家は、小さくしか描かれない——ホフマン・ブルーマールト・スルバランほか九点
家は町でいちばん数の多い建物である。だが九点で数えると、外から見た家はいずれも画面の五分の一以下だった。浴場、蔵、屋敷の名、そして外された戸口まで、家の語は四つのものを指していた。中が見える家は一点もなく、窓はすべて暗い。

湖のほとりに、小さな家がある
一枚の油彩に、家が一軒描かれている。
画面は31×36センチしかない。
ほぼ正方形に近い。
画面の中央やや左に、大きな木の塊がある。
葉は黄緑と濃緑で、輪郭がぼやけている。
その根もとに、白っぽい建物がある。
屋根は低く、横に長い。
壁の色は、薄い灰色である。
窓らしい暗い点が、二つか三つ見える。
家の前には、低い草地が広がる。
草は黄と緑の細かい筆でできている。
右のほうに、水面がある。
水は空の色を映して、淡い青と金になっている。
その上に、小さな帆が一つ立つ。
空は上のほうが青く、下へ行くほど黄色い。
夕方らしい。
家は画面の五分の一もない。
それでも、この絵の中心にある。
館の記録では、題は無題である。
括弧のなかに、湖畔の森の家、と書かれている。
つまり、これは館が付けた説明である。
作者が付けた題ではない。

家は、建物のうちで最も数が多い。
町にも村にも、まず家がある。
だから絵にも、たいてい家が写り込む。
しかし、家が主役になる絵は意外に少ない。
風景の一部として置かれることのほうが多い。
九点を並べて、家の扱われ方を数えたい。
「家」という語の広がり
集めかたは、館の記録の題によっている。
家、家屋、民家、小屋、住まいにあたる語が入るものを拾った。
もとの記録は英語だから、多くは同じ一語に当たる。
その語は、建物としての家だけを指すわけではない。
浴場、蔵、屋号、そして建物の部材にも使われる。
拾った九点のうち、住まいとしての家が描かれているのは五点だった。
残る四点は、語の広がりによって混じったものである。
浴場が一点。
蔵の語を含む芝居の題が一点。
屋敷の名が一点。
そして、家から外された戸口が一点。
外れが四点というのは、今回では多いほうだ。
家という語が、それだけ広く使われているということでもある。
家が描かれた五点
住まいとしての家、五点を見たい。
一点目は、十九世紀のアメリカの油彩である。
73×98.7センチ。
画面は横長で、高い位置から土地を見下ろしている。
中央に、大きな建物が二棟ある。
一つは白く、屋根に小さな塔が載る。
もう一つは赤煉瓦で、四角い。
その周りに、小さな建物がいくつも並ぶ。
畑は緑と黄の四角に区切られている。
手前の道には、馬車が三台走る。
人も歩いている。
木は等間隔に植えられている。
画面の下の縁に、細い文字が書かれている。
館の記録の題は、救貧院の敷地の眺めという。
つまり、これは公共の施設の記録画である。
家というより、施設の全体を写した図面に近い。
それでも、一棟ずつの建物は丁寧に描き分けられている。

二点目は、十七世紀初めの素描である。
紙は17.2×27.2センチ。
この一点は、表と裏の両方が公開されている。
画像も、二つ並べて写されている。
表には、農家の小屋が描かれる。
草を葺いた屋根が大きく、壁は低い。
屋根の左端は崩れかけている。
小屋の脇に、細い木が立つ。
手前には、柵と小さな流れがある。
淡い茶と青と黄の色が置かれている。
裏には、橋と門が描かれる。
丸いアーチの門が、画面の右にある。
その手前に、低い橋が架かる。
こちらは赤茶の線が主で、色は少ない。
館の記述は、当時の著述家の言葉を引いている。
その著述家は1604年に、この画家の素描をこう評した。
心地よい風景と、面白い農家と、農具と、木がある。
いずれも、その土地の周りで実際に見られるものだ、と。
館は、その記述が今回の紙によく当てはまると書いている。

三点目は、十九世紀のフランスの油彩である。
額なしで29.8×46.1センチ。
横長で、川が画面を横切る。
水は静かで、対岸の木を映している。
左の岸には、大きな木立がある。
右の岸に、白い小さな家がある。
屋根は三角で、壁は明るい。
家の前の水際に、人が二人いる。
しゃがんで、布を洗っているらしい。
空は薄い灰色で、雲が広がる。
家は画面の十分の一ほどしかない。
それでも、題には家が入っている。
館の記録では、絵具は布に描かれている。
カンヴァスではなく、布と書かれている点が珍しい。

四点目は、家の中を描いた油彩である。
額なしで165×218.2センチ。
九点のなかで、いちばん大きい絵である。
画面の右に、赤い衣の女性が座る。
膝の上に白い布を広げ、右手を頬に当てている。
目は伏せられ、涙が光る。
左には、青い衣の少年が座っている。
手もとで、細い枝を編んでいる。
指を刺したらしく、動きが止まっている。
二人のあいだに、机がある。
机の上には、本が数冊と、器がある。
机の面は、手前へ傾けて描かれている。
床には、白い鳩が二羽いる。
右手前には、白い花を活けた器がある。
上のほうは暗く、光が斜めに差す。
館の記述によれば、この主題は聖書にない。
画家が考え出した場面らしい、と館は書いている。
同じ記述は、編まれている枝が後の受難を予告すると述べる。
そして、大きな画面でありながら静かだと評している。