画家を知る

水彩は、決める道具である——ジョン・ラ・ファージ

対になる、もう一点

同じ企画の、別の下絵を見たい。

先例の記録——孔子と弟子たちが文書を校訂し書き写す。ミネソタ州議事堂最高裁法廷の壁画のための色彩習作
ジョン・ラ・ファージ《先例の記録——孔子と弟子たちが文書を校訂し書き写す。ミネソタ州議事堂最高裁法廷の壁画のための色彩習作》。紙に水彩。メトロポリタン美術館蔵。ジョン・ラ・ファージ《先例の記録——孔子と弟子たちが文書を校訂し書き写す。ミネソタ州議事堂最高裁法廷の壁画のための色彩習作》メトロポリタン美術館蔵

こちらも半円形の画面である。

人物が十人ほど。地面や台に座り、巻物や書物を扱う。

中央に大きな木が立ち、枝が上へ広がる。

左に卓があり、その上に道具が並ぶ。

つまり、文書を写す場面である。

二つの場面を、対にする

企画の構造を考えたい。一方は古代ギリシアの議論、もう一方は古代中国の記録。

つまり、法をめぐる二つの伝統が並べられている。

対で主題を組む方法は、別のコラムでも扱った。

公共建築の壁画では、こうした構成がよく使われる。

誰の伝統を、どう並べるか

主題の選び方についても書いておきたい。異なる地域の伝統を並べると、
比較の視点が生まれる。

一方で、単純化の危険もある。一つの場面が、その文化全体を代表することはない。

19世紀末の公共壁画には、こうした図式が広く使われた。

読むときは、選ばれた場面と、選ばれなかった場面の両方を考えたい。

寓意の一点

もう一点、下絵を見たい。

運命の輪
ジョン・ラ・ファージ《運命の輪》1900年。淡い黄褐色の織紙にグワッシュ、水彩、黒鉛。縦39.7センチ、横31.1センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョン・ラ・ファージ《運命の輪》メトロポリタン美術館蔵

翼のある人物が、雲の上に立つ。

上半身は裸で、腰から下に布が巻かれる。両腕を左右へ広げる。

背後の翼は大きく、画面の上端近くまで届く。

足元には輪のような形がある。輪の一部が雲に隠れる。

背景は雲で、上部が暗く、下部が明るい。

つまり、寓意の像である。

二重の習作

色の記録に戻りたい。

夜明けの二重習作——水越しに見るモーレア島、タヒチ
ジョン・ラ・ファージ《夜明けの二重習作——水越しに見るモーレア島、タヒチ》1891年。簀の目紙に水彩、グワッシュ、黒鉛。縦26.7センチ、横19.8センチ。メトロポリタン美術館蔵。ジョン・ラ・ファージ《夜明けの二重習作——水越しに見るモーレア島、タヒチ》メトロポリタン美術館蔵

一枚の紙に、二つの習作が上下に並ぶ。

上段は、色の帯だけである。灰色と褐色が横に走る。

下段には、遠くの島影が描かれる。水面と、暗い茂みが見える。

右の余白には、手書きの文字が並ぶ。色や時刻の覚書だと考えられる。

つまり、一枚の紙で二回の観察を記録している。

紙を、節約する

紙の使い方にも触れておきたい。一枚に二つ描けば、紙は半分で済む。

旅先では、紙も絵具も限られる。

つまり、節約は制作の条件である。

同じ工夫は、別のコラムでも扱った。

画像の条件が、揃っていない

画像についても書いておきたい。公開分には、白黒の画像が複数含まれる。

色彩習作の一部も、白黒である。

色を決めるための紙が、色の見えない画像で公開されている。

つまり、最も重要な情報が失われている。

画像の差は作品の差ではないという点は、
別のコラムでも扱った。

見立て——水彩は、決める道具である

ここまでを整理したい。この画家の水彩には、三つの役目がある。

第一に、旅先の記録。見たものを、その場で残す。

第二に、色の覚書。あとで使うために、色の並びを写す。

第三に、下絵。ガラスや壁画の色を、作る前に決める。

いずれも「完成作」ではない。しかし、いずれも仕事の中心にある。

準備の紙が、残ること

残り方についても書いておきたい。ステンドグラスの窓も、壁画も、建物の中にある。

動かせず、失われることもある。

一方、紙の下絵は動かせる。だから、館に入りやすい。

つまり、完成作より準備の紙のほうが残る場合がある。

同じ構造は、別のコラムでも扱った。

三十一点の内訳

公開分の構成を確かめておきたい。31点のほとんどが紙の作品である。

主題は、旅の記録、風景、花、ステンドグラスの下絵、壁画の習作、寓意像。

制作年は1860年代から1900年に及ぶ。四十年ほどの幅である。

つまり、生涯にわたって紙で考え続けた画家であることが読める。

暮らしへ——色だけを、記録する

家でできることを書いておきたい。夕方の空を見たら、写真ではなく色を記録してみる。

紙に三本の帯を塗る。上から順に、空の色を写す。

そして、その脇に時刻と場所を書く。

形は要らない。色だけで、その日の空気は残せる。

ラ・ファージの紙がしていたのは、その作業である。

群として見ると、用途が見える

最後に、見方をまとめておきたい。31点を用途で分けてみる。

旅の記録、色の覚書、窓の下絵、壁画の習作。四つの群になる。

そして、画面の形がそれに対応する。縦長の区画、半円形、自由な矩形。

公開画像は、そのための道具である。形と用途を突き合わせる作業は、画面の上でできる。

そして、分けた結果は書き留めておきたい。用途の区別は、忘れやすい。

一行の記録が、次に見るときの足場になる。

ステンドグラスという仕事

作者の職業についても補いたい。この画家は、ステンドグラスの制作で知られる。

窓のための下絵を描き、ガラスを選び、鉛の桟で組む。

つまり、絵画と工芸の両方に関わる仕事である。

ガラスに色を入れる工夫については、
別のコラムで扱った。

同じ時期のアメリカで、複数の作り手が競っていた。