は20.160。メトロポリタン美術館蔵。グッドハートのドゥッチョ風の画家《受胎告知と降誕を伴う聖母子》メトロポリタン美術館蔵

縦長の小さな板である。

太い木の枠が、周りを囲む。

上半分に、女性が上半身で描かれる。

黒い衣を頭からかぶる。

胸に、赤い衣の幼児を抱く。

幼児は、女性を見上げる。

下半分は、二つに分かれる。

左に、天使と女性の場面がある。

右に、横たわる女性と幼児の場面がある。

地は、金である。

枠の内側に、赤い線が回る。

二つの場面を、下に置く

いま見た一点は、上下に分かれる。

上が主題、下が二つの小さな場面。

つまり、一枚の板に三つの場面がある。

そして、館の題は三つとも挙げる。

聖母子。

受胎告知。

降誕。

つまり、題が内容の目録になっている。

前の回で、題が説明を兼ねる話をした。

寄進者を伴う聖母子
ジョヴァンニ・ダ・ミラノ《寄進者を伴う聖母子》1365年ごろ。館の記録では、板にテンペラ、金の地。縦68.9センチ、横144.1センチ。番号は07.200。メトロポリタン美術館蔵。ジョヴァンニ・ダ・ミラノ《寄進者を伴う聖母子》メトロポリタン美術館蔵

横長の板である。

上が、半円に切られる。

中央に、女性が立つ。

青い衣を、頭から足まで垂らす。

右手に、細い枝を持つ。

その右に、裸の幼児が立つ。

幼児は、女性を見上げる。

左に、黒い衣の人物がひざまずく。

右にも、赤い衣の人物がひざまずく。

いずれも、手を合わせる。

地は、金である。

寄進者が、描き込まれる

いま見た一点には、寄進者が描かれる。

つまり、費用を出した人である。

聖人ではない。

そして、聖人より小さく描かれる。

大きさが、格を示している。

前の回で、大きさが役割を示す話をした。

こちらでも、同じ約束が使われている。

館の題は、寄進者、とだけ書く。

名は、書かれていない。

名の分からない人物

寄進者の名は、しばしば分からない。

もし枠に名が書かれていれば、分かる。

書かれていなければ、分からない。

前の回で、書かれた名が残る話をした。

こちらは、書かれなかったのだろう。

あるいは、枠が失われたか。

だから、題には寄進者、とだけ入る。

顔は残っているが、名は消えた。

更新された、という記述

九点のうち一点の年の欄は、二つの年を持つ。

描かれた年と、手が加えられた年である。

1340年ごろと、1480年ごろ。

つまり、百四十年後に改変されている。

館は、それを年の欄に書く。

前の回で、二つの年が並ぶ例を何度か見た。

こちらは、制作と改変である。

一枚の板に、二つの時期が重なっている。

名前が、記録を組み立てる

九点の記録を貫くのは、名前である。

聖人の名が、題を作る。

そして、寸法の欄の見出しになる。

さらに、区画の順序を示す。

つまり、名前が記録の骨組みになっている。

もし名前が分からなければ、こうはならない。

左から一番目、二番目と数えるしかない。

名が分かることで、記録が立体になる。

見て、名を読む

九点の名は、文字ではなく図から読まれている。

持ち物、衣の色、身振り。

その組み合わせが、名を示す。

つまり、絵そのものが文字の役目を果たしている。

前の回まで、書かれた文字を見てきた。

こちらは、書かれていない名前である。

それでも、記録の欄には名が並ぶ。

読み方を知っている人が、読んだからだ。

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