壁のための絵——ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
縦横比が一対四の画面がある。壁に嵌める絵は、建築が形を決める。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの九点で、縮小版、下絵、描かれた額縁という仕組みを読む。色を抑える理由にも触れておきたい。紙に描かれた実物大の下絵と、対になる装飾画も見ておきたい。

縦横比、一対四
一枚の絵から始めたい。

寸法を先に見てほしい。縦33.3センチ、横134.3センチ。
縦横の比は、およそ一対四である。帯のように細長い画面である。
内容を確かめたい。中央から右にかけて、若い男たちが立つ。上半身は裸で、腰に布を巻く。
一人が槍を構え、投げる姿勢を取る。他の者は、その動作を見ている。
左には女性と子どもが集まる。座る人、立つ人、赤子を抱く人がいる。
奥に川が横たわり、対岸に低い丘が続く。左端に藁葺きの小屋がある。
色は淡い。緑、灰、黄土、そして薄い青。強い色はほとんど使われていない。
この画面は、壁のためのものである
なぜ、これほど細長いのか。答えは、設置場所にある。
この構図は、公共建築の壁に描かれた大画面のためのものである。
建物の壁には、窓や扉がある。その上や、柱と柱のあいだの帯状の面に絵が入る。
つまり、画面の形は建築が決めている。
同じ考え方は、天井画にも見られる。その設計については、
別のコラムで扱った。
描いたのは、誰か
作者はピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌである。1824年にリヨンで生まれ、1898年に没した。
パリの公共建築を数多く手がけた。市庁舎、図書館、大学の壁面が主な仕事場である。
同時代には印象派の画家たちがいた。しかしこの画家の画面は、明るい戸外の光を追わない。
色を抑え、輪郭を柔らかくし、平らな面で構成する。まったく別の方向である。
後年、若い世代の画家たちがこの平面性を評価した。その影響は、
別のコラムで扱った画家にも及んでいる。
縮小版という形式
では、この一点そのものは何なのか。
壁画は動かせない。しかし、同じ構図を小さな画布に描けば、持ち運べる。
こうした作品を縮小版と呼ぶ。展示や販売のために、画家自身が制作することがあった。
つまりこの絵は、壁画の複製でありながら、独立した作品でもある。
原作と写しの関係については、別のコラムで扱った。
遠くから見るための絵
見る距離についても触れておきたい。壁画は、階段や広間の高い位置に置かれる。
つまり数メートル離れて見上げる絵である。近寄って細部を確かめることはできない。
だから輪郭は太く、形は単純になる。人物の姿勢も、遠目に読める型が選ばれる。
看板の描き方が版画に持ち込まれた例は、
別のコラムで扱った。
見る距離が描き方を決める点は、時代も地域も超えて共通している。
問い——壁のための絵は、どう作られるのか
ここで問いを立てたい。壁のための絵には、独自の条件がある。
形が建築で決まり、大きさが部屋で決まり、色が光で決まる。
その条件は、画面にどう現れるのか。
当サイトにはピュヴィス・ド・シャヴァンヌの作品が11点公開されている。
縮小版、下絵、独立した作品が混じっている。並べて確かめたい。
もう一つの帯
同じ形式を、もう一点見たい。

縦40.3センチ、横113.7センチ。こちらも帯状である。
画面には、木立と人々が描かれる。中央に円形の水盤があり、女性が身をかがめる。
左には座って語り合う人々。右には、彫刻の断片らしきものを扱う人がいる。
奥に建物の柱が並び、その先に水面が広がる。
樹木は等間隔に立ち、幹が画面を縦に区切る。人物は、その間に配置される。
人物が、重ならない
配置の細部も見ておきたい。この画家の画面では、人物どうしがあまり重ならない。
一人ずつが、輪郭のまま読める位置に置かれる。
重なりを減らすと、奥行きは浅くなる。しかし、遠くからでも人数と姿勢が分かる。
奥行きより読みやすさを優先した設計である。
同じ選択は、別のコラムで見た群像にもあった。
帯の中で、人をどう並べるか
構図の課題を考えたい。細長い画面では、中央に一つの主役を置いても効かない。
視線が左右に流れるため、要素を分散させる必要がある。
この画面では、三つか四つの人物の群に分けられている。群と群のあいだに、木や水盤が入る。
つまり、区切りながら並べる構成である。
横長の画面に時間を入れる方法については、
別のコラムでも扱った。
額縁が、絵の中に描かれている
次の二点は、変わった構造を持つ。

画面の外周に、濃い青緑の帯がある。その帯に、葉と実の模様が描かれている。
つまり、額縁の役目をする装飾が、絵の中に描かれている。
帯の下部には文字がある。「LE TRAVAIL」と読める。労働という意味である。
中央の画面には、働く人々が描かれる。斧を振り上げる男、丸太を運ぶ男、鍛冶をする人。
右下には、横たわる女性と子どもがいる。休む人と働く人が、同じ画面に置かれる。