COLUMNSコラム: 画家を知る

  • 画家を知る

    署名の位置が、記録してある——クロード・モネ

    この館の記録には書き入れの欄があり、署名の位置と文字が書かれている。左下が五点、左上が二点、右下が二点。年が二桁のものと四桁のものがある。一点だけは押された印である。額の奥行きが一メートルを超える記録も見る。

  • 画家を知る

    斜線と、または——カミーユ・コローの年の欄

    二つの数字を斜線で結べば、そのあいだのどこか、という意味になる。「または」で結べば、二つのうち一方になる。見た目は似ていて、意味は逆である。九点のうち五点が斜線、一点が「または」。記号の読み分けから始めたい。

  • 画家を知る

    年が、二つ書かれた一点——ウィンスロー・ホーマー

    年の欄に「1895年、1901年までに描き直し」とある。描いた年と、手を入れた時期の両方が書かれている。何を直したかは書かれない。来歴の年と受入年が一年ずれる一点もある。油彩五点と水彩四点を、年の欄から読み直す。

  • 画家を知る

    額の大きさまで、記録する——エドガー・ドガ

    この館の記録は、作品の寸法に続けて額を含む寸法を書く。九点すべてに二行目がある。もっとも小数の桁は三通り、区切りの記号は二通り、奥行きの有無も分かれる。家族を描いた三点では、姓の書き方まで揺れている。

  • 画家を知る

    絵の年と、紙の年が離れる——鈴木春信

    版木が残れば、後の世でも刷れる。九点のうち二点は二十世紀の初め、二点は1865年ごろの刷りとされる。図は1770年前後だから、百三十年ほど離れる例もある。切り取られた絵本の頁とあわせ、紙の年という見方を試したい。

  • 画家を知る

    収蔵番号の欄に、寸法が入る——東洲斎写楽

    ある一点の収蔵番号の欄に、台紙の寸法が続けて書かれている。番号ではなく寸法が、欄をまたいで入り込んだ形である。単位の抜けた寸法、画面と断る寸法、読点のあとの空白の欠け。九枚の役者絵を、記録の揺れという一点から並べて読みたい。

  • 画家を知る

    留保が、二重になる年——勝川春好の役者絵

    年の欄に、およそ、と疑問符が同時に置かれた記録が三点ある。幅を持たせ、そのうえで疑う形である。文で書かれた年が一点、留保のない年が一点。寸法の欄に判型の名が紛れ込む例もある。九枚の細長い役者絵を記録から読む。

  • 画家を知る

    題の末尾に、疑問符が付く——パーヴェル・ペトロヴィチ・スヴィニン

    地名のあとに括弧つきの疑問符が置かれた題が、九点のうち二点ある。どこを描いたかが定まらない、という館の判断である。紙に地名が書かれていなければ、後から当てるほかない。色の残る五点と、色の失われた四点を並べて見たい。

  • 画家を知る

    一枚の紙が、二点になる——フランシス・ウィリアム・エドモンズ

    写生帖の紙は両面に描かれる。館は表と裏を別々に登録するため、一枚が二点になる。九点のうち六点が三組の対である。ほとんど同じ題が並び、一語だけ違う組もある。犬を繰り返し描いた鉛筆の頁を、面という単位から読む。

  • 画家を知る

    一枚の紙に、何点あるか——アンドリュー・フィッシャー・バナー

    館の題に「下絵二点の紙」「下絵四点の紙」とある。一枚の紙が一点として登録されるため、中身の数を題に書くほかない。九点は同じ人から同じ年にまとめて寄贈された。紙の種類と、素材欄に残る二か所の綴りの崩れもあわせて見る。

  • 画家を知る

    組物の名が、題にあるか——葛飾北斎の版画と画帖

    版画は一枚で売られるが、多くは続き物の一枚である。九点のうち四点の題には組物の名が入り、五点には入らない。入らないほうが、組に属していないとは限らない。寸法の書式は三通りに分かれ、画帖には五百点以上が貼られている。

  • 画家を知る

    年が、書かれない二点——アリス・パイク・バーニー

    年の欄に数字が入らず、年不詳とだけ書かれた絵が二点ある。およそが付く三点、数字だけの四点とあわせ、確かさが三段階に分かれる。収蔵番号は二つの群に割れ、額ごと撮られた画像もある。九点の油彩を、年の欄から読み直したい。

  • 画家を知る

    寄贈の年と、受入の年が合わない——ギルバート・スチュアート

    来歴に書かれた年と、受け入れ年が食い違う例が九点のうち三点ある。うち一点は十三年も開く。手続きに時間が掛かることはあるが、十三年は目を引く。年の欄の大文字と小文字が揃わない一点、名の伝わらない一点もあわせて見る。

  • 画家を知る

    役者絵の画家が、筆で描く——勝川春章の掛物

    この画家の名は役者絵で知られる。もっとも記録には、絹に筆で描いた掛物も残っている。分類は版画ではなく絵画になり、寸法の書き方も変わる。同じ人の作でも、館の中では別の群に置かれる。七点の掛物と版画二点を並べたい。

  • 画家を知る

    同じ日付が、四枚に並ぶ——ウィリアム・トロスト・リチャーズ

    写生帖の題に日付が入り、そのうち四枚が同じ日である。一日に四枚描いたことになる。帖には記号が付き、何冊目かも分かる。鉛筆の線は速く、細部は省かれる。日付という手掛かりから、一日の仕事の量を数えてみたい。

  • 画家を知る

    一つの題に、綴りの誤りが二つ——ジェームズ・マクニール・ホイッスラー

    館の題に、綴りの誤りが二か所ある。しかも同じ帖の複数の頁で繰り返される。読めてしまうため、そのまま残ったのだろう。技法欄には四つの画材と二種類の紙が並ぶ。十センチほどの小さな頁を、記録の揺れごと扱いたい。

  • 画家を知る

    題に、旅の年が書かれる——メアリー・ニューボールド・サージェント

    題に「1904年」と入っている。写生帖の頁に、旅の年がそのまま残された形である。場所の名も併記され、どこで描いたかが分かる。もっとも日付までは書かれない。九頁の水彩と鉛筆から、旅の記録がどこまで残るのかを見たい。

  • 画家を知る

    同じ題が、三枚並ぶ——喜多川歌麿の母と子

    六枚のうち三枚が、同じ題で登録されている。図は違うのに、記録の上では区別が付かない。母と子を描いた版画は数が多く、後から題を当てるほかなかったのだろう。寸法と来歴の差を手掛かりに、六枚を並べて読み分けたい。

  • 画家を知る

    九枚とも、無題である——エドワード・ミッチェル・バニスター

    館の題が、九枚とも「無題」である。代わりに括弧で、何が描かれているかが添えられる。題は名の役目を果たさず、区別は収蔵番号に移る。牛を追う人、水辺、木立。名を持たない絵の並びを、記録の書き方とあわせて見たい。

  • 画家を知る

    題が、この絵の行き先を告げる——ジョン・シングルトン・コプリーの習作

    館の題に、どの絵のための習作かが書かれている。つまり題そのものが、この紙の行き先を示す。九点のうち何点にその断りが付くのか。濃い青の紙、白チョークの明るみ、そして寸法欄の揺れ。完成作へ向かう紙の記録を読む。

7 / 19 ページ(全 380 件)