作品を知る

二人は、意外に向かい合わない——フリードリヒ・アルトドルファー・師宣ほか九点

二人が画面にいるとき、向かい合うか、並ぶか、背を向けるか。九点で数えると、向かい合うのは四点しかなかった。距離と頭の高さも測りたい。二人の名前は、九点とも記録に残っていない。背景に木を描く例が四点あった。二人の場面は、木の下に置かれやすい。

月を眺める二人の男
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《月を眺める二人の男》メトロポリタン美術館蔵

二人が、同じほうを向いている

小さな油彩である。

縦34.9センチ、横43.8センチ。

画面の左右から、枯れた木が伸びる。

幹はねじれ、枝が交差する。

一本は、根が地面から浮いている。

中央よりやや左に、二人の人物が立つ。

どちらも、こちらへ背を向けている。

長い外套を着ている。

一人は帽子をかぶる。

もう一人は、その肩に手を置く。

二人は、同じ方向を見ている。

視線の先には、低い空がある。

そこに、細い月と、小さな光がある。

空は薄い紫と橙で、下へ向かって明るくなる。

手前の地面は暗い。

月を眺める二人の男
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《月を眺める二人の男》1825年から30年ごろ。館の記録では、布に油彩。34.9×43.8センチ。番号は2000.51。メトロポリタン美術館蔵。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《月を眺める二人の男》メトロポリタン美術館蔵

館の記録は、この一点を2000年に受け入れている。

出所の行には、基金の名がある。

館が買ったということである。

第十八回で、購入と寄贈の書き分けを扱った。

出所の行の話で見たとおり、

購入なら基金の名が、寄贈なら人の名が入る。

九点の出所の行を数えると、寄贈が五点、購入が四点だった。

前の回まで、一人の姿勢を数えてきた。

今回から、人数を扱う。

まず、二人である。

二人が画面にいるとき、その関係が形になる。

向かい合うか、並ぶか、背を向けるか。

九点を並べて、その並べ方を数えたい。

この一点は、いちばん珍しい形である。

二人とも、こちらへ背を向けている。

そして、二人とも同じものを見ている。

つまり、見る側は、二人と同じ方向を向くことになる。

肩越しに、同じ景色を見る形である。

第二回で、こちらを見る顔を数えた。

視線の話では、目が合うかどうかが問題だった。

ここでは、そもそも顔が見えない。

向かい合う二人

恋人たち
アルブレヒト・アルトドルファー《恋人たち》1511年。館の記録では、木版画。画面13.9×10.3センチ。番号は1969.42。クリーヴランド美術館蔵。アルブレヒト・アルトドルファー《恋人たち》クリーヴランド美術館蔵

館の記録では、画面と紙の寸法が同じである。

どちらも13.9×10.3センチ。

つまり、版の縁で紙が切られている。

余白がない。

九点のうち、紙と画面が同じ寸法なのはこの一点だけだった。

小さな版画である。

縦13.9センチ、横10.3センチ。

森の中である。

太い幹が、画面の左右に立つ。

枝と葉が、上を覆う。

地面には、草と切り株がある。

その手前に、二人が座っている。

左の人物は、鎧をつけている。

肩と胸が金属で覆われる。

右の人物は、大きく広がる衣を着る。

二人は、体を向け合っている。

顔は近い。

左の人物の腕が、右の人物の背に回る。

線は細かく、密度が高い。

木版でこの細さを出すには、彫りに手間がかかる。

黒い線を残し、まわりを彫り落とす。

線が細いほど、彫り残す部分が細くなる。

折れやすい。

第十九回で、版画の白は彫り落とした部分だと書いた。

白を残す話で見たとおり、木版では白が彫った跡である。

この一点では、白がほとんどない。

画面のほぼ全部に、線がある。

二人の恋人
菱川師宣《二人の恋人》1675年から80年ごろ。館の記録では、木版画。紙に墨と色。22.9×33.7センチ。番号はJP676。メトロポリタン美術館蔵。菱川師宣《二人の恋人》メトロポリタン美術館蔵

横長の版画である。

線だけで描かれている。

右に、二人の人物が座る。

体を向け合い、顔が近い。

どちらも、髪を結い上げている。

衣には、小さな模様が散る。

その衣が、床に大きく広がる。

左には、垂れ布のようなものがある。

上には、丸いものが吊るされる。

床に、細長いものが置かれる。

刀らしい。

さらに、平たい箱と、棒のようなものがある。

背景は、簡単な線で示される。

館の記録の札には、楽器と刀と恋人という語がある。

つまり、館は場面をそう読んでいる。

線の太さは、ほぼ一定である。

彫りやすい太さで、全部が描かれている。

先の木版と比べると、線の数がずっと少ない。

同じ木版でも、線の使い方がまるで違う。

二人のあいだに、何かが置かれる

寓意的情景:彫像の前の男女
エフ・ミュラー《寓意的情景、彫像の前の男女》18世紀。館の記録では、筆と灰色の淡彩、筆と赤の淡彩、黒インクの枠線。紙全体17.2×10.5センチ。画面16.3×9.8センチ。番号は1956.302。クリーヴランド美術館蔵。エフ・ミュラー《寓意的情景:彫像の前の男女》クリーヴランド美術館蔵

縦長の小さな紙である。

右に、高い台座がある。

その上に、人物の彫像が立つ。

彫像は、片手を上げている。

台座の下に、二人がいる。

一人は座り、衣が広がる。

もう一人は、その後ろに立つ。

さらに後ろに、もう一人いるようにも見える。

背景は、大きな木である。

葉が、灰色の淡彩で塗られる。

赤い淡彩が、衣の一部に置かれる。

画面の縁に、黒い枠線が引かれる。

館の記録は、これを寓意的な情景と呼ぶ。

つまり、何かを象徴した場面である。

二人のあいだに、彫像が立っている。

正確には、二人の右に立つ。

だが、画面の中では、二人と彫像が三角形を作る。

彫像は、動かない第三の人物として働く。

生きた二人と、石の一人。

その対比が、この構図の中心にある。

並んで立つ二人

男女図
長谷川宗圓《男女図》16世紀末。館の記録では、掛軸。紙に墨。画面102.3×47.6センチ。全体189.2×68センチ。番号は1985.133。クリーヴランド美術館蔵。長谷川宗圓《男女図》クリーヴランド美術館蔵

館の記録は、寸法を二つ書いている。

画面が102.3×47.6センチ。

表装を含めて189.2×68センチ。

縦が、画面の一・八倍になる。

九点でいちばん大きい一点である。

そして、いちばん小さい水彩は10.2センチしかない。

十八倍の差がある。

縦長の掛軸である。

墨の線だけで描かれている。

二人が、並んで立つ。

左の人物は、髪を頭の上で結う。

手に、細長い枝のようなものを持つ。

右の人物は、頭から布をかぶる。

顔の下半分が、その布で隠れる。

二人の体は、ほとんど接している。

衣の輪郭線が、途中で重なる。

どちらの衣か、判別しにくい部分がある。

線は太く、迷いがない。

塗った面はない。

紙の地が、そのまま衣の白になる。

下のほうに、赤い印が一つある。

向かい合ってはいない。

二人とも、同じ方向を向く。

やや斜め、こちら寄りである。

並ぶという形は、向かい合う形と意味が違う。

向かい合えば、二人のあいだに空間ができる。

並べば、二人は一つの塊になる。

この一点では、輪郭が重なるほど近い。