美術史・技法

行列は、途中しか描けない——師宣・アンドレアーニ・グアルディほか九点

行列は横に長い。だから、小さく描くか、分けるかしかない。九点で、その解き方を数えたい。巻物、連作、器の一周。そして九点とも、列の先頭と最後尾は画面の外にあった。順序があることが、群衆との違いである。守られる人は、先頭ではなく真ん中にいた。

朝鮮通信使の行列
菱川師宣《朝鮮通信使の行列》シカゴ美術館蔵

紙が、横に長く伸びている

横に長い一点である。

縦24.2センチ、横75センチ。

縦の三倍以上ある。

その上を、行列が左から右へ進む。

先頭のほうに、馬に乗る人がいる。

その後ろに、笠をかぶった人が続く。

長い棒を担ぐ人が数人いる。

中ほどに、屋根の付いた輿がある。

四人がかりで担いでいる。

さらに後ろにも、人が続く。

旗のようなものを持つ人がいる。

線は細く、手で色が差されている。

赤と黄が、点々と置かれる。

背景は、紙のままである。

道も、建物も描かれていない。

朝鮮通信使の行列
菱川師宣に帰属《朝鮮通信使の行列》1682年。館の記録では、手で彩色した木版画、巻物の形式。24.2×75センチ。番号は1925.1700。シカゴ美術館蔵。菱川師宣《朝鮮通信使の行列》シカゴ美術館蔵

館の記録は、この一点を菱川師宣に帰属としている。

作者の欄に「帰属」の語が入る。

確実ではない、という意味である。

第十七回で見た同じ作者の版画には、この語がなかった。

二人の話で扱った一点は、断定されていた。

同じ作者名でも、作品ごとに確かさが違う。

館は、その差を語で示している。

行列には、決まった性質がある。

横に長い、ということである。

人が縦に並ぶのではない。

進む方向へ、一列に伸びる。

だから、行列を描くと、画面が横に長くなる。

九点を並べて、その扱いを数えたい。

前の回で、群衆を扱った。

群衆の話では、人が塊になっていた。

行列は、塊ではない。

線である。

一枚に収まらないから、続きにする

この一点は、巻物の形式で作られている。

館の記録は、その語を技法の欄に書いている。

巻いて仕舞い、広げて見る。

横に長い主題には、この形が合う。

ただし、七十五センチでも足りないことがある。

行列は、もっと長い。

館の記録には、この一点が全体の一部かどうかが書かれていない。

九点のうち、横が縦の二倍を超えるのは三点だった。

そのうち二点が、行列そのものを描いている。

男女と子供たちの行列(ユリウス・カエサルの凱旋より)
アンドレア・アンドレアーニ《男女と子供たちの行列(ユリウス・カエサルの凱旋より)》1593年から99年。館の記録では、明暗を分けた多色刷りの木版画。画面36.7×37.1センチ。紙全体38.9×37.8センチ。番号は1930.583.8。クリーヴランド美術館蔵。アンドレア・アンドレアーニ《男女と子供たちの行列(ユリウス・カエサルの凱旋より)》クリーヴランド美術館蔵

館の記録は、寸法を三つ書いている。

画面が36.7×37.1センチ。

紙全体が38.9×37.8センチ。

台紙を含めて58.4×57.1センチ。

紙のほうが、画面より二センチ大きい。

つまり、細い余白が残っている。

こちらは、正方形に近い画面である。

縦36.7センチ、横37.1センチ。

行列を描いているのに、横に長くない。

理由は、番号を見ると分かる。

末尾に枝番が付いている。

八枚目、という意味である。

つまり、この一点は連作の一枚だ。

同じ大きさの版が何枚もあり、横に並べると長い行列になる。

一枚に収まらないから、分割している。

画面には、二十人以上がいる。

右に、太い柱が立つ。

その上に、装飾がある。

左に、四角い額のようなものを掲げる人がいる。

中央に、幼い子どもを連れた人がいる。

奥のほうに、長い棒が何本も立つ。

槍だろうか。

地の色は褐色で、明るい部分が白く抜ける。

館の記録によれば、これは百年前の絵を版にしたものである。

そして、公爵の注文で作られたと書かれている。

古代の将軍の凱旋を描いた場面だという。

これは館の記述である。

第十五回で、複製と反復を扱った。

絵を版画にして広める仕事は、長く続いてきた。

行列を、四角い板に収める

東方三博士の行列
ベルナルド・パレンティーノ《東方三博士の行列》1450年から1500年ごろ。館の記録では、板にテンペラ。47.5×53.8センチ。番号は1916.790。クリーヴランド美術館蔵。ベルナルド・パレンティーノ《東方三博士の行列》クリーヴランド美術館蔵

館の記録には、額の寸法がない。

絵そのものの寸法だけが書かれている。

もともと箱の一部だったなら、額はなかったはずだ。

いま額があるかどうかも、記録からは分からない。

第十二回で、素材と用途を扱った。

家具の部品が、絵として館に入ることがある。

そのとき、記録の欄は絵の書式で埋められる。

横長に近い板絵である。

縦47.5センチ、横53.8センチ。

右に、白い城壁と塔がある。

その手前に、人と馬の群れが集まる。

十数人いる。

先頭のほうに、白い馬に乗る人がいる。

赤や青の衣が目立つ。

左に、大きな岩がある。

そのあいだを、道が奥へ続く。

上には、槍らしい細い線が何本も立つ。

空は暗い。

館の記録によれば、これは壁に掛けるための絵ではない。

衣類を入れる箱の板だったと考えられるという。

そして、旅行用の箱だった可能性にも触れている。

これは館の見解である。

こちらで確かめられるのは、横長の板である、ということだ。

箱の側面なら、横長になる。

行列の主題と、箱の形が合っている。

第十二回で、判型と用途の関係を扱った。

家具の一部として作られた絵は、家具の寸法に従う。

器を一周させる