画家を知る

借りてきた品格——ジョシュア・レイノルズの大様式

寸法は、注文の等級だった

三点が同じ寸法である理由は単純である。

当時の肖像画は、寸法ごとに値段が決まっていた。

頭部だけ、胸像、半身、四分の三身、そして全身。

全身の標準寸法が、縦8フィート、横5フィート前後だった。

センチに直せば244×152センチほどである。

先の三点はいずれもこの規格に近い。

つまり画家は、注文の等級に応じた画布を用意していた。

肖像画の値段が寸法で決まる仕組みは、
別のコラムでも扱った。

規格が決まっていれば、額も画布も既製品でそろえられる。

工房の分担も想像しておきたい。

この規模の画面を一人で仕上げるのは難しい。

助手が背景と衣を進め、主人が顔を仕上げる分担が一般的だった。

だから顔以外の筆致は、必ずしも本人の手ではない。

工房の分担については別のコラムでも扱った。

大量の注文をこなす画家には、たいてい工房がある。

姿勢の型は、どこに残るか

姿勢の借用を、もう少し具体的に見ておきたい。

片脚に体重をかけ、もう一方の脚を軽く曲げる型がある。

古代の彫像に多く、立ち姿を自然に見せる効果がある。

腕を組む型、手を腰に当てる型、杖に体を預ける型もある。

いずれも古代やルネサンスの作品に前例がある。

当サイトの公開分でも、こうした型が繰り返し現れている。

つまり画家は、姿勢の一覧を頭に持っていた。

注文主の身分と性格に応じて、その中から選ぶ。

肖像画の制作は、選択の作業でもあった。

子どもの肖像は、少し小さい

キャロライン・ハワード嬢
ジョシュア・レイノルズ《キャロライン・ハワード嬢》1778年。油彩・画布。縦143センチ、横113センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。右下に後世の別人の手で名前が書き加えられている。ジョシュア・レノルズ《キャロライン・ハワード嬢》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

こちらは縦143センチ、横113センチ。全身像より一段小さい。

少女が野外に跪いている。

黒い外套を肩から羽織り、下は白い絹の服である。

腰に水色の帯。頭には白い縁飾りの帽子。

左手を前に伸ばし、右手を胸元に置いている。

視線は左下へ落ちている。

その伸ばした手の先に、石の壺と薔薇の茂みがある。

背景は明るい空と、遠くの木立。

所蔵館の記録に、興味深い一文がある。

右下の名前は、後世の別の人の手で書き加えられたものだという。

つまり画面上の文字が、作者の手によるものとは限らない。

誰の肖像かを示すために、後から書き込まれることがある。

肖像と名前の結びつきは、こうして補強されてきた。

子どもと動物を、同じ画面に置く

トマスとマーサ・ニート、および家庭教師トマス・ニーダム
ジョシュア・レイノルズ《トマスとマーサ・ニート、および家庭教師トマス・ニーダム》1748年。油彩・画布。縦168センチ、横180.3センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョシュア・レノルズ《トマスとマーサ・ニート、および家庭教師トマス・ニーダム》メトロポリタン美術館蔵

こちらは初期の作品である。1748年、画家は二十五歳ごろだった。

ほぼ正方形の画面に、三人と一匹が描かれている。

中央に白い服の少女。手に籠を持ち、花が入っている。

その足元に白い羊が一頭。少女が首に手を掛けている。

左に青い服の男児が座り、右に茶色の上着の少年が立つ。

背後には赤い垂れ布と、樹と空。

イタリア滞在の前の作品である。

姿勢は硬く、人物の配置も平面的に見える。

後年の肖像に見られる大きな動きは、まだ現れていない。

大きな群像もある

ヘンリー・フェイン閣下、イニゴ・ジョーンズとチャールズ・ブレアとともに
ジョシュア・レイノルズ《ヘンリー・フェイン閣下、イニゴ・ジョーンズとチャールズ・ブレアとともに》1761〜1766年。油彩・画布。縦254.6センチ、横360.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョシュア・レノルズ《ヘンリー・フェイン閣下、イニゴ・ジョーンズとチャールズ・ブレアとともに》メトロポリタン美術館蔵

横360.7センチ。3メートル半を超える大画面である。

三人の男が、野外の卓のまわりに配されている。

左の二人は座り、卓の上の物を見ている。

右の一人は立ち、赤い上着に緑の胴着で、杖を持つ。

足元に猟犬が二匹。背後は樹と、広い夕空である。

この寸法になると、肖像は室内の装飾になる。

屋敷の広間の壁に、家の一族を並べて掛ける。

肖像は個人の記録であると同時に、家の記録でもあった。

主題も見ておきたい。

卓の上には、飲み物と器が置かれている。

猟犬がいることは、その一族が狩りをする土地を持つことを示す。

つまり画面の小道具が、財産と生活の内容を語っている。

顔と衣装だけでなく、周囲の物も肖像の一部である。

家具や道具が身分を語る仕組みは別のコラムでも扱った。

晩年の群像と、子どもの顔

レディ・スミス(シャーロット・ドラヴァル)と子どもたち
ジョシュア・レイノルズ《レディ・スミス(シャーロット・ドラヴァル)と子どもたち》1787年。油彩・画布。縦140.7センチ、横112.1センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョシュア・レノルズ《レディ・スミス(シャーロット・ドラヴァル)と子どもたち》メトロポリタン美術館蔵

母と三人の子どもの群像である。

母は黒い上着に白い襟で、大きな帽子に白い羽根飾りを付けている。

その膝に幼い子が寄り、右に二人の子が並ぶ。

子どもたちは白い服で、桃色と青の帯を締めている。

背景は暗い樹叢で、右上だけがわずかに明るい。

顔の描き方が柔らかい。輪郭がぼかされ、肌が発光しているように見える。

ジョージアナ・オーガスタ・フレデリカ・エリオット
ジョシュア・レイノルズ《ジョージアナ・オーガスタ・フレデリカ・エリオット》1784年。油彩・画布。縦88.9センチ、横76.2センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョシュア・レノルズ《ジョージアナ・オーガスタ・フレデリカ・エリオット》メトロポリタン美術館蔵

こちらは子ども一人の肖像である。

縦88.9センチ、横76.2センチ。半身の寸法にあたる。

白い服の少女が正面を向いて座っている。

頭に大きな白い帽子。桃色のリボンが結ばれている。

両手を膝の前で組み、視線はこちらへ向く。

背後は暗い樹と、左上の明るい空。

顔は丸く、頬に赤みがある。

子どもの肖像では、姿勢の借用は少ない。

古代の英雄の型を、幼児に当てはめる必要がないからである。

代わりに、白い服と柔らかい光が使われている。