作品を知る

絵のなかでは、大人もよく遊ぶ——華嵒・リュノワ・ネッチェルほか九点

チャウパルに興じるシヴァとパールヴァティー(ラサマンジャリ画帖より)
デーヴィダーサ《チャウパルに興じるシヴァとパールヴァティー(ラサマンジャリ画帖より)》1694年から95年。館の記録では、紙に不透明水彩とインク、銀と金。画面は16.5×27.6センチ。番号は57.185.2。メトロポリタン美術館蔵。デーヴィダーサ《チャウパルに興じるシヴァとパールヴァティー(ラサマンジャリ画帖より)》メトロポリタン美術館蔵

シヴァとパールヴァティー、インドの夫婦の神である。

遊んでいるのは、チャウパルという盤上の遊びだと題は言う。

十字の盤がそのまま画面の中心に置かれている。

描いたのは、ヌールプルの絵師デーヴィダーサ。

ラサマンジャリと呼ばれる詩集を絵にした連作の一葉である。

1694年から95年という年記が残る、と記録にある。

地の黄色は塗り残しがなく、二人と盤を浮かび上がらせる。

神さままで、盤を挟んで遊んでいる。

盤を挟んだ向かい合いは、そのまま二人の語らいの形にも見える。

二点目は、オランダの暗い室内である。

絨毯を掛けた机を、四人が囲んでいる。

赤い服の女性が、札を一枚、目の高さに持ち上げている。

その後ろに男性が立ち、奥にはパイプを手にした人がいる。

手前には金色の服の女性が背を向けて立ち、足元の腰掛けには小さな犬がいる。

カード遊び
カスパル・ネッチェル《カード遊び》1665年ごろ。館の記録では、油彩・カンヴァス。50.2×45.1センチ。番号は89.15.6。メトロポリタン美術館蔵。カスパル・ネッチェル《カード遊び》メトロポリタン美術館蔵

17世紀オランダの画家ネッチェルの絵である。

館の分類の札には、室内、男、女、カード遊び、犬、遊戯と並ぶ。

壁には浮き彫りらしい額が掛かり、左からの光が金色の衣を照らす。

赤いカーテンと光る衣の艶が、勝負の場を飾っている。

札の読めない犬まで、机のそばの特等席にいる。

遊びの輪の内と外が、立つ人と座る人で描き分けられている。

目隠し鬼が体の遊びなら、こちらは手元と頭の遊びである。

走る足の代わりに、札を持つ指先が画面の要になっている。

盤や札を使う遊びは、九点のうちこの二点である。

そしてどちらも、遊んでいるのは子どもではない。

神と、着飾った大人たちである。

対に描かれた遊びの絵の寸法を測った回でも、遊ぶのは大人だった。

盤と札は、賭けや駆け引きと相性がよい。

子どもの遊びより、絵に注文が付きやすかったのかもしれない。

船の上も、遊びの場である

五枚続の横長の画面に、大きな屋根船が浮かんでいる。

上に張られた黒い布には、川の字と一の字の印が大きく染め抜かれている。

船の名は、川一丸。

船縁の下には波の線が走り、乗る人は十人を超える。

川一丸の船遊び
鳥文斎栄之《川一丸の船遊び》1796年から97年ごろ。館の記録では、木版五枚続。38.4×24.2センチ。番号は1921.364。クリーヴランド美術館蔵。鳥文斎栄之《川一丸の船遊び》クリーヴランド美術館蔵

江戸の絵師、鳥文斎栄之の錦絵である。

館の記録では、船には芸人たちが乗り込んでいる。

右端では、若い踊り子が衣装の帽子を直してもらって出番を待つ。

中ほどでは三人が演奏し、二人が鼓を、一人が三味線を受け持つ。

それを聞きながら、煙管をくゆらせる女性がいる。

左端には、漆塗りの台に松と百合と菖蒲の生け花が飾られている。

それを楽しむ三人の女性のうち、一人は隣の小舟から眺めているとある。

日本語はこの宴を、船遊びと呼んできた。

誰かが鬼になるわけでも、勝ち負けが決まるわけでもない。

それでも、この時間は遊びと呼ばれる。

遊びという語は、子どもの鬼ごっこにも、大人の船の宴にも使われる。

横126センチの続き物を扱った栄之の回で見たとおり、栄之は横に長い画面の名手である。

五枚をつないだ横長は、細長い船と遊びの時間を丸ごと収めるための判型だった。

一枚では船首しか入らない船が、五枚なら艫まで入る。

音楽と花と煙草の煙まで、この遊びには含まれている。

遊びを盛り上げる側の芸人たちにとって、この船は仕事場でもある。

同じ画面のなかに、遊ぶ人と、遊ばせる人が乗り合わせている。

題は遊ぶと言い、解説は乳と読む

ここで、少し困る一点が出てくる。

赤みがかった土の色の彫刻である。

若い女性が座り、膝の上の幼い子を抱きかかえている。

足元には、花をあふれさせた籠が倒れている。

遊ぶ若い女と子供
クロディオン《遊ぶ若い女と子供》1780年代。館の記録では、テラコッタ。30.8×29.1×22.4センチ。番号は1942.783。クリーヴランド美術館蔵。クロディオン《遊ぶ若い女と子供》クリーヴランド美術館蔵

18世紀フランスの彫刻家クロディオンの作である。

高さは31センチに満たない、卓上の像である。

台には、クロディオンと署名が刻まれていると記録にある。

題は、遊ぶ若い女と子供。

ところが館の解説は、生まれたばかりの子に乳を飲ませる母、と読む。

肩に流れる髪の房から足元の花束まで、細部が丹念だと記録は述べる。

テラコッタは、粘土を成形して焼いた素焼きの像である。

クロディオンは多くの作品をこの素材で作った。

焼き上がりの土の色は一点ごとに違い、この作はなめらかな赤灰色だという。

見れば、子は母の胸に顔を寄せ、母は子を見下ろしている。

母の右手は子の体に添えられ、左手は布の上に置かれている。

遊びの最中なのか、乳の時間なのか。

題と解説は、同じ像を別の言葉で呼んでいる。

四百年の母子像を並べた回で見た抱き方と、腕の形は同じである。

膝の上の子との時間は、遊びとも世話とも呼べる。

遊びという語の縁は、ここでは曖昧である。

どちらと決める材料は、記録にはない。