借りてきた品格——ジョシュア・レイノルズの大様式
寸法は、注文の等級だった
三点が同じ寸法である理由は単純である。
当時の肖像画は、寸法ごとに値段が決まっていた。
頭部だけ、胸像、半身、四分の三身、そして全身。
全身の標準寸法が、縦8フィート、横5フィート前後だった。
センチに直せば244×152センチほどである。
先の三点はいずれもこの規格に近い。
つまり画家は、注文の等級に応じた画布を用意していた。
肖像画の値段が寸法で決まる仕組みは、
別のコラムでも扱った。
規格が決まっていれば、額も画布も既製品でそろえられる。
工房の分担も想像しておきたい。
この規模の画面を一人で仕上げるのは難しい。
助手が背景と衣を進め、主人が顔を仕上げる分担が一般的だった。
だから顔以外の筆致は、必ずしも本人の手ではない。
工房の分担については別のコラムでも扱った。
大量の注文をこなす画家には、たいてい工房がある。
姿勢の型は、どこに残るか
姿勢の借用を、もう少し具体的に見ておきたい。
片脚に体重をかけ、もう一方の脚を軽く曲げる型がある。
古代の彫像に多く、立ち姿を自然に見せる効果がある。
腕を組む型、手を腰に当てる型、杖に体を預ける型もある。
いずれも古代やルネサンスの作品に前例がある。
当サイトの公開分でも、こうした型が繰り返し現れている。
つまり画家は、姿勢の一覧を頭に持っていた。
注文主の身分と性格に応じて、その中から選ぶ。
肖像画の制作は、選択の作業でもあった。
子どもの肖像は、少し小さい

こちらは縦143センチ、横113センチ。全身像より一段小さい。
少女が野外に跪いている。
黒い外套を肩から羽織り、下は白い絹の服である。
腰に水色の帯。頭には白い縁飾りの帽子。
左手を前に伸ばし、右手を胸元に置いている。
視線は左下へ落ちている。
その伸ばした手の先に、石の壺と薔薇の茂みがある。
背景は明るい空と、遠くの木立。
所蔵館の記録に、興味深い一文がある。
右下の名前は、後世の別の人の手で書き加えられたものだという。
つまり画面上の文字が、作者の手によるものとは限らない。
誰の肖像かを示すために、後から書き込まれることがある。
肖像と名前の結びつきは、こうして補強されてきた。
子どもと動物を、同じ画面に置く

こちらは初期の作品である。1748年、画家は二十五歳ごろだった。
ほぼ正方形の画面に、三人と一匹が描かれている。
中央に白い服の少女。手に籠を持ち、花が入っている。
その足元に白い羊が一頭。少女が首に手を掛けている。
左に青い服の男児が座り、右に茶色の上着の少年が立つ。
背後には赤い垂れ布と、樹と空。
イタリア滞在の前の作品である。
姿勢は硬く、人物の配置も平面的に見える。
後年の肖像に見られる大きな動きは、まだ現れていない。
大きな群像もある

横360.7センチ。3メートル半を超える大画面である。
三人の男が、野外の卓のまわりに配されている。
左の二人は座り、卓の上の物を見ている。
右の一人は立ち、赤い上着に緑の胴着で、杖を持つ。
足元に猟犬が二匹。背後は樹と、広い夕空である。
この寸法になると、肖像は室内の装飾になる。
屋敷の広間の壁に、家の一族を並べて掛ける。
肖像は個人の記録であると同時に、家の記録でもあった。
主題も見ておきたい。
卓の上には、飲み物と器が置かれている。
猟犬がいることは、その一族が狩りをする土地を持つことを示す。
つまり画面の小道具が、財産と生活の内容を語っている。
顔と衣装だけでなく、周囲の物も肖像の一部である。
家具や道具が身分を語る仕組みは別のコラムでも扱った。
晩年の群像と、子どもの顔

母と三人の子どもの群像である。
母は黒い上着に白い襟で、大きな帽子に白い羽根飾りを付けている。
その膝に幼い子が寄り、右に二人の子が並ぶ。
子どもたちは白い服で、桃色と青の帯を締めている。
背景は暗い樹叢で、右上だけがわずかに明るい。
顔の描き方が柔らかい。輪郭がぼかされ、肌が発光しているように見える。

こちらは子ども一人の肖像である。
縦88.9センチ、横76.2センチ。半身の寸法にあたる。
白い服の少女が正面を向いて座っている。
頭に大きな白い帽子。桃色のリボンが結ばれている。
両手を膝の前で組み、視線はこちらへ向く。
背後は暗い樹と、左上の明るい空。
顔は丸く、頬に赤みがある。
子どもの肖像では、姿勢の借用は少ない。
古代の英雄の型を、幼児に当てはめる必要がないからである。
代わりに、白い服と柔らかい光が使われている。