作品を知る

池は、四点で鏡になる——コロー・池大雅・マッケほか九点

人の作った池

九点のうち二点は、人が作った池である。

一点目は、写真である。

画面は25.1×36.4センチ。

台紙まで含めると40.6×50.8センチになる。

画面の中央に、岩を積んだ塚がある。

その下に、洞のような穴が開く。

穴から、水が白い筋になって落ちている。

落ちた水は、手前の池に流れ込む。

池の水面は、暗く、静かである。

周りは、密な木立である。

葉のあいだから、光が斑に差し込む。

明るい部分と暗い部分が、細かく分かれている。

館の記述によれば、この場所は市の公園である。

森が公園に編入されたのは、この写真の六年前だという。

つまり、岩も滝も池も、公園として作られたものである。

館の記述はさらに、この写真家の経歴にも触れている。

後に市の公式の写真家となり、街路の記録を残した。

その多くは、後の都市改造で失われた場所だという。

ブローニュの森、小洞窟から鹿の池を望む
シャルル・マルヴィル《ブローニュの森、小洞窟から鹿の池を望む》1858年。館の記録では、湿板コロジオンの陰画から作った鶏卵紙印画。画面25.1×36.4センチ。台紙を含めて40.6×50.8センチ。番号は1989.27。クリーヴランド美術館蔵。シャルル・マルヴィル《ブローニュの森、小洞窟から鹿の池を望む》クリーヴランド美術館蔵

二点目は、水彩とグワッシュの習作である。

紙は27.9×14.6センチ。

縦に細長い。

画面には、少女が一人立っている。

濃い青の外套を着て、大きな帽子をかぶる。

右手を横へ伸ばしている。

顔は、ほとんど描かれていない。

背景は、褐色の紙の地である。

池は、どこにも描かれていない。

館の記録の題によれば、これはある木版画のための習作である。

その版画の題に、公園の池が入っている。

館の記述によれば、この少女は完成した版画の手前に置かれた。

そして池には、玩具の舟が浮かんでいるという。

その習慣は、いまも続いていると館は書く。

つまり、この一点は池の絵の部品である。

部品の段階では、池はまだない。

木版画『チュイルリー公園の池』のための習作
オーギュスト・ルイ・ルペール《木版画『チュイルリー公園の池』のための習作》1898年頃。館の記録では、褐色の厚手の網目紙に水彩、グワッシュ、黒クレヨン。紙は27.9×14.6センチ。番号は2019.66。クリーヴランド美術館蔵。オーギュスト・ルイ・ルペール《木版画『チュイルリー公園の池』のための習作》クリーヴランド美術館蔵

池のほとりに座る

人と池の距離を見たい。

九点のうち、人が描かれているのは五点である。

そのうち、水に入っている人は一人もいない。

みな、岸にいる。

石版画の一点が、その典型だった。

紙は34.7×27.5センチ。

画面の下のほうに、女性が一人座っている。

背を丸め、うつむいている。

その前に、水面がある。

水は細い横線で示される。

上のほうには、木の茂みがある。

葉は短い線の集まりで、密に描かれる。

線は速く、鉛筆で描いたような調子である。

館の記述によれば、これは転写の技法で作られた。

石に直接描かず、紙にペンで描いてから移す。

そうすると、描いた線の質と紙の目が残る。

さらに館は、この作品が二枚しか刷られなかったと書く。

版画でありながら、ほとんど一点ものである。

紙の左下には、題が鉛筆で書かれている。

館は、その文面も記録に写している。

池のほとりに座る女
カミーユ・ピサロ《池のほとりに座る女》1874年頃。館の記録では、ペン・リトグラフ。紙は34.7×27.5センチ。番号は2024.58。クリーヴランド美術館蔵。カミーユ・ピサロ《池のほとりに座る女》クリーヴランド美術館蔵

湖を、色で描く

二十世紀の油彩を見たい。

全体で60.3×48.3センチ。

縦長の画面である。

画面には、二人の人物が立っている。

一人は青い上着に赤い帽子。

一人は黒い上着に赤い帽子。

顔は塗られていない。

肌の色の面があるだけで、目も口もない。

二人の周りは、色の面で埋められている。

赤、橙、緑、青、黄。

面はいずれも輪郭がはっきりしている。

木の形らしいものもあるが、決められない。

画面の中ほどに、明るい青の面がある。

館の記録の題によれば、それが湖である。

水面は、その青い面だけで示されている。

映り込みも、波もない。

対岸も描かれていない。

つまり、これは湖の形を捨てた画面である。

色の一つとして、湖が置かれている。

青い湖のほとりの人々
アウグスト・マッケ《青い湖のほとりの人々》1913年。館の記録では、油彩・カンヴァス。全体60.3×48.3センチ。番号は2020.112.10。ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵。アウグスト・マッケ《青い湖のほとりの人々》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

池の絵は、小さいものが多い

残る二点は、小さな画面である。

一点は、素描帖の一葉。

紙は12.1×19.7センチ。

黒鉛だけで、ごく薄く描かれている。

画面の中ほどに、水平の線がある。

その下が池、上が岸らしい。

右に、細い木が二本立つ。

左のほうには、低い丘の輪郭がある。

線は数十本しかない。

下のほうに、鉛筆の書き込みがある。

この帖からは、これで四枚目を取り上げることになる。

の回でも見た。

一冊の帖が、四つの番号で公開されている。

秋の池と荒野(スケッチブックより)
アルバート・ビアスタット《秋の池と荒野(スケッチブックより)》1890年。館の記録では、網目紙に黒鉛。12.1×19.7センチ。番号は1995.379.4f裏。メトロポリタン美術館蔵。アルバート・ビアスタット《秋の池と荒野(スケッチブックより)》メトロポリタン美術館蔵

もう一点は、小さな油彩である。

25.7×38.8センチ。

画面は暗い。

下半分に、木立と草地がある。

その中ほどに、細い水面が光る。

水は明るい灰色で、横に伸びる。

奥には、低い山並みがある。

空は上のほうが暗く、下のほうが金色である。

日の入りだろう。

館の記録に、制作年はない。

記述の欄もない。

題は、ある人の名を冠した池である。

つまり、私有の池か、地元でそう呼ばれた池だろう。