同じ大きさの紙に、二つの大陸が並ぶ——ジョージ・カトリン
九点の厚紙は、縦も横も数センチしか違わない。番号を振られ、束として作られた一群である。北米の平原と南米の森が、同じ寸法の紙に同じ手つきで並ぶ。楕円と長方形の使い分けから、この一覧の作り方を読みたい。番号の紙片も、台紙の色も手がかりになる。

同じ大きさの紙が、九枚
九点を並べると、最初に紙の大きさが目につく。
縦はどれも46センチから48センチのあいだに収まる。横は59センチから64センチである。差は数センチしかない。
技法の欄には、油彩とある。ただし支持体はカンヴァスではない。館の記録は、厚紙に描いて台紙に貼った、と書く。
台紙の色は二通りある。灰緑色のものと、黄土色のものが混じる。画像で見るかぎり、その二色以外は出てこない。
台紙の上辺には、小さな紙片が貼ってある。数字が書かれているが、画像では読み取れない。番号で管理された一群だったことだけが分かる。
一群として作られた
一点ずつ注文に応じて描いたのなら、大きさはもっとばらつく。
同じ寸法が続くのは、はじめから束として作ったからである。番号の紙片も、その束の中での位置を示している。
館の記録は、制作年を幅で書く。1854年から1869年、1855年から1869年、1861年から1869年。九点はこの三通りに分かれる。
十五年という幅は長い。いつ描いたかを、館も特定できていない。
幅の下限だけは三通りに分かれる。1854年、1855年、1861年である。上限はどれも1869年で揃う。
この分かれ方は、たぶん画題の出どころに対応している。南米の場面が早く、北米の場面が遅い。ただし館はそう書いていないので、推測にとどめておく。

夕方の空が、画面の上半分を占める。地平線は低い。
その下に、円錐形の住居がいくつも並ぶ。人の姿は小さく、豆粒ほどにしか描かれていない。
手前には水面がある。題にある地名は、白鳥の湖という意味のフランス語である。
住居の数を数えると、二十以上ある。大きな集まりだが、画面の中では帯のように細く見える。
空に使われた色は、橙と黄と灰色である。三色をぼかしてつないでいる。手数は多くない。
何のための束か
館は、この一群を大きなまとまりとして持っている。
九点はその一部である。全体では数百点にのぼると伝えられるが、当サイトで公開しているのはこの一部にすぎない。
まとまりの名は、下絵という意味の語で呼ばれてきた。壁画の下図を指す語である。
ただし、これらが何かの下図として作られたと決まったわけではない。名だけが残り、用途は推測にとどまる。
楕円と、長方形
九点をもう一度見ると、絵の輪郭が同じではない。
いま見た一点は長方形で、周りに濃い縁取りの線が引いてある。額縁を描き込んだような形である。
別の数点では、絵が楕円に切り取られている。楕円の外側は台紙の地のままで、絵具が置かれていない。
さらに別の数点は、輪郭がぼかしてある。中央だけが濃く、周辺へ向かって薄れていく。
九点の内訳は、長方形が三点、楕円が三点、ぼかしが三点である。ちょうど三分される。
偶然の一致だろう。ただ、三つの形が同じ束の中で使い分けられていることは確かである。

楕円の一点である。左に円錐形の住居が立ち、その表面に赤い模様が並ぶ。
住居の前で、人物が身支度をしている。もう一人が布を広げて支えているように見える。
右手は草地が広がり、遠くに獣の姿がある。空は明るい水色で、雲がほとんどない。
楕円の外には、絵具が置かれていない。台紙の黄土色がそのまま出ている。
つまり、この楕円は後から切り抜いたのではない。はじめから楕円の中だけを塗っている。
三つの形は、何を分けるか
長方形、楕円、ぼかし。この三つは、描かれた中身とゆるやかに対応している。
風景が主になる画面は、長方形が多い。人物の群れが主になる画面では、楕円かぼかしが使われる。
つまり、背景をどこまで描くかで形を決めたと考えられる。人物を数人並べるだけなら、周りを空けたほうが見やすい。
もっとも、例外もある。楕円の中に広い風景が入る一点があり、この見方だけでは説明しきれない。
判断の基準が、途中で揺れたのかもしれない。あるいは、もとになった絵の形をそのまま踏襲したのかもしれない。
どちらにせよ、九点を一度に見ないと気づかない差である。一点ずつ壁に掛かっていたら、形の違いは個性に見える。

楕円の中に、十人ほどが横一列に並ぶ。男女が混じり、子どもも入る。
衣は淡い黄褐色で、縁に房が下がる。頭飾りをつけた人物が何人かいる。
背景はほとんど描かれていない。空の色がわずかに置かれるだけである。
題は、この人たちがヨーロッパへ渡ったことを告げる。カトリンは1840年代に自分の展示を持って渡欧しており、その旅に同行した人びとがいたと伝えられる。
題は場所を二つ挙げる。ロンドンとパリである。渡った先を並べる書き方になっている。
この題だけが、九点のうちで大西洋の向こう側に触れる。ほかの八点の題には、北米か南米の地名しか出てこない。