題が、行いと場所でできている——ジョージ・カトリンの場面画九点
踊りの名と民族の名。球技の名と町の名。肖像の題が人の名から始まったのに対し、場面の題は行いから始まる。球が上がる、球が落ちる。二重の横線で分けられた、対になった絵の題も合わせて読みたい。行いを名にするという書き方である。

題が、行いと場所でできている
絵画を九点、記録の欄で並べてみる。
九点とも、同じ画家の手による。
前の回で見た肖像画と、同じ揃いの一部である。
ただし、こちらは場面を描いている。
そして、題の作りが違う。
肖像の題は、名で始まった。
場面の題は、行いで始まる。
そのあとに、場所か、民族の名が続く。
名前のない、絵
場面の絵には、個人の名が出てこない。
大勢が描かれ、いずれも小さい。
つまり、誰かを特定していない。
前の回で見た肖像とは、対照的である。
あちらは、一人ずつ名を記した。
こちらは、集団として描く。
同じ画家が、二つの描き方を使い分けている。
そして、題の作りもそれに応じて変わる。
二つの部分に、分かれる
九点の題を並べてみる。
踊りの名と、民族の名。
踊りの名と、川の河口の名。
球技の名と、町の名。
つまり、前半が行い、後半が場所か集団である。
読点で、二つが区切られる。
前の回で、肖像の題が三つに分かれる話をした。
こちらは、二つである。
人の名がないぶん、短い。
揃いの中の、二種類
この画家の作品は、数百点の揃いである。
その中に、肖像と場面の二種類がある。
肖像は、一人ずつ。
場面は、集団と風景。
つまり、二本立ての構成になっている。
前の回で、揃い物の作り方の話をした。
こちらは、性格の違うものを組み合わせた揃いである。
人と、その暮らし。
その両方を見せようとしている。
場所を、どう書くか
後半に来る場所の書き方は、まちまちである。
川の河口。
町の名。
地方の名。
そして、民族の名。
つまり、場所とも集団ともつかない。
書き手が、そのとき分かることを書いたのだろう。
館は、その書き方をそのまま残す。
前の回で、当時の題を残す話をした。

横長の画面である。
中央に、十数人が輪をつくる。
いずれも、身をかがめる。
腕を前へ伸ばす。
頭に、羽根の飾りを付ける。
中央の一人が、丸い太鼓を持つ。
その左に、長い棒が立つ。
棒の先に、飾りが揺れる。
足もとは、淡い緑の草地である。
背景は、白に近い空である。
輪郭は、細い線で描かれる。
白い地を、残す
九点のうち三点は、背景がほとんど白い。
草地と空だけが、薄く塗られる。
つまり、地の色をそのまま生かしている。
こうすれば、描く時間が短くて済む。
そして、人物がはっきり見える。
前の回で、紙の白を残す話をした。
こちらは、下地の白を残している。
材料は違うが、考え方は近い。
背景が、ほとんどない
いま見た一点には、背景がほとんどない。
草地と空だけである。
つまり、人物の群れだけが描かれる。
これは、記録のための描き方だろう。
踊りの隊形と、身振りを見せる。
余計なものを、省いている。
前の回で、記録としての絵の話をした。
こちらは、その姿勢がはっきり出ている。
同じ名の踊りでも、違う
同じ名で呼ばれる踊りでも、民族が違えば違う。
隊形も、身振りも、意味も違うだろう。
書き手は、その違いまでは書かない。
同じ名を付けている。
つまり、外から見た分類である。
前の回で、記録が書き手のものである話をした。
こちらでも、そのことを踏まえて読む必要がある。
館は、当時の題を残しつつ、注記を加えていく。
同じ踊りが、二点ある
九点のうち二点は、似た題を持つ。
請いの踊り、と、請う者の踊り。
つまり、ほぼ同じ言葉である。
ただし、後半が違う。
一点は、民族の名。
一点は、川の河口の名である。
つまり、別の場所で見た同じ踊りだろう。
館は、両方を残す。

横長の画面である。
中央に、二十人ほどが横一列に並ぶ。
身をかがめ、膝を曲げる。
腕を前へ伸ばす。
頭に、羽根の飾りを立てる。
髪が、後ろへ長く垂れる。
体に、赤い顔料が塗られる。
いずれも、同じ姿勢をとる。
足もとは、褐色の地面である。
背景は、淡い灰である。
人物だけが、横に連なる。
動きを、どう描くか
止まった絵で動きを示すのは、難しい。
方法は、いくつかある。
一つは、同じ姿勢を並べること。
一つは、違う段階の姿勢を混ぜること。
一つは、二枚に分けて描くこと。
九点では、この三つとも使われている。
前の回で、風を紙で描く話をした。
こちらでは、隊形と繰り返しで動きを示している。
同じ姿勢を、並べる
いま見た一点では、全員が同じ姿勢である。
つまり、動きの一瞬を切り取っている。
そして、横に並べる。
こうすると、隊形が分かる。
一人ずつ違う姿勢にすれば、賑やかになる。
しかし、隊形は分かりにくい。
つまり、これは説明のための描き方だ。
前の回で、絵が説明を担う話をした。
記号を、そのまま写す
二重の横線は、書き手が使った記号である。
館は、それをそのまま題に残す。
読点に直したり、括弧に入れ替えたりしない。
前の回で、記号をそのまま写す話を何度もした。
こちらでも、同じ方針が守られている。
記号が変われば、切れ目の強さが変わる。
つまり、意味が少し変わる。
だから、変えない。
二重の横線で、細かく書く
九点のうち二点は、題の途中に二重の横線が入る。
そのあとに、短い語が続く。
球が上がる。
球が落ちる。
つまり、同じ場面の別の瞬間である。
前半は、まったく同じ題だ。
後半の短い語だけが、二点を分ける。
館は、その記号をそのまま残す。