牛は、値打ちを見せるために横を向く——カイプ・陳洪綬・ドーミエほか九点

褐色がかった一枚である。
画面の上半分は、平らな土地と空である。
地平線は低く、遠くに木が点々と生える。
右奥には、白い天幕のようなものが小さく見える。
画面の下半分に、牛が集まっている。
数えると、十数頭はいる。
角が長く、上へ大きく曲がっている。
多くは横向きで、体の側面をこちらへ見せている。
牛のあいだに、人が何人も立っている。
頭に布を巻き、白い衣を着ている。
先頭のほうには、荷車のようなものが見える。
館の記録では、これは百五点ほどの写真から成る画帖の一枚である。
画帖はすでにばらされている。
写されたのは1885年から1887年の夏にかけてのインドだという。
イギリスの植民地の上層と、インドの王族や上流の暮らしを垣間見せる、と記録は書く。
館は同じ画帖から別の三十七点も所蔵している。
そしてこの画帖は、当時インドを訪れた、あるいは働いていたイギリスの役人が、個人の記念として注文したものらしいという。
つまりこの牛たちは、誰かの旅の記念として写された。
そして館は、この写真家についても短く書いている。
いまも、そして生きているあいだも、十九世紀のインドでもっとも重要な写真家と見なされてきたという。
その人が、軍の牛の隊列を写している。
写された牛の数は、正確には数えられない。
角と背中が重なり合い、どこまでが一頭か分からなくなる。
数えられないほど並んでいることが、この一枚の内容である。
題にある部隊の名は、牛が軍の装備の一部だったことを示している。
牛は、星座になり、風刺になる
最後の二点で、牛は生きものから離れる。

楕円の枠の中に、白い牛が一頭立っている。
枠のまわりは、赤と黒の細かい模様で埋められている。
牛は完全な横向きで、頭が右を向く。
角は上へ曲がり、先に飾りが付いている。
首には鈴を連ねた紐が掛かる。
額には宝石をあしらった飾りがある。
背には、金の唐草模様の布が掛けられている。
体は真っ白で、影がほとんど付いていない。
その足もとに、小さな牛が数頭いる。
体は白や斑で、大きさは半分ほどしかない。
背景の奥には、木立と、灰色の象が数頭見える。
館の記録では、この大きな牛は牡牛座を表している。
小さな群れの後ろで、優美な像のように空間を満たしていると記録は書く。
純白で、完全な横向きで、鈴と宝冠と角の飾りを付けている。
金の唐草模様の布が、この牛を役牛や乳牛から区別している。
そして背景の象からも区別している、と記録は読む。
さらに館は、楕円という形についても書いている。
この形は、宮廷で人気のあった小さな彫刻の飾りに由来するという。
つまり牛は、星座の記号として、装いによって格付けされている。

石版の一枚である。
画面の左に、柵の中の巨大な獣がいる。
体は牛のようだが、頭が異様に大きい。
顔からは長い鼻のようなものが垂れ下がる。
背は高く、柵の上へせり出している。
その柵の右に、人々が集まっている。
外套と帽子の男が三人、女がひとり。
みな顔を上げ、獣を見上げている。
女は日傘を持ち、口を開けている。
画面の上には、印刷された表題が並ぶ。
館の記録では、これは1856年6月19日の新聞に載った一枚である。
「動物の展覧会」という連作の五枚目にあたる。
刷り込まれた文には、この獣が新しい品種であると書かれている。
きわめて有望だが、あいにくまだ誰の財布にも手が届かない。
値段は三万フラン、と文は続く。
つまりこれは、家畜の品評会を笑う絵である。
九点のうち、牛に値段が付いているのは、この一点だけである。
そして刷り込まれた文には、印刷所の住所も入っている。
新聞の一枚として、日付と番号と店の名を背負って世に出た。
美術館の記録は、その一行までを写し取っている。
風刺の絵は、いつ、どこで、いくらで売られたかが分かる。
九点のうち、発行された日まで分かるのは、この一点だけである。
牛の絵でありながら、残っている情報は牛以外のことばかりである。
数えてみると
九点を並べ直す。
牛が働いている場面は、二点である。
水を張った田の水牛と、隊列を組む写真の牛たち。
風景の中の点になっているのは、二点である。
川辺の四頭と、丘の下の数ミリの塊。
姿だけを見せているのは、三点である。
柵の前の雄牛、紙の上の二頭、そして星座の白い牛。
人を乗せているのが一点、値段を付けられているのが一点である。
もう一つ数えておく。
九点のうち、牛が角を上へ大きく曲げているのは三点である。
インドの写真、星座の牛、そして水牛。
いずれも、ヨーロッパの牛ではない。
柵の前の雄牛も、素描の二頭も、角は短く横へ伸びている。
角の形が、そのまま土地の違いになっている。
言えることと、言えないこと
言えるのは、牛が「値打ちを見せる獣」として描かれてきたことである。
品種を示すために横向きに立たされ、飾りを付けられ、値段を書かれる。
九点のうち三点で、牛の体は正確な側面を見せている。
側面は、体の大きさと肉付きがもっともよく分かる向きである。
言えないのは、それが牛だけの扱いだという話である。
馬も同じように側面を見せていた。
違うのは、馬が人を乗せるために高さを与えられたのに対し、牛は横幅を与えられていることである。
牛の絵は、たいてい横長である。
九点のうち、横長の画面は五点あった。
最後に、はじめの一点へ戻る。
柵の前の若い雄牛は、体を横に向け、顔だけをこちらへ回していた。
体の大きさを見せながら、目を合わせている。
誰かに買われるための姿勢である。
九点を数え終えて残るのは、その振り向いた顔のほうである。








