道は、五点で奥へ抜けていく——テリス・ピサロ・ハンマースホイほか九点
道は必ず画面の外へ続く。九点で数えると、奥へ抜ける形が五点、横に切る形は一点だけだった。取り壊し前の路地、住所を題にした室内、そして綴りの偶然で入った谷の絵まで並ぶ。人が歩いているのは四点で、無人の道が三点ある。道は人がいなくても道に見える。

細い通りが、奥へ続いている
一枚の写真に、狭い通りがある。
画面は24.9×19.1センチ。
縦長で、両側に建物が迫る。
左の壁は暗く、細部が沈んでいる。
右の壁には、いくつも窓が開く。
窓には鎧戸があり、開いたものと閉じたものがある。
壁のあちこちに、紙が貼られている。
通りの幅は、人が二人並べるほどしかない。
石畳の面は、中央がへこんでいる。
そこに水が流れた跡がある。
奥へ行くほど、通りは細くなる。
いちばん奥は、白く飛んでいる。
手前の右に、男が一人しゃがんでいる。
帽子をかぶり、こちらを見ているようにも見える。
その奥にも、立っている人影がある。
いずれも、動いていないから写った。
館の記録の題によれば、これは旧市街の改造の記録である。
つまり、この通りは取り壊される予定だった。
写真は、なくなる前に撮られている。
館の記録には、裏に鉛筆で書かれた番号も写されている。

道は、いちばん細長い場所である。
幅より長さがはるかに大きい。
そして、必ずどこかへ続いている。
続いている先は、たいてい画面の外にある。
だから道の絵には、必ず見えない部分がある。
九点を並べて、道の描かれ方を数えたい。
道の語で集めると、道以外が集まる
集めかたは、館の記録の題によっている。
道、通り、街道、路にあたる語が入るものを拾った。
英語の記録では、いくつかの語に分かれる。
田舎の道を指す語と、町の通りを指す語である。
九点のうち、道や通りが描かれているのは六点だった。
残る三点は、語の広がりで混じっている。
一点は、通りの名を題にした室内の絵。
一点は、通りの名を題にした高い所からの眺め。
もう一点は、綴りの偶然による一致だった。
最後の一点については、後で詳しく書く。
町の通りは、両側から挟まれる
町の通りを描いた三点を見たい。
一点目は、いま見た写真である。
二点目は、水彩と黒チョークの素描である。
紙は29.2×22.7センチ。
こちらも縦長で、両側に建物が並ぶ。
建物は木の骨組みが見える造りである。
窓が縦に並び、上の階が少し張り出す。
看板らしいものが、通りへ突き出ている。
通りの奥、突き当たりのあたりに、大きな建物の影がある。
尖った屋根が空へ伸びる。
通りには、人が十数人いる。
歩いている人、立ち話をしている人がいる。
服は青や黒で、単純な形にまとめられる。
画面の下には、署名と場所の名が書かれている。
館の記録は、その文面をそのまま写している。
さらに、紙の透かしまで記録されている。
紙を作った会社と、その工場の名が入る透かしである。
館の記述によれば、この素描とほぼ同じ構図の版画がある。
同じ時期に作られ、この紙が下絵だった可能性があるという。

三点目は、油彩である。
額なしで76.5×64.3センチ。
こちらは通りの景色ではない。
画面いっぱいに、女性と子どもが描かれる。
女性は赤い外套をまとい、子どもを抱いている。
頭には灰色の布をかぶる。
子どもは白い帽子をかぶり、目を閉じている。
女性の手には、小さな紙が握られている。
紙には、文字らしいものが書かれている。
館の記録は、その文字の読みを写している。
背景は暗く、何もない。
通りは描かれていない。
だが題には、通りの語が入る。
館の記述によれば、この女性は街頭で歌う人である。
当時、そうした人々は物も売っていたという。
館は、画家が売り物を描かなかった点に触れている。
そのことで、見る人はこの人の人間性のほうを見る、と館は書く。
つまり、通りは題のなかにだけある。

田舎の道は、木と一緒に描かれる
田舎の道を描いた三点を見たい。
一点目は、横長の銅版画である。
館の記録に、寸法の欄はない。
画面の中央に、木の大きな塊がある。
葉は細かい線の集まりで、丸くまとまる。
その左に、道が奥へ抜けていく。
道の上に、小さな人影と動物がいる。
手前の右には、牛が数頭いる。
一頭は横になっている。
奥には、低い丘と空が広がる。
空は白いまま残されている。
題は《森の縁の道》という。
道は森の外側を通っている。
森の中ではない。
これは実際の道の性質でもある。
木を切らずに済む場所を、道は通る。

二点目は、小さな油彩である。
27.7×35.6センチ。
画面の中央に、暗い緑の木立がある。
その左右に、黄緑の草地が広がる。
草地の低いところに、細い流れがある。
流れに沿って、道らしい筋が奥へ延びる。
道の輪郭ははっきりしない。
草の色が薄くなっている帯が、それらしく見える。
奥には、低い丘が霞む。
空は薄い青と黄で、雲が広がる。
館の記録の題は、無題である。
括弧のなかに、小川と木々に沿う道のある風景、と説明が添えられる。
制作年も記録にない。
いずれも無題で、括弧に説明が付いていた。
同じ画家の作品が、同じ形式で三点続いている。