墓の印は、七点とも石である——カナレット・ザルツマン・デ・ウェルヴェほか九点
墓は長く残ることを前提に作られる。九点で数えると、七点で石が使われ、木の墓標は一点もなかった。葬られた人の名が分かるのは三点だけ。墓から外された彫刻も一点ある。文字が刻まれているのは四点で、読めるのは二点しかない。

白い石碑が、木の下に並んでいる
一枚の油彩に、墓地がある。
全体で50×61センチ。
横長の画面である。
画面の左に、大きな木が立つ。
幹は太く、枝が上と右へ広がる。
葉は明るい緑で、細かく描かれる。
その木の下、画面の下のほうに、白い石が並ぶ。
数えると、六つか七つある。
四角い板状のものと、先の尖ったものがある。
いずれも白く、文字が刻まれているらしい。
石のあいだに、人が三人いる。
一人は緑の衣の女性で、立っている。
一人は白い衣の子どもらしい。
もう一人は、しゃがんでいる。
犬が一匹、手前にいる。
石の向こうは、低い柵である。
その先に、川が流れる。
川には、白い帆の舟がいる。
さらに奥には、緑の丘と、小さな家々がある。
空は淡い黄色と桃色である。
館の記録の題は、一族の墓地という。
作者の名は記録にない。
十九世紀のアメリカ、とだけ書かれている。

墓は、人を葬った場所である。
そして、その場所を示す印が立てられる。
石、碑、堂、あるいは大きな建物。
九点を並べて、その印の形を数えたい。
墓の印は、四つの形に分かれた
集めかたは、館の記録の題によっている。
墓、廟、塚にあたる語が入るものを拾った。
九点のうち、墓や墓所が描かれているのは七点だった。
残る二点は、後で扱う。
七点の印の形を数えたい。
石を立てたものが、二点。
建物の形をしたものが、三点。
石の棺を置いたものが、一点。
彫刻を伴う墓が、一点である。
つまり、印の形はさまざまである。
共通するのは、石で作られていることだけだった。
七点とも、木の墓標は描かれていない。
石は残り、木は残らないからだろう。
建物としての墓
建物の形の三点を見たい。
一点目は、写真である。
画面は22.7×32.8センチ。
画面のほぼ全体を、石の門が占める。
門は尖ったアーチで、幾重にも縁取られている。
その内側に、もう一つの小さな門がある。
奥は暗い。
門の上と左右は、石を積んだ壁である。
石は大きく、目地がはっきり見える。
手前は、平らな石の床である。
空も、周りの景色も写っていない。
館の記述によれば、この撮影者は極端に近い距離から撮った。
そのため、大きさや位置や周囲の情報が消えている。
代わりに、石の面の質感が強く出る。
館は、その効果を抽象的だと書いている。
そして、この撮影は政府の依頼だったという。
古い遺構の年代についての説を裏づけるためである。
つまり、これは学術のための写真である。

二点目は、水彩である。
紙は33.5×24.2センチ。
縦長の画面である。
画面の中央に、尖った屋根の構築物がある。
屋根の上に、馬に乗った人物の像が立つ。
その下に、アーチの空間がある。
空間の奥に、横たわる像が見える。
石の棺だろう。
構築物の左右は、壁である。
壁は淡い黄土色で、光が当たる。
下のほうには、鉄柵らしい線が並ぶ。
館の記録の題は、ある町の墓である。
制作年は記録にない。
館の記録に、記述の欄もない。

三点目は、油彩である。
42×91.1センチ。
幅が高さの二倍以上ある。
画面の右に、石造りの構築物がある。
四角い塔のような形で、段が付く。
その手前に、開いた石の扉がある。
扉のそばに、人が数人いる。
一人は白い衣で、身をかがめている。
左のほうには、馬に乗った人々がいる。
赤い衣の人が、手を上げている。
その左は、開けた土地と、低い建物である。
奥には、青い山が霞む。
空は明るく、雲が薄い。
館の記録の題によれば、古代の王の墓を訪れる場面である。
つまり、これは歴史の場面を描いた絵である。
制作は1796年。
描かれた出来事は、その二千年以上前になる。

墓を囲む人々
人が墓を囲む場面が、二点ある。
一点目は、素描である。
紙は17.7×42.5センチ。
横に長い。
画面の中央に、石の棺がある。
棺は四角く、蓋が開いている。
その周りに、人が十数人いる。
いずれも長い衣をまとう。
手を上げる人、身を乗り出す人がいる。
顔は上を向いている。
紙は赤褐色に下塗りされている。
その上に、白で明るい部分が起こされる。
館の記述によれば、これは大きな油彩のための習作である。
その油彩は、いまも描かれた場所にあるという。
そして、この場面は空の墓を見た使徒たちである。
館の記述はさらに、紙の下塗りの意味にも触れている。
中間の調子を作り、明暗を両方向へ描けるようにするためだという。

二点目は、小さな素描である。
11.4×9.5センチ。
九点のなかで、いちばん小さい。
画面の中央に、翼のある人物がいる。
腕を大きく上げ、体をひねる。
衣が渦を巻いて広がる。
その下に、岩か石の塊がある。
線はペンで、細かく重ねられている。
余白はほとんどない。
館の記録の題によれば、これは墓の天使である。
館の記録に、記述の欄はない。
紙は簀の目紙で、インクは没食子である。
つまり、鉄を含むインクである。
時間とともに、色が茶色へ変わる。