画家を知る

収蔵番号の欄に、寸法が入る——東洲斎写楽

ある一点の収蔵番号の欄に、台紙の寸法が続けて書かれている。番号ではなく寸法が、欄をまたいで入り込んだ形である。単位の抜けた寸法、画面と断る寸法、読点のあとの空白の欠け。九枚の役者絵を、記録の揺れという一点から並べて読みたい。

初代尾上松助の松下造酒之進
東洲斎写楽《初代尾上松助の松下造酒之進》メトロポリタン美術館蔵

欄が、ずれる

美術館の記録は、欄に分かれている。

題は題の欄、寸法は寸法の欄に入る。

もっとも、欄をまたいで入ることがある。

記録の作り

館の記録は、表の形をしている。

つまり、行と列でできている。

欄という仕組み

欄が分かれていれば、機械でも読める。

つまり、扱いやすくなる。

ずれると、困る

別の欄に入れば、意味が変わる。

つまり、読み違えの元になる。

収蔵番号の欄に、寸法

この画家の一点に、それが起きている。

つまり、番号の欄に寸法が続いている。

役者絵という形

舞台の役者を描いた版画である。

つまり、興行に合わせて作られる。

十か月ほど

活動の記録は、短い期間に集まる。

もっとも、当サイトでは確かめていない。

短い活動

この画家の作は、限られた期間に集まる。

つまり、年の幅が狭い。

九点という範囲

この記事で扱うのは九点である。

いずれも同じ館にある。

そして、いずれも役者を描いた版画である。

収蔵番号

番号の前置きが、九点とも同じである。

つまり、同じ群に属する。

ほぼ、続く

抜けているのは、わずかである。

つまり、まとまって入った。

番号の並び

3112、3115、3116、3117、3119、3120、3121、3122、3123。

つまり、ほぼ続く。

来歴が、同じ

九点とも、同じ二つの基金による購入である。

そして、同じ年に受け入れられている。

九点の並べ方

欄の書き方ごとに、群に分けた。

つまり、記録の側から並べる。

順に、見る

まず、欄のずれた一点。

そして、書き方の違う八点。

一点目

欄がずれている一点から始めたい。

初代尾上松助の松下造酒之進
東洲斎写楽《初代尾上松助の松下造酒之進》1794年。木版画。館の題には、芝居の名が添えられる。館の記録では、縦35.6センチ、横24.1センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。二つの基金による購入、1949年。東洲斎写楽《初代尾上松助の松下造酒之進》メトロポリタン美術館蔵

胸から上を、大きく描く。

顔は、右を向く。

額が広く、髷が小さい。

黒い衣を着る。

背景は、灰色である。

二行目

二行目に、台紙の寸法が来る。

つまり、改行で分かれる。

一行目

一行目に、紙の寸法が入る。

つまり、そこは他と同じである。

寸法の欄

数字のあとに、改行が入る。

そして、台紙の寸法が続く。

展示のとき

台紙があれば、額に収めやすい。

つまり、扱いが楽になる。

保護のため

台紙は、版画を守るために付ける。

つまり、後から用意される。

台紙という語

版画を挟む厚紙のことである。

つまり、作品そのものではない。

二十センチ

台紙は、縦で二十センチ以上大きい。

つまり、余白が広い。

大きさの差

台紙は、紙より一回り大きい。

つまり、余白ができる。

二つの寸法

紙の寸法と、台紙の寸法。

つまり、二つが並ぶ。

断っている

台紙の寸法には、台紙、と断りが付く。

つまり、区別されている。

そこまでは、よい

台紙の寸法を書くこと自体は、珍しくない。

つまり、これは誤りではない。

括弧の中

括弧の中には、単位がある。

つまり、片方だけ抜ける。

数字だけ

前置きのあとは、四桁の数字である。

つまり、短い。

番号の形

番号は、前置きと数字でできている。

つまり、短い。

問題は、番号の欄

同じ台紙の寸法が、番号の欄にも入る。

番号のあとに、続く

番号のあとに、改行して寸法が来る。

何が起きたか

同じ行が、二つの欄に入った。

もっとも、経緯は分からない。

明らかに、ずれている

番号の欄に、寸法は入らない。

つまり、混入である。

直さない

当サイトでは、記録をそのまま写す。

つまり、直さない。

次の一点

雲母を使った一枚を見たい。

つまり、背景に粉を撒く。

二点目

九点で最も知られた形の一枚である。

二代目瀬川富三郎の宿木
東洲斎写楽《二代目瀬川富三郎の宿木》1794年。紙に木版、墨、彩色、白雲母。館の題には、芝居の名が添えられる。館の記録では、縦37.1センチ、横25.1センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。二つの基金による購入、1949年。東洲斎写楽《二代目瀬川富三郎の宿木》メトロポリタン美術館蔵

胸から上を、大きく描く。

女形が、右を向く。

髪に、櫛と簪が挿さる。

顔は、白く塗られる。

背景は、灰色である。

光る背景

雲母は、細かく砕いた鉱物である。

つまり、光を反射する。

粉を、撒く

糊を引き、その上に粉を撒く。

つまり、手間が掛かる。

素材に、雲母

素材の欄に、白い雲母とある。

つまり、粉を背景に撒いている。

手間の分

工程が増えれば、値は上がる。

つまり、贅沢な作りになる。

高い刷り

雲母を使えば、値も上がる。

もっとも、記録に値はない。

何のためか

光を受けて、背景が輝く。

もっとも、いまは沈んで見える。

記号で、区切る

高さと幅が、記号で区切られる。

つまり、別の記載に見える。

高さと、幅

縦と横が、別々に書かれる。

つまり、二つの記載になる。

寸法の書き方

縦と横が、記号で区切られる。

つまり、掛け算の形ではない。

顔が、二つ

胸から上を、二人分描く。

つまり、詰めて置く。

三点目へ

二人を描いた一枚を見たい。

つまり、顔が二つ並ぶ。

三点目

二人が並ぶ一枚である。

二代目沢村淀五郎の川連法眼と坂東善次の鬼佐渡坊
東洲斎写楽《二代目沢村淀五郎の川連法眼と坂東善次の鬼佐渡坊》1794年。紙に木版、墨、彩色、白雲母。館の記録では、縦35.6センチ、横22.9センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。二つの基金による購入、1949年。東洲斎写楽《二代目沢村淀五郎の川連法眼と坂東善次の鬼佐渡坊》メトロポリタン美術館蔵

胸から上を、二人分描く。

奥の男は、眉が太い。

手前の男は、目を見開く。

手前の男の頭は、剃られている。

背景は、灰色である。

数字だけ

縦は、数字だけで終わる。

つまり、単位がない。

単位が、抜ける

縦の数字のあとに、単位がない。

横には、ある

横の数字には、単位が付く。

直さない理由

読めるからといって、直さない。

つまり、記録は記録である。

読める

括弧の中に、センチの値がある。

つまり、意味は通じる。

片方だけ

つまり、揃っていない。

空白も、二つ

横の数字の前に、空白が二つある。

つまり、ここも揃わない。

次のページで

年の欄と、素材の欄を見たい。