COLUMNSコラム: 画家を知る

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    五十九点が、同じ題を持つ——ヘンリー・ケラム・ハンコックの金具

    この作り手の記録は、五十九点すべてが「家具の金具」である。題では一点も区別できない。頼れるのは寸法と収蔵番号だけになる。直径三センチほどの金めっき真鍮の円盤が並ぶ。同じ題が並ぶとき、記録は何を失うのかを見たい。

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    題が、括弧だけで終わる——トマス・サリーの写生帖

    館の題が、括弧に入った「写生帖より」だけになっている。本体が空のまま、出どころだけが残る。九点のうち六点がその形である。題で呼べない絵を、どう区別するのか。インクと淡彩の頁を、記録の書き方の側から読み直したい。

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    頁の寸法が、九点とも同じ理由——アルバート・ビアスタット

    写生帖の頁を九点並べると、寸法がすべて同じである。しかも厚さまで書かれている。測っているのは頁ではなく、帖そのものだからである。題に「か」が付く一点、革の表紙と金の小口。一冊を分けて登録するとき、記録に何が起きるかを見る。

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    叢書の名が、一枚にしかない——歌川広重の東海道

    同じ道の宿場を描いた九枚のうち、叢書の名が題に入るのは一枚だけである。残る八枚は、宿場の名だけで登録されている。仲間の一枚かどうかは、題からは読めない。寸法の書き方も三通りに分かれる。記録の側から、五十三の宿場を眺めたい。

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    同じ図が、二通りに記録される——喜多川歌麿

    まったく同じ図が、一方では三枚続きの右、他方では二枚続きの右と記録されている。題も年も違う。組の枚数が変われば、場面の広さも変わる。台所、刺身、貝取り、漁。働く場面を描いた九枚を、記録の側から読みたい。

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    同じ顔が、二枚ある——トマス・サリー

    夫人の肖像が、四センチ八ミリの象牙と七十四センチの油彩で残る。三十年の間隔がある。同じ人物の肖像が、二つの館に同じ年で残る例もある。子どもの人数が増えるほど画面が大きくなる三枚も並べ、寸法から読み直したい。

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    写生帖の、一頁ずつ——ジェームズ・マクニール・ホイッスラー

    一冊の帖の頁が、一枚ずつ番号を与えられている。題には綴りの誤りと疑問符が並び、別の一点には原文のままという印が付く。技法の欄から一語が抜けた記録もある。台紙に貼られた紙と番号の対応まで、そのまま見たい。

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    版画ではなく、筆で描いた九点——葛飾北斎

    鍾馗を三度、多色と墨と赤で描く。同じ人物なのに、題の名は日本語の読みと中国語の読みに分かれる。年の欄も、年記がある、一年、世紀、世紀の幅と四通りある。掛物と台紙貼りと表装なし。仕立ての違いまで記録される。

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    題に、距離が書いてある——ジョージ・カトリン

    セントルイスより百十マイル、八百七十マイル、千九百マイル。題が地図の役目をする。地名の少ない土地では、河口からの距離が位置を示した。同じ大きさの布を続けて使った六枚と、三十年後に描かれた二枚を並べる。

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    店の名が、題になる——歌川広重

    江戸の料理屋を描いた九枚である。右上に同じ形の題箋があり、同じ叢書に見える。ところが館の記録で叢書の名が入るのは二枚だけで、錦絵という語が付くのも同じ二枚である。店の内と外、庭と通り。判型と記録の両面から見たい。

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    同じ図を、違う材で——デュヴィヴィエ

    同じ型で打ったメダルが、金めっき青銅、おそらく真鍮、青銅と三点並ぶ。別の図も、青銅、鋳鉄、銀の三点で残る。材が変われば値も変わり、贈る相手も変わるのだろう。作品そのものに赤い番号が書かれた一点もある。

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    六点の記録が、まったく同じ——リチャーズ・アンド・ハートリー社

    題、年、技法、寸法、来歴。六点の欄がすべて一致し、違うのは収蔵番号だけである。型押しで作られた証拠だろう。それでも画像を見れば、乳白色の広がる範囲が一点ずつ違う。量産の中に残る揺れを、六点で確かめたい。

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    「アメリカまたはフランス」——ランケ=ルプランス

    館の産地欄に、二つの国が並ぶ。材の欄にも、林檎材または梨材とある。二重の留保である。さらに、肘掛けのない三脚が肘掛け椅子と同じ数字を持つ。決められないことを決めない記録を、椅子六脚と卓一点で見る。卓の材だけは特定されている。

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    肘掛けがあるのに、題は椅子——ジョゼフ・ミークス・アンド・サンズ

    原語の題は、肘掛けのない椅子を指す語である。ところが写真には肘掛けが写る。さらに四脚が、姿の違いを越えて同じ寸法を与えられている。同じ年、同じ寄贈で館へ入った七脚の記録を、そのまま並べて読みたい。組が揃って残る例は少ない。

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    艶のない釉薬——ヴァン・ブリグル陶器会社

    釉薬は普通、艶を持つ。ところがこの工房は艶を消す。すると、器の壁から浮き出た草の形がよく見える。七点とも同じ人の寄贈で、同じ年に館へ入った。1901年から1904年という四年のあいだに、形も色も変わっていく。

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    寸法は得られない、と書く——ホッブス・ブロクニア社

    館の寸法欄に数字がなく、得られない、と書かれた一点がある。欄を空けずに未記録であることを明示している。型押しと吹き、鉛硝子の切子、そして色の名まで含む長い技法欄。九点の硝子から、記録の書き方の幅を見たい。

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    寄贈の年より、受入の年が早い——オット・アンド・ブルーワー

    来歴には寄贈2015年とあり、受入年の欄には2008年とある。七年ずれる。館の記録は理由を書かない。白い磁器の野球選手像、およそという語の付く高さ、綴りに空きのない寄贈者名。九点の記録の揺れをそのまま並べる。

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    綴りの誤りごと、題になる——ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ

    皿の裏に刷られた印の文字が、そのまま館の題になる。だから川の名の綴りが入れ替わったままの題が二枚ある。英国で作り、北米で売るための器である。九枚の直径と印の文字から、量産と記録の関係を読みたい。裏の印は、使うときには見えない。

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    年の末尾に、疑問符が付く——エドワード・ブルース

    館の年の欄に、1926年から1934年、そして疑問符とある。幅があり、さらに留保が重なる。一年、幅、そして幅と疑問符。確かさに三段階がある。油彩に蝋を混ぜた一枚、板紙に裏打ちされた三枚。七枚の風景を記録の側から見る。

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    輪郭が、背景に溶ける——ジョージ・フラー

    人物の輪郭が定まらない。近い人物も遠い人物も、同じように背景へ溶ける。三枚は色のない古い記録写真で公開され、画面には細かい罅が走る。館の題が時代の分類語をそのまま用いる一枚もある。七枚を、記録の言葉ごと扱いたい。

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